2016年01月13日

『戦場のコックたち』(深緑野分著、東京創元社刊)

『戦場のコックたち』(深緑野分著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)です!!

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

1944年、合衆国軍のコック兵となった19歳のティム。彼と仲間たちが戦場で遭遇したささやかだが不可思議な謎とは――戦いと料理と〈日常の謎〉を連作形式で描く、著者渾身の初長編!
(東京創元社公式HPより)


<感想>

そもそも戦争とは最大の非日常。
にも関わらず、公式のあらすじにある「日常の謎」を描くとはこれ如何に―――そんな気持ちで読み始めた作品です。

ところが、これが深い深い。
読み応えがあるどころか、読み応えがあり過ぎて手を焼くほどでした。
とはいえ、読み進めると面白い、面白い!!

そんな本作は2016年1月現在の「第154回直木賞」候補作。
また「第18回大藪春彦賞」候補作でもあります。

第154回芥川賞&直木賞候補作発表!!

「第18回大藪春彦賞」候補作発表!!

著者は第7回「ミステリーズ!新人賞」佳作『オーブランの少女』にてデビューされた深緑野分先生。
『オーブランの少女』の書評(レビュー)でも触れたが、文章力、構成力、ストーリーテリングと3拍子に優れた作風が特徴。
間違いなく今後に期待の作家さんの1人であろう。

『オーブランの少女』(深緑野分著、東京創元社刊「ミステリーズ vol.44」掲載)ネタバレ書評(レビュー)

本作はそんな著者の魅力が万遍なく盛り込まれている。
中でも本作最大の特徴はその強いテーマ性と、それを描き出す文章力。

テーマは「戦争の悲劇」を描いたもので、視点人物となるコック兵のティムとその周囲の人物を通じて描かれている。
同時に、ティム自身が成長して行く様も素晴らしい。

ちなみにネタバレあらすじはかなり改変しています。
特に本作の特徴の1つに文章自体がある為に、興味のある方は本作それ自体を読むことをオススメします!!

<ネタバレあらすじ>

1939年、後に第二次世界大戦と呼ばれる戦争が始まることとなった。
アメリカはルイジアナ州に暮らしていたティムはそれを他人事のように聞いていた。
また、ティムの周囲も同様の反応を示していたのである。

ところが1941年、真珠湾が攻撃されたことで流れが変わった。
他人事ではなくなったソレに、愛国心を強く刺激された人々はこぞって戦場へと赴いた。
もちろん、ティムも同じである。

家族の制止を振り切り、それが正義だと信じたティムは半ばファッション感覚で参加した。
そしてティムはコック兵となってヨーロッパ方面の前線に立っている。

当初こそ押されていた連合国側もアメリカの参戦により一気に逆転、押し込まれていた戦線を戻すと共に逆侵攻を果たしつつあった。

だが、この中でティムは少しずつファッションではない戦争を肌で感じて行く。
友人の死、敵兵を殺すこと―――その真の意味を体感して行ったのだ。
やがて、ティムは人を守る為に人を殺すことの矛盾を感じ、敵の捕虜・ゾマーを逃すことに。

そして戦争は連合国側の勝利を以て終戦を迎えた。
時が過ぎ、ゾマーや当時の戦友たちと久方ぶりに再会したティムはそれぞれの人生を生きる面々に、命の儚さと戦争の悲劇を痛感するのであった―――エンド。

◆関連過去記事
『オーブランの少女』(深緑野分著、東京創元社刊「ミステリーズ vol.44」掲載)ネタバレ書評(レビュー)

『迂闊な婦人の厄介な一日』(深緑野分著、新潮社刊『小説新潮 2015年2月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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