日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season14」第8話「最終回の奇跡」(12月9日放送)ネタバレ批評(レビュー)。
<ネタバレあらすじ>
1枚の紙に線が引かれキャラクターが形作られて行く。
動き出したキャラクターにより次々と綴られて行く物語。
其処では花束を抱えた主人公が、愛する女性に刺殺されていた。
石段に倒れ込む主人公、その周囲に彼が手にしていた花束から花びらが舞い落ちる。
主人公は空へ向けて手を伸ばす、それは血に汚れていた。
そして、その手に握られた花束には「それでも君を愛す」とのメッセージカードが……。
これは『月刊ジュピター』に連載中の『彼方の星』、その3年ぶりに掲載される最終話の原稿であった。
鬼気迫る表情で原稿に取り組むのは、3年前の事故により連載を中止し車椅子生活を余儀なくされた悲劇の人気漫画家・箱崎咲良(玄理)。
そんな咲良にそっと寄り添うのは姉のますみ(原田佳奈)だ。
此処は彼女たちの自宅にある作業部屋である。
その部屋の外では2人の男性が原稿の完成を今や遅しと待ち構えていた。
1人は『月刊ジュピター』編集長の真山文彦、もう1人は彼の部下で編集者の藤枝だ。
原稿が落ちることを危惧した真山は「印刷所へ確認して来る」と言い残すやその場を後にする。
此の時、16時30分であった。
その数時間後、某所の公園で男性の刺殺死体が発見された。
被害者は「ダイス・エンタテインメント」の社長・原田良助(内田健介)。
原田は『彼方の星』の版権管理など咲良のマネジメントを行っていた。
現場に駆け付けた伊丹たちは溜息を吐くことに。
発見者の多くが通報せずに原田の写真をネットに上げてしまっていたのだ。
特に、18時27分に「死体見つけちゃったかもやば〜〜〜い」との書き込みが行われていたことから犯行時間はそれ以前と思われた。
この殺人事件は翌朝には大きな話題となった。
もちろん、原田の殺害状況がセンセーショナルに出回ったこともある。
だがもっとも話題となったのは、原田が『彼方の星』最終回と全く同じ状況で死亡していたことにあった。
ソレは奇しくも殆ど一致していた。
唯一、異なる点は原田の手が血に汚れていないことのみだ。
此処から「咲良が原田殺害を予言し漫画に描いた」と評判になったのである。
「これは凄いことですよ!!」と吹聴する真山や「これは神が描いたんです」と動じず淡々と語る咲良の行動もあり、世間は騒然となっていた。
そんな中、「特命係」では冠城(反町隆史)と米沢(六角精児)が言い争っていた。
冠城は「咲良が原田殺害を予言した」のではなく「殺害犯が原稿の内容を再現した」と考えていた。
其処で作者である咲良自身の犯行を口にしたのだ。
ところが、米沢は咲良の大ファンであり彼女の無実を信じていた。
こうして衝突することとなったのだ。
我慢ならない米沢は右京(水谷豊)に咲良の無実を証明するよう依頼。
右京は冠城と共に捜査に乗り出すこととなった。
早速、「ダイス・エンタテインメント」を訪れた右京たち。
「ダイス・エンタテインメント」では社長の原田を筆頭に新人社員の桜岡などが『彼方の星』のゲーム化やアニメ化、グッズ開発を手掛けていた。
ところが、今回に限っては社員の誰1人として最終回を把握していなかったことが明らかとなった。
何でも原田と真山の間でトラブルがあり、最終回については関与出来ていなかったのだそうだ。
咲良を訪問した右京たち。
車椅子姿で右京たちを出迎える咲良。
彼女は昔からアシスタントを使わない主義だそうで、今回も1人で最終回を描いたのだそうだ。
その描きかけの原稿を目にした右京は「B4サイズ」であることに目を留める。
ますみは右京たちに原田について語り出す。
原田は咲良の恩人だそうだ。
まず、5年前に1人での作業に破綻を来たしつつあった咲良をサポートした。
そして3年前、事故で仕事が出来なくなった咲良の生活を援助していたそうである。
その頃、伊丹たちは真山に事情聴取を行っていた。
だが、真山は藤枝と共に咲良宅に居たとアリバイを主張する。
その夜、特命係にはほくほく顔の米沢が居た。
冠城がますみを介し咲良の原稿を手に入れ、米沢に贈ることで恩を売ったのだ。
これにより、冠城への米沢の態度が些か軟化することとなった。
此処で冠城は原田殺害が可能な候補を挙げて行く。
あくまで「咲良が予言したのではない」とすれば、原田殺害は「漫画の内容を再現した」ことになる。
これが出来る人物は作者の咲良、姉のますみ、編集長の真山、編集者の藤枝の4人だ。
そんな冠城の推測を聞いた米沢は再び態度を硬化させる。
咲良もますみの犯行もあり得ないと言うのだ。
咲良が事故に遭ったの3年前、連載が最終回を迎える直前であった。
ところが、咲良は神社の石段で何者かとぶつかり転倒。
半年も意識を失い、その後は長いリハビリ生活を送ることとなったのだそうだ。
これを支えたのがますみであった。
だからこそ、ますみの犯行はあり得ない、と。
そんな中、伊丹たちは藤枝から「真山が16時30分から咲良宅に居なかったこと」を聞き出した。
また、真山と原田のトラブルの原因が『彼方の星』の「最終回」にあったことも判明。
最終回に肯定的な真山に対し、原田は最終回を阻止しようとしていたらしい。
一方、「ダイス・エンタテインメント」を再訪した右京たちは咲良のサインが3年前から変化していることに目を留める。
さらに、5年前の契約により『彼方の星』の権利が咲良ではなく「ダイス」が管理することとなっていることも分かった。
それは莫大な富を原田に与えていた。
どうやら原田は咲良を騙し、有利な契約を結んだらしい。
しかも、米沢から新たな情報が。
何でも咲良の絵が大きく変わっているらしい。
デビュー時は堅い絵柄であったが『彼方の星』連載に伴い柔らかくなり、最終回ではまた元の絵柄に戻っているらしい。
絵柄が変わり、サインもまた変わった。
これが何を意味するのか!?
