日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season14」第15話「警察嫌い」(2月10日放送)ネタバレ批評(レビュー)。
<ネタバレあらすじ>
ある朝、今日も伊丹が事件現場に駆け付けていた。
伊丹は普段の渋面を崩すことなくブルーシートに覆われる現場のマンションへと乗り込んで行く。
そんな事件現場を向かい側のマンションから覗き込む人影が。
人影はその様子を目にするなり舌打ちを繰り返す。
現場であるマンションの一室に辿り着いた伊丹。
其処には米沢が先着していた。
米沢によれば、被害者は共和堂大学政経学部に在籍する女子大生・色川真子(澄音)。
室内を一瞥した伊丹はその金回りの良さに舌を巻く。
その日の昼のことである。
公務員の青木(浅利陽介)は上司から真子の事件について聞かれ不機嫌さを隠そうともしていなかった。
この青木こそ真子のマンションの向かい側の住人であり、舌打ちを繰り返した当人である。
同じ頃、ホテルのラウンジでは角田(山西惇)が苦い顔である人物と対峙していた。
その相手は広域暴力団「伊縫組」の組長・伊縫剛(上杉祥三)。
伊縫は角田から真子殺害について情報を引き出そうとしていたのだ。
それもその筈、真子は伊縫が愛人に産ませた娘であった。
伊縫は真子殺害犯の早期逮捕を願っているのだそうだが……。
事情を角田から聞かされた右京(水谷豊)と冠城(反町隆史)が捜査に乗り出した。
真子の死因はガウンの紐による絞殺。
死亡推定時刻は23時から0時の間。
ただし、真子が風呂上りであったことから顔見知りの犯行が疑われているらしい。
また、第一発見者は同じ大学の同級生男子。
とはいえ、恋人ではなく真子のアッシー君だったのだそうだ。
これを聞いた右京は自身の乗り出すべき事件では無いと判断するのだが、冠城に押し切られるように犯行現場へ連れ出される。
渋々ながら犯行現場を見回した右京、向かい側のマンションの人影に目を留めることに。
その人影は真子の部屋を凝視していたのだ。
そう、青木だ。
こうして青木を訪ねた右京たち、彼は右京たちを軽くあしらいつつ「犯行を目撃した」と驚くべき証言を行う。
ところが、目撃した内容については「協力する気はない」と拒否し始めてしまう。
そんな中、伊丹たちが3人の被疑者を検挙した。
それぞれがそれぞれに疑わしき点があり、誰が犯人とは絞り込めないらしい。
まずは、第一発見者で真子のアッシーである谷純一郎。
なんと、真子のガウンから谷の指紋と汗が検出されたのだ。
だが、谷によればトイレを借りた際に我慢し切れずガウンに頬ずりしてしまったのだと言う。
当然、殺害は否定している。
続いて、真子の恋人を名乗る森下美緒。
どうやら真子はバイセクシャルだったようだ。
美緒は真子宛に「お前、ぶち殺してやるからな」とのメールを送信していた。
どうやら、2人の仲は上手く行っていなかったらしい。
美緒によれば訪問した時点で真子は入浴中だったのだそうだが……これまた殺害は否定している。
そして石川敬三、真子のバイト先であるペットショップの常連客であった中年男性だ。
とはいえ、石川の狙いはペットよりは真子自身だったようだが。
犯行当日も石川はSMグッズを多数持参し真子宅を訪れていた。
ところが、其処には死亡した真子が横たわっていたと言う。
これも殺害は否定している。
なるほど、3人ともに怪しいが決定打は特にない状況であった。
ところが翌朝、事件はさらに混迷の度合いを深めることに。
なんと、被疑者3人が3人共に犯行を認めてしまったのだ。
つまり、3人の中に真犯人が居たとしても残る2人が自白を強要されてしまったことになる。
これは大問題だ。
右京は3人の被疑者の担当を変えて再度取調べを行うべきではないかと伊丹に提案。
しかし、伊丹はこれを丁重に拒絶する。
実は、伊丹は目撃者である青木を頼りにしていたのだ。
なにしろ青木が全てを目撃したのならばその証言ひとつで解決するのだから。
右京たちと共に青木を訪ねた伊丹。
ところが、青木はあっさりと証言を拒否する。
当初は自信満々だった伊丹だがみるみる青褪め、次いで紅潮し始めた。
見かねた冠城は「証言に自信が無いんでしょう」と青木に揺さぶりをかける。
だが、逆に青木から「ビデオもありますよ、犯人の顔もバッチリです!!まっ、協力しませんけどね」と反撃されてしまうことに。
「何があったの?」
職場に戻った青木、上司から尋ねられたその顔は怒りに震えていた。
どうやら、先程の遣り取りは青木にとってよほど腹が立つことだったらしい。
上司によれば、青木の父も警察官なのだそうだが……。
