日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season14」第12話「陣川という名の犬」(1月20日放送)ネタバレ批評(レビュー)。
<ネタバレあらすじ>
宵闇の中、連行される人影が1つ。
その正体は陣川(原田龍二)である。
数時間後、右京(水谷豊)と冠城(反町隆史)は陣川について大河内(神保悟志)から監察官聴取を受けていた。
「叶わなかった恋を思い出すと、噛み潰したコーヒー豆の味がする」と呟く右京。
「僕にも責任があるんで」と洩らす冠城。
2人は陣川と今回の事件について大河内に語り出した。
発端は2週間前のことである。
都内マンションで1人の女性が殺害された。
これは捜査関係者を驚愕させた。
なんと、5年前に4人の被害者を出した未解決事件と同じ犯行方法だったからである。
もしや、連続殺害犯が復活したのか!?
矢先、陣川が「特命係」へとやって来た。
てっきり、例の連続殺人犯の事件かと思いきや今日の陣川は一味違った。
なんと、冠城を目にするや彼に指南を求めたのである。
それもその筈、陣川は彼らしくまたも恋に落ちていた。
其処でプレイボーイ然とした冠城にある女性との仲を進める指南を受けようとしたのだ。
今回、陣川の意中の相手となったのはコーヒー店を経営する矢島さゆみ(黒川智花)。
2人の馴れ初めは、仕事で失敗した陣川が雨に濡れた階段を滑り落ちたところをさゆみに声をかけられたこと。
以来、陣川は足繁くさゆみの店へと通い続け距離を縮めて来た。
今の陣川はさゆみの「こんにちは」との何気ない挨拶ですら楽しみで仕方がないらしい。
そんなさゆみのコーヒー店には彼女の人柄を慕って多くの客が訪れているようだ。
今日も1人の男性客が店を訪れ、さゆみに「いらっしゃいませ」と迎え入れられていた。
その夜、「花の里」でも上機嫌な陣川は強かに酔ってしまう。
右京たちの手で自宅に送り届けられた陣川、彼の自宅に貼られた手配写真の数々に冠城は驚嘆する。
其処には指名手配犯として鹿沼雄太や生木拓らの写真が貼られていた。
さゆみとの結婚を考えていた陣川。
此処までは彼にとって幸せな日々だったのだ。
ところが、あの夜にその想いは脆くも崩れ去ることになる。
さゆみのコーヒーショップを訪れた陣川が其処にさゆみの遺体を発見したのだ。
さゆみはヒールの低いブーツを履き、何処かへ出かけようとしていたのか傍らには鞄が置かれていた。
捜査に当たった伊丹たちは犯行の手口から例の連続殺人犯によるものと断定。
犯人は女性の顔を殴りつけると殺害し、顔を切り刻むのだ。
5年前に4件、今回で3件、これで7件の犯行となる。
その7件目の被害者にさゆみがなってしまったのだ。
さゆみを失った陣川は姿を消してしまった。
右京は陣川が犯人に復讐するつもりだと推理し、その行方を追う。
さゆみの姉を訪ねた右京たち。
さゆみの姉によればさゆみがカメムシの匂いを嫌い殺虫剤を撒くべく業者に依頼したのだそうだ。
この際に、さゆみが害虫駆除業者作業員の1人に対し不快感を抱きクレームを入れていたらしいが……。
一方、伊丹たちは司法書士・喜多和行を容疑者として捜査していた。
さゆみ以外に第1の被害者・瀬山恵子、第2の被害者・中里薫との接点が見出されたのだ。
その頃、さゆみがクレームを入れた作業員について調べた右京たちは当の作業員が既に退職していることを突き止めていた。
矢先、喜多が連続殺人犯として逮捕された。
さゆみ殺害現場から喜多の指紋が発見されたことが決め手である。
ところが、伊丹はこれに疑問を呈していた。
喜多が余りにもあっさりと罪を認めたからである。
喜多は余命幾許も無いことが分かり、犯行を再開したと主張していた。
同時刻、陣川はさゆみの想い出を胸に犯人を追っていた。
彼にはある心当たりがあった。
一方、右京たちは害虫駆除業者について調べ、さゆみがクレームを入れた相手を特定する。
相手の画像を目にした冠城は見覚えがあることを思い出す。
冠城によれば「コーヒーの香りを嗅ぐと同じコーヒーを飲んだ時の記憶を思い出すことが出来る」らしい。
すると、さゆりのコーヒー店に同じ作業員を見たと言うのだ。
それを聞いた右京もまた作業員を何処かで目にしたと思い出す。
それは陣川の部屋に貼られていた手配写真の1つ、そう生木拓であった。
陣川は生木が犯人だと目星を付けて復讐しようとしているに違いない。
右京たちから生木についての情報を得た伊丹たちも捜査を開始。
生木の過去の女性関係を調べ、過去に交際していた宮沢明日香のもとへ。
生木は明日香を助けようとして殺人を犯してしまい逃亡生活を送っていたのだ。
ところが、明日香によれば最近になって誰かが彼女のもとへ匿名の金を届けているらしい。
それが生木のようだ。
その頃、陣川はと言えば一足早く生木のもとに辿り着いていた。
ナイフを抜き激しい抵抗を示す生木、これと揉み合うや逆にナイフを奪う陣川。
いざ刺そうと振りかぶるが……間一髪のところで右京たちが飛び込み阻止することに。
逮捕された生木はさゆり殺害を認めた。
生木は明日香の為に害虫駆除業者で働いていた。
ところが、さゆみのクレームで退職を余儀なくされたのだ。
さゆみに対し激しい憎悪を燃やしていたところ、コーヒーショップで当のさゆみを見かけてしまった。
咄嗟に来店したところ、さゆみは「いらっしゃいませ、香が深くて美味しいですよ」と微笑んだのだ。
生木はさゆみが全く自分を覚えていないことにさらに腹を立てた。
其処で閉店を待って店内へ忍び込むと、さゆみを殴りつけたのだ。
ところが、殴りつけられたさゆみは死亡してしまった。
では、どうして喜多はさゆみ殺害の罪を認めたのか?
