<あらすじ>
静岡県沼津市で、医療セミナーが開催され、「光栄医療」販売部係長の小池邦彦と部下の岡村隆明は、最新医療機器のプレゼンを行なっていた。懇親会では、セミナーに参加していた大学附属病院の外科医師・住田友好などに話しかけるが、ほどなくして住田は急用で東京に戻ると会場を後にする。ところが翌日、住田は中伊豆の温泉旅館で遺体となって発見されることに…。
現場に到着したのは、静岡県警捜査一課の大塚京介(村上弘明)。気になることがあるとまわりが見えなくなる変わり者で、新人刑事・田村美咲(剛力彩芽)も振り回されているひとりだ。しかし浴槽の遺体を見た大塚は、左手首に1pに満たない創傷を発見し、殺害による失血死と断言。橈骨(とうこつ)動脈を切断しゆっくりと死んでいく残酷な殺し方を見抜く。また住田の遺留品から、“青柳刃治(あおやぎじんじ)”なる人物からの「あなたの秘密を知っている」と書かれた脅迫状が見つかり、さらに調べを進めるべく、独断で大塚は美咲と共に東京へ向かう。
その頃、東京・深大寺の公園でも殺人事件が起きていた。現場に駆け付けた警視庁捜査一課の刑事・須田浩平(陣内孝則)もまた、「お前がいると現場が荒れる」と言われるような変わり者刑事。だが現場を見た途端、残虐な殺害方法を瞬時に推理する。しかも被害者は、住田と同じ静岡の医療セミナーに出席していた「香原病院」院長の香原順治郎だった――。
10年前に犯人が東京から静岡へ逃げた事件でコンビを組んだが、変わり者同士、揃って捜査からはずされたという大塚と須田。二つの残忍な事件に関連性があると踏んだ二人は、お互い情報交換し合いながら事件を追うことに。
“住田の趣味が俳句”という手がかりから捜査を進める大塚のもとに浮かび上がった“萩原和江”という女性。“青柳刃治”の正体を突き止めるべく捜査する須田。
点と点が繋がっていく中で明らかになっていく真実!そこには、医師と医療機器メーカーの荒廃した癒着と、意外な愛憎関係のもつれがあった…!
(公式HPより)
では、続きから(一部、あらすじと重複あり)……
大塚京介は捜査一課の刑事である。
後輩の新人刑事・田村美咲とコンビを組んでいる。
そんな大塚たちが担当したのは、外科医師・住田友好殺害事件。
住田は温泉旅館の浴槽で左手首から血を抜かれて失血死していた。
おそらく最期まで意識があったに違いない、生きながらにして死を感じる残忍な殺害方法である。
捜査に乗り出した大塚たちは前日に住田が「光栄医療」販売部係長・小池邦彦やその部下・岡村隆明から最新医療機器についてプレゼンテーションを受けていたことを知る。
しかし、途中で急用を訴えて退席していたらしい。
住田の同僚医師・黒崎守によれば、住田を恨む人物は思いつかないとのことだが……。
大塚は住田の遺留品から「青柳刃治」による「あなたの秘密を知っている」との脅迫状を発見。
もしや、住田は青柳に脅迫されていたのか!?
大塚は美咲と共に住田の交流関係を調べ始めた。
一方、警視庁捜査一課刑事・須田浩平もまたある事件の捜査を行っていた。
被害者は「香原病院」の院長・香原順治郎、香原もまた住田と同じく小池たちと接触していた。
しかも、香原もまた失血死による殺害だったのである。
奇妙な共通点に導かれるように捜査を続ける大塚と須田は再会する。
2人は過去にも同じ事件を追っていた間柄だったのである。
こうして、互いに情報交換を約束する大塚たち。
矢先、住田が俳句を趣味としていたことが判明。
この俳句を通じて萩原和枝なる女性と交流していたことが明らかに。
萩原家を訪ねた大塚たち。
すると、和枝は70代の女性であった。
車椅子で生活する長男・雄一やその妻・美奈子と同居していると言う和枝によれば嫁姑で犬猿の仲だそうだ。
念の為、大塚が和枝のアリバイを確認したところ、友人宅で遊ぶとタクシーで自宅まで帰ったと言う。
この際、雨の中で美奈子が傘を差して待っていたことが気に喰わないと主張する和枝だが。
その言動に妙な違和感を抱いた大塚は和枝の友人やタクシー運転手にアリバイを確認する。
だが、そのアリバイは鉄壁であった。
その頃、須田は香原の愛人・藤田芳江の存在を突き止めていた。
芳江は2年ほど前まで香原病院に勤務していた看護師。
当時から香原と愛人関係にあったのだが、ある晩も逢瀬の為に急患を断っていたところを妻に見咎められクビにされたと言う。
芳江によれば何者かが香原と彼女について調べていたのだそうだが……。
矢先、大塚たちは住田のPCから彼こそが「青柳」であったことを知る。
つまり「住田が何者かに脅迫されていた」のではなく「住田が何者かを脅迫していた」のだ。
その内容から黒崎が脅迫されていたことに気付く大塚。
どうやら黒崎は小池からリベートを受け取っており、住田に脅されていたようだ。
当然、秘密を知られた小池にも住田殺害の動機が発生することになる。
同じ頃、芳江を調べていた何者かを追っていた須田は防犯カメラ映像から小池と赤い髪の女に行き当たる。
こうして、住田と香原の殺害に小池の存在が浮かび上がった。
小池に接触した大塚は赤い髪の女の正体について問い質す。
これに小池は関与を否定、赤い髪の女もお気に入りのデリヘル嬢・ユリーだと応じるが。
その翌日、大塚は雄一の車椅子が「光栄医療」の物であることに気付く。
