日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season14」第3話「死に神」(10月28日放送)ネタバレ批評(レビュー)。
<ネタバレあらすじ>
「他人の運転する車が苦手だそうなのに君も物好きですねぇ」
「いえ、あそこに居ても暇ですし」
運転席の右京(水谷豊)の言葉に助手席の冠城(反町隆史)が応じる。
どうやら、右京が預かっていた証拠品を返却しようとしたところ、冠城が同行したらしい。
「そう言えば……角田課長に言われたんですが右京さんと出かけると事件に出会うって本当ですか?」
「そんなことはありませんよ」
唐突に尋ねた冠城に気分を害したとばかりに憮然として応じる右京。
だが、視聴者は真実を知っている。
そして、冠城もすぐに真実を知ることとなる。
何しろ、言った傍から集い来るパトカーを目撃したからだ。
その先には何か事件が起こっている筈であった。
数分後、パトカーの目的地には伊丹や米沢たちの姿があった。
その足元には女性が倒れている。
いや、より正確には「女性の遺体」が倒れていた。
此処はIT企業で成功を収めた雨宮一雄(葛山信吾)の別荘。
其処で管理人が女性の遺体を発見し通報に及んだのであった。
女性遺体の身元を確認する伊丹たち。
彼女の名は尾崎美由紀(中島亜梨沙)というらしい、何故か携帯電話は所持していなかった。
また、どうやら死因は服毒死のようだ。
だが、不思議なことに口にした筈の毒物らしきものが見当たらない。
と、例の如く右京と冠城が登場。
伊丹は彼らを発見するや苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
そんな伊丹の反応を新鮮だと喜ぶ冠城。
此の間にも右京は現場の不審な点を発見していた。
美由紀の手には観葉植物の葉が握られていたのだ。
しかも、葉には何か見慣れない粒が付着していた。
「それ、観葉植物専用の培養土(ハイドロビーズ)ですよ」
右京の視線を察し、口を挟む冠城。
なるほどと納得した右京は別荘内に観葉植物が無いことを確認し、遺体が別の場所から運び込まれたと断ずる。
だとすれば、第三者の関与が疑われることとなる。
其処へ事件の報を聞いた雨宮が駆け付けて来た。
雨宮によれば美由紀は元恋人だと言う。
だが、結婚を迫られたので別れたらしい。
伊丹たちは雨宮を疑い捜査を開始。
しかし、右京たちは別荘の管理人が週に一度月曜に見回りを行うことを聞き、雨宮の犯行に疑惑を抱く。
何故なら、この日が月曜日だったからだ。
雨宮が犯人ならばわざわざこの日を選ぶとは考えづらい筈であった。
と、右京たちの視界の隅で車が動いた。
車はするするとUターンすると山を下りて行く。
車体に「中村ケミカル工業」と記された車を注視する右京。
「ね、ほら言ったとおりでしょ」
数時間後、特命係へ戻ると何故か得意げな角田が待っていた。
どうやら、右京たちが事件に出くわしたことを聞いたらしい。
「それにしても、青年実業家なんてね!!」
何やら「青年実業家」という言葉に不満を抱いているような角田の様子に、興味を持った冠城。
すると、角田はテレビを顎で指し示す。
其処ではある実業家の結婚報道が行われていた。
リポーターの若田によれば「女優・青山奈央がレストランを経営する青年実業家・下田浩一と結婚した」らしい。
どうも、角田は青山奈央のファンだったようだ。
「な〜〜〜んだ」
味気ない結末に肩を竦める冠城。
一方、右京は「中村ケミカル工業」について調べ始めた。
あの山道の先には雨宮の別荘しかない。
つまり「中村ケミカル工業」の車は雨宮の別荘が目的地だったのだ。
ところが、現場を見るなり目的を果たしたかのように引き返した。
右京はこれには何かあると見たのだ。
ホームページを調べた右京は「中村ケミカル工業」の社長・中村隼(近藤公園)に注目する。
続いて、右京たちは米沢のもとへ。
米沢は美由紀がネット上の人生相談掲示板で相談していたことを突き止めていた。
米沢は掲示板の記載を右京たちに確認させる。
それによると……。
2年前、美由紀が山歩きしていたところ負傷してしまい、其処をサファイアに救われたのが出会いだったのだそうだ。
ちなみに、どうやらサファイアとは恋人のことらしい。
