2015年12月25日

『正義を質す』(柚月裕子著、宝島社刊『このミステリーがすごい!2016年版』掲載)

『正義を質す』(柚月裕子著、宝島社刊『このミステリーがすごい!2016年版』掲載)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

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(宝島社公式HPより)


<感想>

佐方シリーズ2015年12月時点での最新短編が『このミステリーがすごい!2016年版』に掲載されました。
その名は『正義を質す』。
同じく2015年12月現在、直木賞候補になっている同作者による『孤狼の血』とのコラボ作品です。
日岡や溝口が深く絡んでいます。

第154回芥川賞&直木賞候補作発表!!

そんな本作は『正義を質す』とのタイトル通り、人それぞれの正義の形が描かれています。

「悪を糺す正義」「弱者を救済する正義」「組織を守る正義」「大義名分を重んじる正義」。

人により信奉する正義はさまざま。
そんな中、本作では登場人物たちがそれぞれの信奉する正義を問われました。

まず、佐方。
彼は「悪を糺す正義」と「弱者を救済する正義」を持っている。
だが、今回はこのプライオリティが問われました。
結果、「弱者を救済する正義」を重んじることに。

次いで、木浦。
彼は「悪を糺す正義」と「組織を守る正義」を持っている。
今回は「組織を守る正義」を優先することに。

そして、日岡。
彼は大上の正義の後継者として正義の為には手段を問わない。
また多種の正義を抱えている。
今回もそんな日岡が本領を発揮することに。

ある意味、佐方と日岡は立場こそ違えど同じ正義を持っているとも言えそうです。

また、これを描くのに「リーク事件」と「ナンバー2逮捕」が絡み合う点も秀逸でしたね。

ちなみにシリーズには既刊3冊と短編1編が存在。

まず、作中時系列的には最も未来の出来事となる『最後の証人』。
これは検事を退職し弁護士となった佐方の物語。

『最後の証人』(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

続いて、「第15回大藪春彦賞」を受賞した短編集『検事の本懐』。
こちらは捜査検事時代の佐方を描いた作品。

『検事の本懐』(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

そして、公判検事となった佐方を描いたのが第3弾『検事の死命』。

『検事の死命』(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

そして、後の筒井との決別を予見させる短編『裁きを望む』。

『裁きを望む』(柚月裕子著、宝島社刊『このミステリーがすごい!2015年版』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

このシリーズに、本作『正義を質す』が続くワケです。
当然、本作はシリーズファン必読の作品と言えそうです。
もちろん『孤狼の血』ファンも必読です。
次作にも注目です!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:

佐方:検事
筒井:佐方の上司、副部長
木浦:佐方の同期、広島地検に勤務している
上杉:木浦の上司
八百坂:高検の検事
溝口:仁正会のナンバー2と呼ばれる男。『孤狼の血』に登場
日岡:刑事、『孤狼の血』に登場


その日、佐方の姿は厳島にあった。
広島地検に勤務する同期の木浦から傷心旅行に誘われたのだ。
木浦によれば急に婚約者にフラれてしまったらしい。
以前から予定していた旅行でもあり、チケットも余っているのでどうかとの話であった。

そして今、佐方は木浦と共に旅館に泊まっている。
旧友との再会が嬉しい佐方だが、木浦の事情を考えれば素直に喜ぶワケにもいかない。

だが一方の木浦は特にフラれたことを愚痴るでもなく、別の話題に夢中だ。
先頃に騒動となった検察の裏金事件である。
それは高検の関係者がリーク元となったことで信憑性を増し、燎原の火の如く燃え広がっていた。
佐方にとっても他人事では無い。
とはいえ、てっきり愚痴を聞かされるものと決め込んでいた佐方としては木浦の心中を計りかねるところであった。

直後、何故か木浦の上司・上杉と引合される。
上杉は佐方を褒め称えると、その場を後にする。

此処に来て佐方は木浦に別の意図があることに気付いた。
それとなく水を向けた佐方に木浦は真意を明かす。

佐方が担当している溝口を不起訴処分にして欲しいらしい。
溝口は「仁正会」のナンバー2と称される大物。
木浦によれば、溝口が起訴されてしまうと「仁正会」内で抗争が発生し市民に被害が出かねないのだそうだ。
其処で佐方を懐柔しようとしていたのである。

木浦は「溝口を見逃しバランスを取ることこそが正義だ」と語る。
だが、佐方にとっての「正義」は「真実を追求すること」だ。
一度は決裂する佐方と木浦であったが……。

数日後、佐方のもとへある一方が入った。
なんと、溝口を不起訴にすれば児童福祉施設に1億円もの寄付金が入るとの取引が成立しているらしい。
佐方は「市民の安全」と「子供たちの未来」の為に「悪の糾弾」を放棄することを決断する。
こうして、溝口は不起訴処分となった。

同じ頃、木浦のもとへ今回の絵図を描いた人物から連絡が入っていた。
その人物の名こそ日岡刑事であった。

日岡は溝口逮捕を免除して貰う見返りに裏金のリーク元である高検検事・八百坂の弱味を教えることとなっていた。
これで八百坂は口封じされ裏金問題も表沙汰になることはなく終息するだろう。
「組織の正義」を標榜する木浦はほっと一息と吐くことに。

一方で、木浦はアプローチこそ異なれど同じ正義を追及する佐方と日岡を一度は引き合わせてみたいと考えるのであった―――エンド。

◆関連過去記事
【佐方シリーズ】
『最後の証人』(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『検事の本懐』(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『検事の死命』(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『裁きを望む』(柚月裕子著、宝島社刊『このミステリーがすごい!2015年版』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

【その他】
『臨床真理』(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【ドラマ版】
「最後の証人 ホテル密室殺人事件!目撃証言、物証…99%有罪確定の法廷に落ちこぼれ弁護士が挑む!!二転三転する真相、誰かが嘘の証言を!?開いたカーテンから見えた予期せぬ真犯人とは!?」(1月24日放送)ネタバレ批評(レビュー)

【「大藪春彦賞」関連記事】
「第15回大藪春彦賞」受賞作は柚月裕子先生『検事の本懐』に!!

『正義を質す』が掲載された「このミステリーがすごい! 2016年版」です!!
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