一方、青木の協力を得られなかった伊丹たちは「盗撮容疑で令状を取って青木のビデオを押収する方法」を目論む。
冠城はと言えば「杉下さんなら別の方法で何とかしてくれますよね」と右京の手腕に期待する素振りを見せる。
これに満更でも無い様子の右京だが……。
矢先、容疑者3人が犯行を認めたとの記事が報道された。
当の青木は記事を目にするや大喜び、さらに真子殺害の現場映像を眺めつつ満足そうに夕食を口にする。
翌朝、伊丹たちは自身の計画が頓挫したことを知らされる。
令状の許可が下りなかったのだ。
どうやら、例の記事が影響したらしい。
ところが、特命係では右京が表情を変えていた。
令状を阻止したのは冠城の仕業だったのだ。
冠城はどうしても右京に事態を収拾させたいらしい。
そんな中、青木に伊縫が接触した。
伊縫は青木に目撃証言を行うように頼み込む。
だが、青木はこれをはっきりと拒絶する。
其処へ冠城が駆け付けた。
冠城は「伊縫が伊縫組組長だ」と身許を明かし青木を牽制する。
しかし、それでも青木は譲らない。
その場は引き下がることとした伊縫。
冠城は青木に「協力しないと安全は保障出来ませんよ」と暗に脅迫を行う。
これに対し、青木は「其処を何とかするのがあんたらの仕事だろ」と主張することに。
さて、この様子を眺めていた右京は「マッチポンプだ」と冠城を批判する。
伊縫に情報を教え、引き合わせたのは冠城だったのだ。
青木が伊縫の圧力に屈することを期待したらしい。
これを知った角田がキレた。
角田から管理責任を問われた右京が遂に動き出す。
その夜、日下部から冠城に「ほどほどにしろ」との忠言が飛んだ。
何やら、考え込む冠城であったが……。
翌日、青木は右京に喫茶店へ呼び出されていた。
右京は青木に対し下手に出つつ、それとなく面通しを依頼する。
机に被疑者3人とされる写真を並べると「全員、被害者女性と関係を持っていました」と告げたのだ。
興味無さそうにしつつも、そっと覗き込む青木。
ところが、机に並べられたのは被疑者ではなく角田課長ら組対5課メンバーの写真である。
当然、これを知らない青木は何やら納得すると鼻で笑ってその場を後にする。
喫茶店を出た青木。
未だにニヤニヤと笑いを浮かべながら歩く青木の前を行き交う人々。
1人目は若い男性。
ぶつかりそうになった青木はそっと避けたが、特に興味を示さない。
2人目は若い女性。
青木は彼女を目にしつつ、特に興味を示さない。
3人目は中年の男性。
此処で青木が極端に反応した。
明らかに相手から顔を背けると距離を取ろうと離れて歩き出した。
「ご協力ありがとうございます!!」
途端、物陰から陽気に冠城が飛び出して来た。
「やはり驚きますよね。被疑者3人とニアミスをしたんですよ」
次いで、青木の背後から右京が声をかける。
そう、青木とすれ違った3人は谷、美緒、石川であった。
右京は敢えて3人と青木をニアミスさせることで青木の様子を窺ったのだ。
そして、青木は石川が犯人であると態度で示した。
角田課長らの顔写真は青木に真犯人が未だ逮捕されていないと思い込ませる為の罠だったのだ。
「だから嫌いなんだ!!」
逆上する青木、そんな青木に「そう言えばあなたのお父様は警察官をされていますね」と語りかける右京。
「他人のプライベートに踏み込むんじゃないよ!!」
右京の言葉に青木はさらに激しく怒り出した。
「あなたが今後、2度と犯罪に出くわさないことを祈ります。我々やあなた、被害者の為にも」
そんな青木の態度に右京はそっと告げるのであった。
数十分後、自宅に戻った青木はビデオカメラから犯行現場が撮影されたSDメモリを取り出していた。
その傍らには右京と冠城が立っている。
一矢報いようとSDメモリを割ろうとする青木。
「あっそれ、証拠隠滅ですよ」
冷静に冠城に指摘された青木は呆然とすることに。
「誤解され易いんですよね〜〜〜証拠隠滅が罪に問われるのって犯人じゃなくて第三者が行った場合なんです。犯人だったら隠滅して当然ですから」
「その罰は2年以下の懲役、20万円以下の罰金です」
「だから嫌いなんだよ!!」
冠城、右京の連携に今度こそ敗北を認めた青木であった。
同じ頃、取調室の石川の前には伊丹ら6人が立ち塞がっていた。
今度こそ、石川の口から真実が明かされることになるだろう。
その夜、冠城は右京から「今回の態度についてお説教」を宣言されていた。
どうやら、今宵は長くなりそうだ―――15話了。
<感想>
シーズン14第15話。
脚本は輿水泰弘さん。
サブタイトルは「警察嫌い」。
そのものズバリ青木自身を指したものですね。
