ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
事件関係者たちの証言を集めて回るスキュデリとビル。 どうやらスキュデリは何かをつかんだらしく……
(東京創元社公式HPより)
<感想>
小林泰三先生の新作長編『クララ殺し』が『ミステリーズ!』にて連載中です。
今回はその第4話。
今回、井森により露天くららのメモが回収されました。
其処には「わたしが死んだらクララを探して、マリーはいいわ」との内容が。
これがダイイングメッセージだとすれば、くららはクララを疑っていたことになるか。
また、くららは溺死体で発見。
今回、マリーも溺死体で発見されている。
これが何を意味するか……「くららのアーヴァタールはマリー」なのではないか。
くららは自身の命を狙う真犯人の正体を突き止める為に死を偽装していたのではないでしょうか。
落とし穴に残された血はくららによる偽物とか。
ところが、マリーが殺害されてしまった為にくららも死亡した。
もしも、この仮説が正しいとすれば本作『クララ殺し』の意味は「クララが被害者」ではなく「クララによる犯行」の可能性も出て来たか。
いずれにしろ、これによりクララの友人たちのアリバイも無意味に。
何しろ、クララではなくマリーが目撃したことになるので。
おそらく、スキュデリもこの仮説に立っているように思われますが……。
もう1度どんでん返しがありそうな気もするのが……。
5話からも目が離せそうにありません。
さらに作者お馴染みの新藤礼津に続き岡崎徳三郎も登場。
『アリス殺し』での谷丸警部たちのような役割を果たすのか!?
こちらも注目!!
ちなみにネタバレあらすじは大幅に改変しています。
どちらかと言えば、かなりライトにしました。
本作はもっとヘヴィかつブラックです。
興味のある方は本作それ自体を読むことをオススメします!!
<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧:
【地球】
井森:『アリス殺し』から再登場。大学院生。アーヴァタールは蜥蜴のビル。
露天くらら:アーヴァタールはクララらしいが……。
ドロッセルマイアー:工学部教授。本人曰く「アーヴァタールはドロッセルマイアー」。
鼠:車中で焼死していた鼠。くららを襲った車に乗っていた。
諸星:くららの知人。千秋の父。
諸星の家内:諸星の妻。諸星とは別居中。
千秋:諸星の娘。くららの教え子。
新藤礼津:謎の女性。
岡崎徳三郎:謎の男性。
【ホフマン宇宙】
蜥蜴のビル:『アリス殺し』から再登場。相変わらず場を掻き乱すことに。
クララ:ビルが出会った車椅子の少女。
ドロッセルマイアー:判事。
シュタールバウム:クララの父親。
フリッツ:クララの兄。
鼠:クララ殺しを図ったとして処刑された。
スパンツァーニ:ナターナエルの師匠。
ナターナエル:スパンツァーニの弟子。
オリンピア:スパンツァーニが作った自動人形。
コッペリウス:ドロッセルマイアーと犬猿の仲の弁護士。
マリー:クララの友人の1人。クララ宅の自動人形。
ピルリパート:クララの友人の1人。姫。
若ドロッセルマイアー:判事と同姓同名の別人。ピルリパートの恋人。
ゼルペンティーナ:クララの友人の1人。正体は蛇。
トゥルーテ:クララ宅の自動人形。
パンタローン:スキュデリの部下。
スキュデリ:ビルに協力を申し出る。
ロータル:クララの兄……の記憶を植え付けられている。
・前回はこちら。
『クララ殺し』第3話(小林泰三著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.73 OCTOBER 2015』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
井森の提案を受けたスキュデリによりホフマン宇宙のクララ関係者に聴取が行われることとなった。
これに対しドロッセルマイアーは懐疑的な姿勢を崩さない。
特にクララの友人にも聴取すべきとするスキュデリをドロッセルマイアーは批判する。
露天くららによれば「彼女のアーヴァタールが友人たちが山車に乗る姿を目撃」している。
その後、友人たちが山車に乗っている間に露天くららが落とし穴に嵌り死亡。
つまり、くららの証言が正しければ友人たちには山車に乗っていたとのアリバイがある。
しかし、スキュデリには何やら考えがある様子で聴取を譲らない。
こうして、クララの友人であるオリンピア、ピルリパート、ゼルペンティーナたち3人たちへ聴取が行われた。
それぞれがそれぞれらしく供述する3人、ビルからすれば特に不審な点は見受けられないようだが……。
続いて、記憶を植え付けられたことで自身をクララの兄だと信じているロータルに聴取を敢行。
ロータルはナターナエルがクララを殺そうとして死亡したと主張する。
しかし、ナターナエルが死亡したのはクララが落とし穴に転落した後のことである。
つまり、ナターナエルよりもクララが先に死亡している。
その死の現場にクララが居ることは時系列上不自然なのだ。
これに気付いたロータルは自己矛盾に陥り思考停止してしまう。
現実世界でドロッセルマイアーや礼津と対策会議を行う井森。
井森は事態打開の為に現場検証を行うべきと主張、2人に冷笑されながらも単独で実行に移す。
まずは、くららと思しき遺体が発見された川だ。
ところが、待てど暮らせど特に収穫はない。
肩を落とす井森を見かねて声をかける人物が居た。
岡崎徳三郎と名乗った相手は井森に助言を授ける。
岡崎の言葉に感銘を受けた井森は落とし穴の現場へ。
すると、落とし穴の其処にある例の白い物が目に付いた。
拾い上げてみると、其処にはくららの筆跡で「わたしが死んだらクララを探して、マリーはいいわ」との文字が。
直後、井森はまたも何者かの襲撃を受けて絞殺されてしまう。
ビルから事の顛末を伝え聞いたドロッセルマイアーは繰り返される井森の死を嘲笑う。
一方、スキュデリは緊張の表情を崩さず、メモの件からもマリーに秘密が隠されていると主張。
其処に若ドロッセルマイアーが来訪。
なんと、当のマリーが溺死体で発見されたことを伝えて来る。
これを聞いたスキュデリは何やら確信した様子でビルに井森への伝言を託すが―――5話に続く。
◆「小林泰三先生」関連過去記事
【書籍関連】
・『アリス殺し』(小林泰三著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『クララ殺し』第1話(小林泰三著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.71 JUNE 2015』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『クララ殺し』第2話(小林泰三著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.72 AUGUST 2015』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『クララ殺し』第3話(小林泰三著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.73 OCTOBER 2015』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『愛玩』(小林泰三著、新潮社刊『小説新潮 2015年3月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・「ドッキリチューブ(『完全・犯罪』収録)」(小林泰三著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
【その他】
・【2014年】「啓文堂書店文芸書大賞」が決定!!栄冠は小林泰三先生『アリス殺し』(東京創元社刊)に輝く!!
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