翌日、特命係に角田がやって来た。
角田は真山のアリバイが再び成立したことを告げる。
真山は印刷所を口実に不倫相手と共に居たのだそうだ。
しかも、咲良宅を歩いて出て行く女性を目撃したらしい。
条件を満たすのは咲良かますみ。
だが、咲良は車椅子である。
伊丹たちはますみを連行することに。
ますみは目撃されたのが自分であることを認めた。
咲良に漫画を教えたのはますみだったそうだ。
言わば『彼方の星』の作者は咲良とますみの2人であった。
だが、咲良は原田に騙され『彼方の星』を奪われてしまった。
しかも、原田は咲良に最終回の執筆を許そうとはしなかった。
なんと、原田は咲良に「悲劇の漫画家だから価値がある。復活したら意味がない」と揶揄したのだそうだ。
ますみによれば、これに激怒し原田を殺害したとのことであったが……。
右京はそんなますみに紙に円を描くよう促す。
ますみが描いた円を目にした右京は「なるほど」と呟くが。
数時間後、右京たちは咲良のもとを訪れていた。
咲良の仕事用机の下に敷かれた絨毯について指摘する右京。
車椅子の人間にとって絨毯は段差を生じることになり不便である。
つまり、咲良は車椅子を用いずとも歩けるのだ。
さらに、右京はサインについて指摘する。
事故前の咲良のサインは丸い円が主体であった。
ところが、今は角型のサインである。
そして、絵柄も事故前と事故後で変わっている。
其処から右京は「リハビリで回復した咲良であったが以前と同じとまでは行かなかった」と指摘。
だから、それを悟られないようサインの筆跡を故意に変えたのだ。
また、最終回はますみも手伝ったに違いない。
『彼方の星』がデビュー当時の絵柄に戻ったのは、当時もますみが手伝っていたからだろう。
これを認める咲良だが原田殺害は否定。
右京はドイツ人建築家のミース・ファン・デル・ローエの言葉を借り「神は細部に宿る」と口にする。
此処で右京は「咲良が原田の殺害を予言した」のではなく「犯人が漫画を再現した」と断定。
犯人にとっての手本があったと語る。
こうして右京たちは3年前に起こった咲良の転倒事故について調べ始めた。
咲良の転倒現場に流れていた血の状況を目にした冠城は血痕がB4サイズの幅で途切れていることに気付く。
それは咲良の原稿と同じサイズだ。
これから、右京は其処に咲良の原稿があったと推測。
つまり、3年前の時点で既に最終回が存在していたのだ。
ならば、最終回の内容を知る人物は4人とは言い切れなくなる。
また、今回の最終回がこれほど話題になった理由が「ネットに出回った現場写真にある」とする右京。
それが犯人の目的だったとすれば……。
翌日、「ダイス・エンタテインメント」に咲良の名で1通のメールが届いた。
「私の無実を証明出来る物を原田社長が持っていた筈、それを届けて欲しい」との内容だ。
その午後、「ダイス・エンタテインメント」の桜岡が咲良を訪問する。
その手には3年前に描かれた『彼方の星』最終回の原稿が握られていた。
桜岡はこの原稿を目にした人間ならば誰でも犯行可能だと咲良に訴えかける。
それこそ咲良の無実を証明出来る、と。
ところが、其処に右京たちが現れた。
すべては右京たちの罠だったのだ。
右京は『彼方の星』最終回と原田殺害現場の唯一の違いに注目した。
それは「手が血に汚れているか」どうか。
あそこまで緻密に再現した犯人が、どうして再現し損ねたのか。
その理由こそ「手本とした原稿に描写が無かったから」であった。
この最終回と犯行現場の違いは、同時に3年前の原稿と今回の原稿の差異でもあった。
つまり、犯人は3年前に描かれた最終回に基づいて犯行に及んだのだ。
さらに、右京はネットに出回った原田殺害現場の写真が5パターンであったと告げる。
そのうち4枚は原稿とアングルが異なる。
ところが、1枚だけ漫画のコマと全く同じアングルの写真があったのだ。
その投稿元を調べたところ、漫画喫茶からであることが分かった。
そして、その防犯カメラ映像に桜岡が映っていたのである。
しかも、右京たちは咲良の名でメールを送った後に桜岡の行動を監視し、原稿が桜岡宅から運び出されたことを確認していた。