青木は父が警察官だそうなので、父親への感情が父の仕事へと向かってしまったと言ったところでしょうか。
親子相克がありそうだなぁ……。
ただ、青木は真子殺害の映像を眺めながら嬉々として食事出来る時点で精神的にかなりヤバイ人のような気がします。
今回は「そんな青木に如何に面通しに協力させるか」がポイントでした。
此処で右京が採用した方法は、劇中で伊丹が「お時間都合の良い時で大丈夫なので来て貰えませんか」と青木に足を運ぶように依頼していたものと対比されています。
まず「目撃者側から足を運んで貰うのがダメ」ならば「被疑者側から足を運ばせれば良い」。
そして「口に出して指摘して貰うのがダメ」ならば「態度で表現して貰えば良い」。
何より「協力して貰うのがダメ」ならば「協力せざるを得ない状況を作れば良い」。
まさに逆転の発想を用いたワケです。
その一方で本作では「冤罪の恐ろしさ」、さらに「人間による証言を重視することの危険性」も描かれていました。
まずは「冤罪の恐ろしさ」。
何しろ、3人の被疑者が3人とも罪を自供してしまったとの事実は恐ろしい。
そのうち、2人は身に覚えのない罪を自供してしまっているワケで。
あってはならない出来事です。
さらに「人間による証言を重視することの危険性」。
ビデオなどの物証と異なり、人は過ちを犯す生き物です。
たとえ本人にその気が無くとも証言を誤ることはあるかもしれない。
見たつもりの物が見えてなかったり、思い込みから見誤ることはあり得る。
それはその日のコンディションや感情にも左右されるかもしれない。
さらに、故意に証言を捻じ曲げることもあり得る。
それは相手への好意であったり、買収されたりもあるでしょう。
そんな危険性を体現した存在が青木でした。
青木は素直に嫌悪感を表に出し協力拒否していましたが、あれが嫌悪感を内に秘めつつ嘘を述べたとしたら。
例えば、青木が表向きは伊丹の申し出に応じ面通しに協力する素振りを見せる。
ところが、実際は不快感から嫌がらせで石川ではなく谷を犯人だと告発したら。
もちろん、虚偽の証言を行ったことで青木は罪に問われるでしょう。
ただし、青木が虚偽の証言を行ったと分かれば……の話です。
そもそもそれが虚偽の証言だと分かる為には石川が犯人であることが判明せねばならない。
犯人が分からなかったからこそ青木に頼った以上、これは相当に困難です。
「谷が犯人ではない」との確たる事実が無ければ疑う余地も無いでしょう。
さらに、偽証の罪を問うには青木が故意であることを証明せねばならない。
これを乗り越えない限り、青木の気分次第で石川ではなく谷が罪に問われることとなるのです。
背筋が凍る恐ろしい事態だと思わずには居られません。
すなわち「証言とは証言者の性善説に基づかなければかくも危険を秘めている」ことになる。
この意味で右京の「あなたが今後、2度と犯罪に出くわさないことを祈ります」との言葉は適切でした。
また、これは青木に限らず大きな問題点だと言えるのかもしれません。
そして急に曲者ぶりを発揮し始めた冠城。
これは今話だけなのか、それともシリーズに跨る何かに繋がるのか。
此の点も注目と言えるかもしれません。
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- 四代目「相棒」の詳細判明、その名は冠城亘(かぶらぎわたる)!!しかも、意外なプロ..
伊縫たちが手を出さないのは、課長と繋がっているからであって、青木は伊縫の恐怖と言う枷を嵌めた場面でした
亀山時代の話に、揉み消して信頼されなくなる方が怖いと言っていた右京です
「責任とは、必ずしも罪を犯した本人が背負うものではない」と昔、ある物語にあった言葉なのですが青木父の責任を背負うのは、確かに筋違いでしょう
では、筋違いを盾に青木をやり込めようと横暴な手段を使った
これこそ上で杉下が恐れたものでないでしょうか
青木は今回、憎まれ役だし行為も褒められたことではないが、むしろ彼でも罪も犯してない以上、守らなければならない
いや、守って信頼を得るべきだったかもしれません
それこそ、今までの相棒らしい話だったと思います
こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!
確かに、右京さんの立場からすれば青木に真正面から向き合い彼のトラウマを解消した上で協力を要請することこそが正しかったのかもしれません。
それでこそ「絶対的正義」が活きて来た筈。
だが、右京さんでさえ青木の頑なな心を溶かすことは出来なかった。
それだけ青木のトラウマが深かったのだとすれば悲劇と言えるのかもしれません。