ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
手首の動脈を切って、湯の中で徐々に脱血させ、死亡させるという異常な殺人方法。医師と製薬界の荒廃した連繋と意外な愛憎関係がもたらした連続殺人事件を描く本格推理長編。
製薬会社と癒着している医学界の現状を批判した東京都下の大学病院の医局員住田友吉が、名古屋のホテルで他殺死体となって発見された。その殺人方法は、手首の動脈を切って、湯の中で徐々に脱血させ、死亡させるという異常なものであった。2ヵ月後、ほぼ同じ方法によって開業医が……。医師と製薬界の荒廃した連繋と意外な愛憎関係がもたらした連続殺人事件を描く本格推理長編。
(新潮社公式HPより)
<感想>
本作は医療のたらい回しを逸早く取り上げた作品。
この問題、今も取り上げられるほどでまさに松本清張先生の感覚の鋭さを示した作品と言えます。
同時に社会派ミステリの面目躍如とも言えるでしょう。
ただ、時代の影響が色濃い為か、それ以外の細部―――特に展開にかなり恣意的な点があります。
とはいえ、決して作品の先見性は色褪せないでしょう。
ちなみにネタバレあらすじはかなり改変しています。
興味のある方は本作それ自体を読むべし。
<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧:
須田:刑事
住田:大学病院の医師
香原:香原医院の医院長
小池:製薬会社の社員
ユーリ:赤毛の女
萩原和枝:住田から俳句を評価されていた高齢女性
雄一:和枝の長男、脊椎カリエスにより病床に臥している
美奈子:雄一の妻
修二:和枝の次男、故人
青柳:???
青柳を名乗り製薬会社と医学界の癒着を告発記事にしていた大学病院の医師・住田が何者かに殺害された。
捜査に乗り出した須田は容疑者として、告発記事を書かれた製薬会社の社員・小池を疑う。
また一方で、住田の趣味が俳句であったと知る。
住田が特に評価していたと言う高齢女性・萩原和枝に注目した須田。
和枝には2人の子供が居た。
1人は長男・雄一。
脊椎カリエスを患っており、病床に臥している。
そんな雄一には1年前に結婚した妻・美奈子が居る。
近所の評判によれば美奈子は献身的に介護しているそうだ。
もう1人は次男・修二。
こちらは数年前に事故死を遂げていた。
轢き逃げだそうで犯人は未だに捕まっていない。
小池を疑いつつも決め手を欠く須田。
矢先、香原医院の医院長・香原が小池と同じ方法にて殺害されてしまう。
同一犯の犯行と思われたが、謎の赤毛女性の目撃証言が浮上。
容疑はこちらへシフトすることに。
この謎の女性が小池と交流のあったユーリではないかとの疑惑が浮かぶ。
しかし、ユーリには住田も香原も知らないと主張する。
これに須田は小池がユーリを囮にして誰かを庇っているのではないかと考えるように。
直後、当の小池までもが殺害されてしまう。
須田は小池が共謀者に殺害されたと考える。
事件を振り返った須田は住田と香原が共に医師であることに注目。
犯人の動機が其処にあると調べ始めた。
すると、事故死した修二がこれに関わっていることを突き止める。
事故直後、救急搬送された修二は2つの病院で受け入れ拒否されていたのだ。
もう30分早ければ救うことも出来たかもしれない状態だったらしい。
この拒否を行ったのが住田と香原だったのである。
須田は和枝と雄一たちが小池と共謀し修二の復讐を行ったのではないかと考える。
だが、和枝は高齢で雄一は動けない。
いずれも犯行は難しいだろう。
しかも、小池は住田殺害についての動機はあるが香原殺害には動機が無い。
悩む須田だが、小池が庇っていた赤毛の女性について思い当たる。
もしかして、美奈子は修二の元恋人では無かったか。
だとすれば、美奈子は復讐の為に小池と男女関係を結び、これを仲間にしたのではないか。
その上で口封じに殺害したのではないか……。
つまり、今回の犯行は萩原一家3人による共謀だったのだ。
それから数日後、須田はある記事を目にし衝撃を受ける。
美奈子が雄一と心中を図ったのだ。
記事では介護に疲れてのこととされていた。
また、和枝も自殺を遂げてしまう。
その真の意味を知る須田はそっと目を閉じるのであった―――エンド。
◆松本清張先生関連過去記事
【小説】
・「霧の旗」(松本清張著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
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・『疑惑』(松本清張著、文藝春秋社刊)ネタバレ批評(レビュー)
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・『事故』(松本清張著、文芸春秋社刊『事故―別冊黒い画集1』収録)ネタバレ書評(レビュー)
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・『坂道の家』(松本清張著、新潮社刊『黒い画集』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『草』(松本清張著、新潮社刊『松本清張傑作選 暗闇に嗤うドクター』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『影の地帯』(松本清張著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『共犯者』(松本清張著、新潮社刊『共犯者』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『地方紙を買う女』(松本清張著、新潮社刊『張込み』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『黒い樹海』(松本清張著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
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【ドラマ】
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