2016年02月06日

『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』最終話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2016年2月号掲載)

『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』最終話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2016年2月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<感想>

『小説宝石』に連載中の『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』―――その最終話。

遂に真犯人が明らかに!!
各話にあった伏線を見事に回収した最終話となりました。

今回も香月はやっぱり香月でしたね。
結果、彼自身が彼好みの事件へ誘導したことになりました。
言わば、木更津が闘っていた相手は「香月」だったとも言えるか。
そして、そんな香月から与えられたヒントで真犯人に辿り着いた。
つまり、木更津は香月の掌の上……香月、恐るべし!!

4話で木更津が「犯人が探偵の推理法を知っていれば、それを利用して推理すら犯行に組み込まれる恐れがある」と語っていましたが、それも香月を指していたと言えなくもないかも。
木更津の思考法を知る香月が真犯人を誘導した為に事件が複雑化し木更津が苦戦することになったか。

そして、ラストのモノローグが如何にも香月らしい。

でもって、今回も『翼ある闇』についての言及が為されていましたね。
1年後の事件が本作とのことですが、木更津シリーズにメルカトル再臨なるか!?

なお、あらすじはまとめやすく改変しています。
本作を楽しむ為には本作を読むべし!!

<ネタバレあらすじ>

・登場人物一覧
木更津:名探偵。香月との関係は……。
香月:今回も香月らしい活躍を……。

村雲:今回の依頼人。
朝霞:村雲の娘、福住とは恋人同士。福住殺害の有力容疑者とされている。
葛子:村雲の後妻で朝霞の継母。第2の被害者に……。
梅昭:村雲の弟。
磐人:村雲の長男。朝霞の兄。
珠代:村雲家の家政婦。

福住:第1の被害者、朝霞の恋人。普愛寮の寮生。
日置:福住の友人。普愛寮の寮生。
亜弓:福住、日置と同じく普愛寮の寮生。福住と交際していたことが判明。
清音:福住、日置と同じく普愛寮の寮生。福住と交際していたことが判明。

岡野:福住の手首を発見したコンビニ店員。第3の被害者に……。
西町恵:岡野の憧れの同僚、コンビニ店員。

〜〜〜前回までのあらすじ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

先輩・西町恵とコンビニのバイトをしていた岡野は切断された手首を発見する。
バラバラ殺人であった。

被害者は大学生・福住。
容疑者はその恋人・朝霞。

この事件に挑むのは木更津と香月。
だが、事件は木更津の頭脳を以てしても膠着状態に陥ってしまう。
果たして、依頼人・村雲の娘である朝霞の無実を証明することが出来るか?

矢先、朝霞の継母である葛子までもが謎の死を遂げてしまう。
さらに当の朝霞が謎の襲撃を受けることに。
しかも、無関係と思われた岡野までも殺害されて……。

・前回のあらすじはこちら。
『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第11話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2015年11月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

岡野殺害のトリックから木更津が導き出した犯人の名は朝霞であった。
だが、木更津自身がこの結果に納得していないらしい。

どうして葛子の頭部が切断されていたのかが説明出来ないからである。
ダイヤと鏡により葛子の遺体は外部から運び込まれたと考えられる(5話)。
では、頭部切断は何の為に行われたのか!?
そして、何より犯人がバルトークの「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」をモチーフにした理由も不明である。

一方、そんな木更津の気も知らず今回の事件を新作として発表したい香月。
一刻も早く発表したいとこれまでの経緯を原稿にしたものを木更津に渡し校正を依頼する。

その数日後、木更津が関係者全員を呼び集めた。
なんと、香月の原稿を目にして真犯人を突き止めたと言う。

木更津は犯人が朝霞に罪を着せようとしていると指摘。
だからこそ葛子を殺害したのであり、真犯人自身には葛子を殺害せねばならない理由は無かった。
つまり、朝霞は犯人ではない。

木更津は香月の原稿から犯人が「葛子の頭部を切断した理由」に行き当たっていた。
それは葛子殺害の前日に香月が普愛寮の寮生相手に行ったトリック談義にあった(3話)。
あれを聞き、真犯人は葛子の頭部を切断しようと思い立ったらしい。

さらに「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」をモチーフにした理由も分かった。
香月ならばソレに気付くだろうと期待したからだ。
実は福住殺害時点ではモチーフなど存在していなかった。
真犯人にとって殺害対象は福住のみ、葛子は朝霞に罪を着せる為、岡野は口封じの為の殺害だ。
福住が弦で殺害されていたのは偶然であり、香月の言葉にモチーフを得た犯人が当初からの計画のように偽装すべく利用したのだ。

言わば、期せずして香月は真犯人に殺害方法を示唆していたのである。
今回の真犯人はかくも香月を意識していたのであった。

さて、此処で犯人となりうる条件が絞られた。
つまり、葛子殺害前日に香月のトリック談義を耳に出来た人物だ。
それは日置、清音、亜弓の3人しかいない。

このうち日置は男性である以上、岡野の恋人にはなり得ないから除外。

残るは清音と亜弓だが、木更津は朝霞襲撃前に行われた香月と清音の会話(6話)に注目。
清音との間に岡野殺害の状況に繋がる台詞があったことに気付いていた。
だとすれば、清音が犯人なのか!?

いや、逆である。
清音が犯人だとすれば自身が香月と交わした言葉に関連する状況を岡野殺害現場に残す筈が無い。
何しろ、真犯人は香月を高く買っている。
自身の正体露見に繋がる行為は控えるだろう。

残されたのは……亜弓だ。

亜弓に好意を寄せていた日置だが、木更津の告発を受けた途端に彼女と距離を置く。
そんな日置の態度に肩を落とす亜弓。
福住に捨てられ、岡野に迫られ、両想いになった日置とは思わぬ形で引き裂かれることとなった。
なんとも皮肉な結末であった。

とはいえ、香月としてはこれで新作がモノに出来た。
亜弓が犯人とはなかなかに反響を呼びそうである。
お礼と言っては何だが作品中では美人にして上げようと心に誓うのであった―――『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』了。

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