つまり、3年前の最終回に基づく犯行である限り、内容を知る咲良か桜岡以外には犯行不可能なのだ。
そして、咲良が犯人ならば新たな最終回に基づく筈であった。
もはや、原田殺害犯は桜岡以外に存在し得ない。
桜岡は真相を語り出した。
3年前の転倒事故の犯人は桜岡であった。
それは全く偶然の出来事だったと言う。
咲良を転倒させてしまった桜岡は、咄嗟にその場にあった原稿を拾い上げると逃げ去った。
桜岡は事故が原因で咲良が苦労していることを知り、贖罪すべく「ダイス・エンタテインメント」に入社した。
ところが、其処で原田が咲良を道具としてしか見ていないことを知った。
しかも、原田は咲良が最終回を描くことを望んでいなかったのだ。
原田は咲良がますみの助けなしでは未だ復活出来ていないことを察し、これを暴露するつもりであった。
原田は咲良を切り捨てるつもりだったのだ。
すべて自分の責任であると感じた桜岡は原田を殺害しようと決意した。
さらに、咲良の復活を飾る方法を考え付いた。
それが今回の「殺人予言」だ。
桜岡は原田を殺害すると、3年前の『彼方の星』最終回の描写を忠実に再現したのである。
「それはあなたの自己満足です、罪の意識があるのなら心から詫びるべきでした」
「いえ、私はあなたに感謝しているんです」
贖罪だと主張する桜岡を一瞥する右京、ところが咲良はそんな桜岡を感謝する。
3年前の事故の際、咲良は「まだ描きたい、まだ描かねば」との想いから「死ねない」と思った。
同時に「より良い最終回」についても考える契機となった。
犯行当夜、咲良が自宅を抜け出したのは当時を振り返り新たなインスピレーションを得る為であった。
特に3年前から追加された「血に汚れた手」は咲良にとって大きなポイントだったのだそうだ。
それこそ右京の語った「神は細部に宿る」である。
「あなたのおかげで良い最終回を描きました。これからもっと凄いモノを描きます、ありがとう」
咲良の言葉に桜岡は号泣する。
数日後、咲良の新作連載が決定した。
それは咲良の新たな境地を示しているらしい。
そんな中、米沢は敬愛する咲良の無実を証明した右京に礼をしたいと花の里に誘う。
「長い付き合いがありますが米沢さんに誘われたのはこれが初めてですねぇ」
何やら感慨深そうな右京であった―――8話了。
<感想>
シーズン14第8話。
脚本は藤井清美さん。
サブタイトルは「最終回の奇跡」。
テーマは「創作活動の奥深さ」や「創作活動の心構え」か。
其処にあるのはまさに「生みの苦しみ」。
他者にとっては些細な点でも、作者にとっては重大な点もある。
より良い作品を求める作者にとっては拘るべき点でもある。
また、作品に「適度」と言う言葉は無い。
推敲に推敲を重ね、改良に改良を加えて、ようやく1つの作品が生まれるのだ。
場合によっては生まれた後にも改良が重ねられることもある。
例えば「改訂版」とかがソレ。
単行本から文庫化されるときに、より良い表現へと変えられることもある。
一歩間違えば蛇足となりかねないが、其処に終わりはない。
劇中の咲良は3年の月日をかけて最終回に一筆を加えた。
また、自身の苦難さえ創作の糧とした。
その姿勢は、右京でさえも「神は細部に宿る」と口にするほど。
ある種、創作に携わる全ての人へのメッセージ的な回でしたね。
同時に「天才をこの手で葬ってしまった凡才の苦悩」を描いた回でもありました。
こちらは映画「アマデウス」的なメッセージか。
例えば、後世に大きな足跡を残す人物を意図せず排除してしまったら。
あるいは世の中により良い影響を与えられる人物を排除してしまったら。
あなたはどう思うでしょうか。
きっと後悔に苛まれるのではないでしょうか。
そして、桜岡は咲良への贖罪の為に原田を手に掛けました。
確かに行動は間違っていましたが、それだけ後悔の念に囚われていたのかもしれません。
ちなみに、2016年1月1日放送予定の元日スペシャルに大谷亮介さん出演との報が!!
すなわち、三浦刑事の再登場なるか!?
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