つまり、萩原家と小池にも接点が見えて来たのだ。
さらに、雄一が香原病院に通院していたことも明らかに。
どうやら2年前の香原と芳江の不倫について調べていたらしく、急患を断ったことについても聞き出していた。
ちなみに、その急患は断られた為に死亡してしまったらしい。
この死亡した急患こそ和枝の次男・萩原修二であった。
須田はと言えばユリーと接触し、小池の供述が虚偽であったことを突き止めた。
追い詰められたことを知った小池は逃亡する。
此処までの情報を教え合う大塚と須田。
2年前、修二はバイクで轢き逃げされ救急車で搬送された。
ところが、住田と香原に治療を拒否されていたのだ。
結果、修二は死亡してしまったのである。
事情を聞くべく和枝宅を訪れた大塚たちは其処で小池の遺体を発見する。
代わりに雄一と美奈子が消えてしまった。
大塚は何があったか和枝に尋ねるが……和枝は何も語ろうとしない。
調べを続けた大塚たちは修二に恋人が居たことを突き止める。
さらに、住田が治療拒否どころか修二に対し投薬ミスを行っていたことが判明。
和枝には香原と住田を殺害する動機がある。
だが、和枝にはアリバイがあった。
此処で小池がクローズアップされる。
小池は共犯者である赤い髪の女と共に香原と住田を殺害したのだろう。
それにしても、赤い髪の女はどうして其処まで復讐に協力したのか?
此処で浮かぶのが修二の恋人だ。
当時、修二の恋人は妊娠していたと言う。
だが、直後に流産していた。
修二の恋人は香原病院まで救急車に同乗していたのだが、治療を拒否した香原に突き飛ばされ流産していた。
その恋人こそ美奈子だったのである。
赤い髪の女の正体は美奈子であった。
では「雨の中で美奈子が傘を差して和枝を待っていた」とのタクシー運転手の供述はどうか?
そもそもタクシー運転手は美奈子を知らない。
しかも、雨の中で相手は傘を差しており、運転手は車の窓越しである。
本人かどうかなど確認しようが無い。
おそらく、その美奈子は雄一の変装だったのだ。
本来ならば家族の証言はアリバイとして採用されない。
だが、嫁姑間で不仲とされていた為に鵜呑みにしてしまったのだ。
雄一との結婚は偽装だった。
そして、小池の殺害はアクシデントであり既に復讐を果たしたとすれば……。
矢先、和枝が動き出した。
向かった先は山間の湖畔、其処には雄一と美奈子が待っていた。
自殺しようとする和枝。
これに雄一と美奈子も同行すると訴える。
しかし、大塚たちが駆け付けてこれを止めた。
小池を殺害したのは雄一であった。
小池は大金と共に美奈子を連れて逃亡しようと目論んでいた。
これを拒否した美奈子に小池が激昂し襲いかかった。
美奈子を助けようとした雄一が殺害してしまったのである。
事態を知った和枝が2人を逃がしたのであった。
生きて罪を償うように訴える大塚。
しかし、和枝は「住田と香原は修二のことを全く覚えていなかった」ことを理由に反省する必要は無いと叫ぶ。
だが、大塚は修二が復讐を望んでいなかったと諭すのであった。
こうして、和枝たちは逮捕された。
事件を解決した大塚と須田は再会を約して別れることに―――エンド。
<感想>
原作は松本清張先生の長編『喪失の儀礼』(新潮社刊)。
原作『喪失の儀礼』については過去にネタバレ書評(レビュー)してますね。
・『喪失の儀礼』(松本清張著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
では、ドラマの感想を。
公式HPのあらすじだと「萩原和枝」ではなく「萩原和江」表記になっていましたが、今回は原作に沿って「和枝」表記で統一しています。
さて、ドラマ版は原作に比べると大筋こそ同じですが細部に変更点がありますね。
とはいえ、全体的に改良だと思われます。
今回はアレンジを加えた甲斐があったと感じています。
特に大きな差異は萩原一家関連か。
萩原一家の内面が窺えるようになっていたのは大きかった。
原作ではあくまで大塚たちの考察段階に留まっているので。
また、美奈子が修二の子供を妊娠していたことにより動機が補強されていたことは良かったと思います。
それと、修二の事故相手を曖昧にして萩原一家の復讐が身勝手なモノとの印象を抱かせないようにしていた点も特筆すべきでしょう。
原作では修二の死は轢き逃げであり、相手が分からなかったので恨みの矛先が住田と香原に向かったことになっています。
そう言えば、原作では住田と香原ともに受入拒否したことが恨まれる理由でしたが、ドラマ版では住田の医療ミスも加えられていました。
これも上記と同じく萩原一家の復讐に正当性を持たせる為か。
それに伴い、小池殺害も計画的な犯行から衝動的な犯行に変更されていました。
また、復讐を果たした萩原一家が自殺ではなく逮捕になっていた点も重要でしょう。
原作ではそれぞれがそれぞれに自殺してしまうことで復讐の虚無感を強調していましたが、ドラマ版は全体的にマイルドにされていたと言えそうです。
それが今回は良い方向に働いていた印象です。
ちなみにラストシーン、日中から始まって再現を挟んだ直後に真っ暗になってましたね。
夜まで待ったのかなぁ……夜間である必然性ないもんなぁ。
アレが些か気になりました。
さて、他にも松本清張先生原作ドラマの情報が!!