つまり、雨宮のことになるのだろう。
掲示板によれば、彼がサファイアの指輪を着用しているのがその所以のようだ。
そして、美由紀は「サファイアに結婚を申し出たが、別れを切り出されたこと」についても相談していた。
これに対してのレスがいずれも辛辣極まりない。
「遊ばれているだけ」、「格差あり過ぎ」、「別れた方が良い」。
そんな中、ただ1人だけが「相談に乗りましょう」と答えていた。
これが何度か繰り返され、数日前に「皆さん、長い間ありがとうございました」との投稿を最後に美由紀の相談は締めくくられていた。
「問題は解決していないのに、妙ですねぇ」
感想を口にしながら右京は美由紀の遺留品に目を留める。
其処には「兎が印刷されたワインコルク」が。
「こんなワインがあるのでしょうかねぇ」右京は何やら気に掛ける。
一方、伊丹たちの捜査は難航していた。
雨宮が自宅マンションに居たとアリバイを主張したのだ。
雨宮によれば犯行時刻にはマンションコンシェルジュと接触していたのだそうだ。
右京はと言えば、米沢から「美由紀が口にした毒物がシアン化ナトリウムと判明した」ことを告げられていた。
さらに米沢は冠城が右京の相棒かと問うが、右京は「単なる同居人」としか答えない。
中村ケミカル工業を訪れた右京。
すると、社長の中村は不在であった。
なんでも、中村は駅前の「フクモリ」なる喫茶店に居るらしい。
右京はその間に「中村ケミカル工業」を観察して回ることに。
すると「シアン化ナトリウム」を用いていることに気付いた。
しかも、美由紀が所持していたハイドロビーズと同じ物までもが其処にあった。
目配せし合った右京と冠城は「喫茶フクモリ」へ。
その頃、中村は喫茶フクモリにて若い女性と密会していた。
何やら渡された女性はそそくさとその場を去ってしまう。
入替るように現れた右京たちから、犯行現場に居たことを問われた中村は「単なる散歩です」と誤魔化す。
笑って流す右京だが、冠城はシアン化ナトリウムと観葉植物の提出を促すことに。
「君、なかなか強引ですね」冠城を評する右京の言葉である。
同じ頃、伊丹たちは雨宮を疑いアリバイ崩しに挑んでいた……。
翌朝、冠城は右京にある推理を述べていた。
あれから冠城は「人生相談掲示板」を改めて眺めていたところ「ヘリファルテ」なる存在に気付いたのだ。
この「ヘリファルテ」こそ「相談に乗りましょう」と答えた人物であった。
「ヘリファルテ」とはスペイン語でハヤブサのこと、中村の名前は「隼」だ。
冠城は「ヘリファルテ」が「中村」ではないかと考えたのである。
さらに冠城は美由紀が「ヘリファルテ」と直接相談していたらしいことを突き止めていた。
どうやら、美由紀が相談途中で打ち切ったのは「ヘリファルテ」の存在が大きいらしい。
右京は「ヘリファルテ」が関わったトピックを調べて、ある共通点に気付く。
それは「悉くトピック主が自殺を仄めかして」おり、結果として「ヘリファルテと直接連絡を取り合っている」ことであった。
冠城は「中村が弱ったトピック主にナンパ目的で近付いたのでは」と自説を述べるが……。
一方、アリバイ崩しに挑んていた伊丹たちだが雨宮のアリバイを逆に証明する結果に終わる。
並行して、中村から提出された「シアン化ナトリウム」と「観葉植物のハイドロビーズ」が美由紀のソレと合致した。
右京と冠城は中村に事情を問うことに。
すると、中村は隠していた美由紀の携帯を取り出すや驚くべきことを言い出した。
中村が工場へ戻ったところ、美由紀が自殺していたと言うのである。
美由紀は携帯に遺書を残しており、其処には「雨宮家の別荘に運んで欲しい」と記されていた。
中村はこれに従っただけだと主張したのだ。
さらに、中村は5年前のエピソードを語り出した。
中村の当時の交際相手が難病で死亡したのだが、家で最期を迎えたいとの彼女の望みを果たせなかったらしい。
その後悔があり、美由紀の遺志を果たしたのだそうだ。
矢先、中村は伊丹たちにより取調を受けることとなった。
伊丹たちは雨宮から「美由紀がストーカーされていた」との情報を得ていた。
「このストーカーが中村ではないか」と疑われたのだ。
そんな中、右京は「兎のコルク」が「家紋」だと突き止める。
美由紀も雨宮も家紋は兎ではない―――では、誰の物なのか!?
