ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
警官殺しと両腕のない死体。一課のエースと変わり者の女性刑事が謎を追う!
ベテラン警官が殺害され、拳銃が奪われた。連続する射殺事件と遺体損壊事件を追い、特捜チームの岬怜司は、妙な特技を連発する所轄署の里中宏美とコンビを組む。緻密な推理から浮上する過去の未解決事件、その闇に消えた男。二人が封印された真実に迫った時、犯人は予想外の姿で現れる! 巧みな伏線が冴える本格捜査ミステリー。
(新潮社公式HPより)
<感想>
全体的に「2時間サスペンス」テイストを感じさせる作品です。
最近の「2時間サスペンス」だと開始直後に過去の事件が描かれることが多いですが、本作も同じような構成になっています。
さらに動機や意外な犯人の登場の仕方なども「2時間サスペンス」を想起させる作り、それだけにファンにとって堪らない作品となっています。
また、笹山がレインコートを着せられていた理由は印象的でした。
なお、あらすじはまとめ易いようにかな〜〜〜り改変しています。
興味をお持ちの方は本作を読むべし!!
<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧:
岬怜司:主人公、特捜チームの刑事、宏美とコンビを組む
里中宏美:所轄署の刑事、岬とコンビを組む
児島:捜査本部に所属するキャリア
笹山:巡査
三田村:被害者の1人
秋山:三田村の友人
染谷:三田村の部下
原:三田村の部下
細野:被害者の1人
24年前、陰惨な殺人事件が発生していた。
被害者は染谷なる男性、遺体は両腕を切断され江戸川を漂っていた。
これが江戸川事件である。
そして現在、巡査の笹山が何者かに殺害された。
遺体は何故か制服を脱がせた上でレインコートを着せられていたのだが……。
この事件の捜査に乗り出したのが特捜チームの岬怜司と里中宏美である。
ところが、笹山に続き三田村や細野までもが殺害され、岬たちは連続殺人であると見抜く。
被害者の共通点を追った岬たちは24年前に起こった江戸川事件に辿り着く。
それは染谷が両腕を切断され遺体で発見された事件である。
当時、染谷は三田村の部下であった。
笹山はこの事件の捜査担当者の1人だったのだ。
さらに三田村の部下には原なる男性も居たのだが姿を消していた。
三田村と笹山は繋がった。
しかし、細野と三田村の接点が見当たらない。
そんな折、三田村と親交のあった秋山が有力な情報を提供する。
三田村と細野はクルーザー仲間だったのだ。
調べたところ、24年前を契機に三田村と細野は意図的に接触を絶っていた形跡が見出される。
こうして、三田村、細野、笹山の接点が「江戸川事件」で繋がった。
犯人の動機が江戸川事件にあると見た岬は消えた原に注目するが……。
そんな中、捜査本部に所属するキャリアの児玉が何者かに狙撃される。
犯人は笹山の制服を着用し児玉を油断させ近付いたのだ。
どうやら、笹山殺害は制服を奪うことも目的だったようだ。
これから目を逸らさせる為に遺体にレインコートを着せたらしい。
犯人がクルーザーで逃亡中であることを察した岬は先回りしてクルーザーに乗り込む。
其処に居たのは秋山であった。
実は秋山は原の弟、原が三田村に殺害されたことを知り復讐していたらしい。
秋山に銃を向けられる岬。
万事休すのところに宏美が駆け付け、発煙筒を投げ込む。
しかし、発煙筒はあらぬ方へ……嘆く岬であったが。
発煙筒は囮であった。
クルーザーの先にロープが張られていたのだ。
これにより、クルーザーは急停止する。
宏美の狙いはこれだったのだ。
快哉を叫びつつ秋山に飛び掛かった岬はこれを逮捕することに成功する。
逮捕された秋山は全てを語り出した。
24年前、三田村は部下の染谷を持て余し、同じく部下であった原と共に江戸川沿いの小屋でこれを殺害した。
しかし、三田村は同時に原の殺害も目論んでいた。
隙を突かれた原は一撃を受けて昏倒してしまう。
安心した三田村は外から施錠するとその場を去った。
ところが数日後、染谷の遺体が江戸川で発見された。
しかも、遺体の両腕は切断されていた。
驚いた三田村は犯行現場に戻ることにした。
同じ頃、染谷殺害事件を追っていた笹山も犯行現場前に辿り着いていた。
中を確認しようか迷い本部へ問い合わせたところ、応対したのが児玉である。
児玉は笹山に「余計なことをするな!!」と一喝すると別の場所を調べるように指示を出した。
苛立った笹山は児玉の指示に従いその場を去ってしまった。
其処に三田村が戻って来たのだ。
鍵を開けてみた三田村は原が生きていることに気付き愕然とした。
原は瀕死の重傷を負いながらも生きていたのだ。
なんとか一命を取り留めた原。
しかし、小屋は外から施錠されており助けを呼べそうにはない。
あるのは江戸川へと続く人が1人通れるかどうかの穴だけだ。
原自身は通れない、だが染谷の遺体ならば腕を切断すれば流すことは出来そうだ。
其処で両腕を切断し川へ流したのだ。
こうして原の狙い通り染谷の遺体が発見され捜査が始まったのだが、肝心なところで笹山は気付けなかったのであった。
原の生存を知った三田村はこれに止めを刺した。
その上で、クルーザー仲間であった細野を買収しこれを沖合に遺棄したのだ。
この事実を秋山は密かに近付いた細野から聞き出した。
秋山は細野以外にも三田村や笹山にも近付いており、これが事実だと確認すると復讐を決意する。
兄を殺害した三田村はもちろん、細野、笹山、児玉へも復讐を果たしたのである。
そして、岬に江戸川事件についてヒントを与えたのは未だ発見されていない原の遺体を探させる為であった。
こうして事件は解決したのであった―――エンド。
【関連する記事】
- 『どこかでベートーヴェン』(中山七里著、宝島社刊)
- 『通いの軍隊』(筒井康隆著、新潮社刊『おれに関する噂』収録)
- 『クララ殺し』最終話、第6話(小林泰三著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.7..
- 『自殺予定日』(秋吉理香子著、東京創元社刊)
- 『タルタルステーキの罠』(近藤史恵著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.76 ..
- 『歯と胴』(泡坂妻夫著、東京創元社刊『煙の殺意』収録)
- 『迷い箱』(長岡弘樹著、双葉社刊『傍聞き』収録)
- 『噂の女』(奥田英朗著、新潮社刊)
- 『追憶の轍(わだち)』(櫻田智也著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.69 F..
- 『コーイチは、高く飛んだ』(辻堂ゆめ著、宝島社刊)
- 『恋人たちの汀』(倉知淳著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.75 FEBRU..
- 『東京帝大叡古教授』(門井慶喜著、小学館刊)
- 『傍聞き』(長岡弘樹著、双葉社刊『傍聞き』収録)
- 『動機』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『動機』収録)
- 『愚行録』(貫井徳郎著、東京創元社刊)
- 『転生の魔 私立探偵飛鳥井の事件簿』(笠井潔著、講談社刊『メフィスト 2016v..
- 『声』(松本清張著、新潮社刊『張込み』収録)
- 『黒い線』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)
- 『図書館の殺人』(青崎有吾著、東京創元社刊)
- 『陰の季節』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)