生木の逮捕を知った喜多は全てを語り出した。
「犯罪と恋愛は似ている」と語り出す喜多。
あの夜、喜多はさゆみを殺害するつもりで現場へ向かった。
ところが、其処では生木が既にさゆみを殺害した後だったのだ。
これは喜多にとって運命の出会いであった。
生木に同じタイプの匂いを嗅いだ喜多は自身が余命幾許も無いことを考え、生木を助けようと決めたのだ。
喜多は人助けをしたかったと繰り返す。
喜多に庇われたことを知った生木は「殺人鬼しか庇ってくれないとはなぁ……」と呟くや、陣川に向かって「気持ちは良く分かる」と語る。
こうして、陣川は生木と共に連行されることとなった。
大河内へ全てを語り終えた右京たち。
未だ聴取に対して何も喋ろうとしない陣川のもとへ。
陣川はと言えば「殺意の有無が争点だ」と聞かされても「殺すつもりだった」と譲らない。
事件の夜、陣川はさゆみと待ち合わせをしていた。
前の晩に陣川はさゆみにプロポーズしており、その返事を貰う予定だったのだ。
OKならば公園を共に散歩する予定であった。
ところが、さゆみは帰らぬ人となってしまった。
「どうせ、駄目に決まってましたけどね」
多くの客に慕われるさゆみが自身に振り返る筈が無いと口にする陣川。
「元の君に戻るんです」
「戻ってどうするんですか、彼女を守れなかった……」
そんな陣川の様子に彼を励まそうとする右京だが、陣川の絶望は深く覆らない。
一夜明け、陣川は処罰を免れることとなった。
生木が訴えないと語っている為だ。
逆に生木逮捕のお手柄から警視総監賞を受けることにさえなるらしい。
だが、今の陣川にそれが何の救いになるのか……疑問を抱く右京であった。
その夕方、右京は陣川を連れてさゆみの店へと訪れた。
店主の居なくなった店で、静かにテーブルに座る陣川。
そんな陣川に、冠城はさゆみが彼をどう思っていたかについて語り出す。
さゆみは他の客に対しては「いらっしゃいませ」と応じていたが、陣川にだけは「こんにちは」と挨拶していた。
さゆみにとって陣川は特別だったのだ。
さらに、普段のさゆみはハイヒールを履いていた。
ところが、あの日に限ってさゆみはヒールの低いブーツに履き替えていた。
陣川と散歩する為だ、それがさゆみの答えだったのだ。
「そんなの妄想ですよ……」
なお、顔を伏せて認めようとしない陣川。
そんな陣川に右京と冠城は、さゆりが持って出ようとしていた鞄を取り出す。
その中身は「コーヒー・セレモニー」。
エチオピアの冠婚葬祭の道具でプロポーズの了承の際に用いるのだそうだ。
亡きさゆみに代わり「コーヒー・セレモニー」を用いる右京たち。
ふと、顔を上げた陣川。
其処には右京と冠城、そして笑顔のさゆみが居た―――12話了。
<感想>
シーズン14第12話。
脚本は真野勝成さん。
サブタイトルは「陣川という名の犬」。
ちなみに1月13日時点では「アンフォゲタブル」とのサブタイでした。
「アンフォゲタブル」の意味は「忘れられない、いつまでも記憶に残る」。
つまり、今回の事件は陣川君にとって忘れられない事件となりました。
これまでも被疑者を愛し続けた陣川君。
そんな陣川君が新たに愛した相手は被疑者ではなく被害者に。
しかも、さゆみは陣川君を受け入れようと決意していました。
何も無ければ、今度こそ陣川君に春が訪れていた筈。
それだけに陣川君にとって今回の事件は自身の無力を痛感させると共に大きな痛手となったことでしょう。
それにしても、陣川君の恋は何時も切ない結末に終わるなぁ……。
いや、むしろ陣川君は何かある相手に対しソレと意識せずに惹かれてしまうのかもしれない。
そう言えば、麻耶雄嵩先生の「メルカトル鮎シリーズ」のある短編でもありましたね。
また、生木は報われない愛に生きるとの点で「もう1人の陣川」と呼べるのかもしれません。
そして、さゆみが喜多と生木と殺人犯2人に狙われていたとの事実……。
そうそう、本作では「匂い」も大きなポイントでしたね。
「コーヒーの匂い」、「カメムシの匂い」、「殺人者の匂い」。
さゆみが生木に嗅ぎ取ったのは奇しくも「殺人者の匂い」だったのかもしれません。
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