メディアで雨宮と美由紀のスキャンダルが報じられ始めた。
その論調の多くは下田と青山奈央カップルと対比しているようだ。
これを目にした右京は「なるほど、そうでしたか!!」と叫ぶや駆け出す。
咄嗟のことに対応できない冠城。
右京は脇目も振らず「冠城くぅ〜〜〜ん!!」と呼ぶ。
慌てて右京を追う冠城。
どうやら、右京も冠城を「同居人」と呼びつつも「相棒」として認めているようだ。
右京と冠城が向かったのは下田が経営するレストランであった。
右京は下田に「創業10周年を記念したワイン」を求める。
そのコルクこそ美由紀宅で発見された品と同じであった。
さらに、下田浩一の手にはサファイアが輝いていた。
右京と冠城は下田を「美由紀さんを知っていますね」と問い詰める……。
その翌日、右京は雨宮を訪ねた。
「美由紀は自殺だった」との結論を述べる右京たち。
中村の供述はその点においては正しかったのだ。
恋人をサファイアと呼んでいた美由紀。
その理由は恋人がいつもサファイアの指輪を身に付けていたからだ。
だが、雨宮はサファイアの指輪をしたことがない。
むしろ、身に付けていたのは下田であった。
右京は報道される下田の手にあるソレに気付いたのであった。
そう、美由紀の本物の交際相手は下田だったのだ。
だが、下田は青山奈央を選び、美由紀を捨てた。
其処で美由紀は死を選んだのである。
では、雨宮は恋人を騙った理由は何か?
その目的は中村に殺人の罪を着せる為だ。
何故なら、雨宮の妹・遥は半年前に「ヘリファルテ」こと中村に相談し自殺してしまっていたから。
「あいつが妹を殺した」
遥が「ヘリファルテ」に誘導され自殺したと述べる雨宮。
雨宮は「ヘリファルテ」が中村であることを突き止めた。
其処で工場を訪れたところ、美由紀が自殺していたのだ。
その携帯に残されていた遺書を目にした雨宮は下田の名を自身の名に書き換えた。
見ず知らずの美由紀の恋人を騙ったことの危険性を問う冠城。
しかし、雨宮はもちろん右京もそれについては大丈夫との確信があったのだろうと述べる。
美由紀は遺書で初めて恋人の名前を中村に明かしており、下田は新婚である以上は事実を明かすことはないからだ。
一方、右京は遥の死について興味を抱く。
遥は千葉のビルで転落死を遂げていた。
だが、そのビルは特に遥と関連性は無かったのだ。
翌日、中村は保釈された。
一方で、何処かのビルの屋上へと上って行く女性の姿が。
この女性は中村が「喫茶フクモリ」で密会していたあの人である。
女性は屋上に辿り着くと「今から飛び降ります 早紀」とのメールを中村へ送る。
これを目にした中村は早紀が飛び降りすると宣言したビルへ急ぐ。
結果を見届ける為だろう。
しかし、其処に待ち構えていたのは早紀ではなく右京と冠城であった。
「早紀さんは保護しましたよ」
右京の言葉に狼狽える中村。
右京は遥が死亡した千葉のビルが中村の取引先であることを指摘する。
こうして中村に疑惑を抱いた右京は、掲示板で「ヘリファルテ」に相談していた女性を調べた。
そして、「ヘリファルテ」への相談者の自殺率の高さに驚いた。
中村が誘導していることに確証を抱いた右京は早紀に行きつき保護したのだ。
早紀によれば中村から「人は来ない、景色も良い。死ぬには最適な場所だ」と教えられたのだそうだ。
中村は「相談者を思い留まらせるべく努力して来た。それでも心を変えない相手にのみ協力した」と叫ぶ。
だが、右京は「あなたがそんなことを繰り返しているのは過去に犯した罪を正当化する為でしょう?」と冷静に告げる。
右京の問いに顔色を変える中村。
5年前に起こった中村の婚約者の死は彼による他殺だったのだ。
中村の婚約者は病床で苦しみ続け死を望んでいた。
其処で中村はこれに応えたのだそうだ。
