2015年12月14日

『悪党たちは千里を走る』(貫井徳郎著、幻冬舎刊)

『悪党たちは千里を走る』(貫井徳郎著、幻冬舎刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

しょぼい騙しを繰り返し、糊口を凌ぐ詐欺師コンビの高杉と園部。美人同業者と手を組み、犬の誘拐を企むが、計画はどんどん軌道をはずれ思わぬ事態へと向かう。ユーモアミステリの傑作。
(幻冬舎公式HPより)


<感想>

疾走感のあるクライムサスペンスです。
コミカルな展開も多く、肩肘張らずに読むことが出来ます。

何と言っても印象的なのは、その登場人物たち。
ルパン的な高杉や峰不二子的な菜摘子の活躍には目を惹かれる筈。
もちろん、それだけではなく随所に仕掛けられた意外な手掛かりも見所でしょう。

また、貫井先生は『ななつのこ』で知られる加納朋子先生の旦那様でもあります。

ちなみに、ネタバレあらすじはまとめ易いように改変を加えているので、興味のある方は本作それ自体をご覧になるべし!!

<ネタバレあらすじ>

高杉と園部は詐欺師コンビ。
とはいえ、これまでの仕事はどれも小さな物に留まっている。

そんな2人の次のターゲットは健康食品会社を経営する金本。
それなりに手広く商売を行っている金本からならば大きな利益を得られると考えたのだ。

詐欺師といえどビジネスマナーは遵守すべし。
高杉は指定された時刻よりも些か早めに、馬糞の匂いが立ち込める金本宅を訪れた。
少し早目に到着したつもりだったが、金本宅の時計はちょうど予定時刻を示していた。
どうやら時計を進めているようだ、気を取り直した高杉は金本に「徳川埋蔵金を見つけたので発掘に投資して欲しい」と持ちかける。

当初、金本がこれに興味を示したことで成功を確信する高杉。
ところが、横から現れた絵画ディーラーを名乗る三上菜摘子に割り込まれたことで失敗してしまう。
高杉は這う這うの体でその場を逃げ出すことに。
代わりに菜摘子はリトグラフを金本に売りつけていた。

数日後、高杉は新たなターゲットとして資産家の渋井家に目を付けた。
ところが、其処にも菜摘子が出入りしているではないか!!

どうしても我慢が出来なかった高杉は菜摘子を掴まえ追及することに。
実は菜摘子もまた詐欺師だったのである。
金本は彼女の正体を見抜き、邪魔されたことに気付いたのだ。
菜摘子が金本に販売したリトグラフは単なるカラーコピーだったのである。

正体が露見した菜摘子だが全く悪びれないどころか、寧ろ捕まらないように窮地を救ってやったのだと嘯く。
その豪胆さに惹かれた高杉は「渋井家へ仕掛けようとしている計画」を打ち明ける。

渋井家には両親と1人息子、さらに飼い犬が居る。
このうち、飼い犬を誘拐し身代金をせしめようと企んでいたのである。

高杉が想定している身代金は1500万円。
これを聞いた菜摘子は高杉の計画に加わることを約束する。
何しろ、菜摘子にとって状況が悪くなれば逃げれば良いだけなのだから。

早速、決行を視野に入れて動き出した高杉たち。
ところが、此処で想定外の出来事が。

渋井家の1人息子・巧と接触してしまった上に、彼から狂言誘拐を持ちかけられたのだ。
巧は「液晶テレビが欲しいのだが買って貰えないので資金を捻出したい」と動機を語り、高杉を閉口させる。
また、巧は幼さに似合わぬ鋭敏さを見せる。
どうやら、かなり賢い子どものようだ。
そんな巧、唯一のコンプレックスは馬糞アレルギーであることだそうだ。

とはいえ、高杉にもプライドがある。
いや正直、其処まで事態を大事にはしたくなかった。
丁重にお断りすることとなった高杉だったが……。

直後、謎の犯人により本当に巧が誘拐されてしまった。
巧誘拐犯は高杉たちを脅迫し身代金6000万円を渋井家から引き出すように命じる。
巧の安否を確認する高杉に、電話口の巧はくしゃみを繰り返すのみ。
巧を人質に取られた高杉たちは実行犯が別に居ることを伏せた上で渋井夫妻から6000万円を手に入れることに。

この間、散々真犯人に振り回される高杉たち。
犯人は何故か事あるごとに高杉たちの行動に対して「遅い」と非難し続ける。
特に時間に遅れてなどはいないにも関わらず。

高杉は気付いた。
高杉たちの時間が遅れているのではない。
誘拐犯の時計が進んでいるのだ。

また、巧のくしゃみにも意味があった。
巧は馬糞アレルギー、つまり馬糞の匂いが立ち込める場所に居ることを教えていたのだ。

其処から導き出される結論は1つ。
誘拐犯は金本だ!!

こうして、金本のもとへ乗り込んだ高杉。
この推測は的中し、巧を取り戻すことが出来た。

後難を怖れた高杉は金本にも身代金の分け前として1千万円を与える。
さらに、高杉は菜摘子らとも身代金を少しずつ頂くと残りを巧と共に返却することに。

此処で高杉は気付いた。
巧が狂言誘拐を持ち出したのは液晶テレビが理由では無かったことに。
巧によれば保健所で殺害される犬や猫を減らすべく活動しているボランティアに寄付するつもりだったのだそうだ。

こうして事件は解決。
その数日後、巧の言葉が気にかかった高杉は件のボランティアを訪れてみた。
すると、一匹の小型犬と出会う。
以来、高杉の生活は変わった。
それまでに比較して健康的な生活になったのだ。

そんな高杉のもとへ巧からお礼の品が届く。
どんな高級品か胸を躍らせる高杉であったが、中身はドッグフードであった。
巧には全てお見通しだったのだ―――エンド。

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