その罪の意識を正当化する為に自殺を仄めかす人々を止めるでもなく、率先して死へと追いやったのだ。
「どんな理屈を付けても、あなたのやったことは殺人だ」
「あなたのその行為は死神と同じなんですよ」
理論武装し正当性を主張する中村に、冠城と右京が止めを刺す。
こうして、中村は逮捕された。
その夜、右京は冠城を「花の里」へと連れて行く。
「あら、新しい相棒さんですか?」
にこやかに問う幸子だが、右京も冠城を互いを頑なに「相棒」だとは認めようとしない。
こんなところも何処か似ている2人であった―――3話了。
<感想>
シーズン14第3話。
脚本は金井寛さん。
サブタイトルは「死に神」。
テーマはその名の通り「周囲を死へと誘い込む中村の行動」についてでしたね。
ミステリ的には「変則的な操りの構図」と言えるでしょう。
主に「真犯人がアリバイ作成」に利用するパターンが多いかな。
その点、今回はコレ自体が目的となっていました。
中村の行動は作中で指摘を受けた通り、利己的かつ卑劣な行いと言えるでしょう。
死を選んだ美由紀や早紀たちですが、ネット上で相談を行った時点で気持ちを理解して貰える相手を探していた筈。
中村はそんな気持ちに漬けこんで、味方面して近付くと彼女たちを弄んだ。
それは冠城が「弱った心に漬けこむナンパ目的」と語っていたことと何ら変わりがない。
いや、「ナンパ目的」ならば支えになるかもしれないが、中村の行いには先が無い。
尚更、酷いとしか言いようがない。
そもそも、中村がきちんと相談に乗っていれば彼女たちは生きることを選んだことでしょう。
上にもある通り、ネット上で相談していたのは味方を探してのこと。
味方の言があれば違う道を選んだ筈なのです。
実際、遥は死の2日前に雨宮に接触しようとしていたし生きることを望んでいた。
場合によっては立ち直ったに違いありません。
それにしても、中村の行動は「罪の正当化」と言うよりも「趣味」にすら見えた。
何しろ、正当化ならばわざわざ現場に足を運び見届ける必要が無い。
もしかすると、中村は婚約者をその手で殺害して以来、その道に目覚めてしまったのではないか?
だから、獲物を求めて彷徨い歩いていたのではないか。
そうとすら思えてしまう。
一方、着々と冠城が右京の相棒の座を固めつつあるように見えますね。
今回、冠城は「ハイドロビーズ」と「ヘリファルテ」で重要な手掛かりを右京に提示していましたし。
さらに、右京もわざわざ冠城を同行させているし、口では「同居人」と言いつつも「相棒」として認めている証でしょう。
さらに、前々回「右京=鬼、冠城=仏」前回「右京=紅茶、冠城=コーヒー」に続き「右京=洋酒、冠城=ワイン」と印象的な対比が続いています。
少しずつ定着しつつある冠城、次回にも期待です!!
ちなみに、中村の行動については「ネット上の人生相談」が出て来たところで予想がついた方も多いのではないでしょうか。
この「変則的な操りの構図」でふと思い出した作品を何作か挙げたいのだけど、ネタバレを避ける為に敢えて「変則的な操りの構図を用いつつもコレがメインではない作品」を紹介しておきます。
それが天祢涼先生『キョウカンカク』、アガサ・クリスティー『カーテン』。
先述した通り、それぞれコレがメインでは無いので安心して是非読んでみて下さい。
しかも、オススメの作品です!!
・『キョウカンカク』(天祢涼著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『カーテン』(アガサ・クリスティー著・中村能三訳 、ハヤカワ書房刊)ネタバレ書評(レビュー)
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