フジテレビ系で『かげろう絵図』が2016年4月8日に放送予定。
さらに、同じくフジテレビ系にて『一年半待て』が2016年4月15日放送予定。
注目すべし!!
・『一年半待て』(松本清張著、新潮社刊『張込み』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・松本清張先生『かげろう絵図』がフジテレビ系「金曜プレミアム」にて2016年4月8日に放送予定とのこと!!
<キャスト>
村上弘明:大塚京介
剛力彩芽:田村美咲
陣内孝則:須田浩平 ほか
(公式HPより、順不同、敬称略)
◆松本清張先生関連過去記事
【小説】
・「霧の旗」(松本清張著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「書道教授」(松本清張著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「球形の荒野」(松本清張著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『寒流』(松本清張著、新潮社刊『黒い画集』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『市長死す』(松本清張著、光文社刊『青春の彷徨』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『熱い空気』(松本清張著、文芸春秋社刊『事故―別冊黒い画集1』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『波の塔 上下』(松本清張著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『危険な斜面』(松本清張著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『疑惑』(松本清張著、文藝春秋社刊)ネタバレ批評(レビュー)
・『十万分の一の偶然』(松本清張著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『事故』(松本清張著、文芸春秋社刊『事故―別冊黒い画集1』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『留守宅の事件』(松本清張著、文藝春秋社刊『証明』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『黒い福音』(松本清張著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『小説 3億円事件 「米国保険会社内調査報告書」』(松本清張著、新潮社刊『水の肌』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『密宗律仙教』(松本清張著、文藝春秋社刊『証明』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『時間の習俗』(松本清張著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『強き蟻』(松本清張著、文芸春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『坂道の家』(松本清張著、新潮社刊『黒い画集』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『草』(松本清張著、新潮社刊『松本清張傑作選 暗闇に嗤うドクター』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『影の地帯』(松本清張著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『共犯者』(松本清張著、新潮社刊『共犯者』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『地方紙を買う女』(松本清張著、新潮社刊『張込み』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『黒い樹海』(松本清張著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『喪失の儀礼』(松本清張著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『一年半待て』(松本清張著、新潮社刊『張込み』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・松本清張先生原作「砂の器」が5回目のテレビドラマ化決定。テレビ朝日制作、主演は玉木宏さん!!&「砂の器」ネタバレあらすじ
【ドラマ】
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・月曜ゴールデン特別企画 松本清張生誕100年記念スペシャルドラマ『火と汐』(12月21日放送)ネタバレ批評(レビュー)
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【その他】
・『眼の壁』から出題がありました。
「ミステリーキューブ 名作ミステリーを凝縮▽華麗なトリックを見破り密室から脱出せよ!▽松本清張が仕掛けたわなに挑戦だ」(8月20日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・【特報】松本清張先生、未収録短編発見さる!!その名も『女に憑かれた男』!!
・【2015年】松本清張先生『女に憑かれた男』に続く未収録短編作品見つかる!!その名は『渓流』とのこと!!
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『被害者は復讐など望んでいない』
という台詞は説得の常套句ではありますが、生前の修二に会ったことすらない奴が母親に言うのは非常識ですよね。
他人から話を聞いた程度で故人を理解したつもりになるのは傲慢ですし、修二と共に過ごしてきた肉親や恋人が相手なら逆効果でしかないでしょう。流産の設定を追加したなら尚更です。
恋人が妊娠していたのなら修二は結婚を真剣に考えなければならない時期だったでしょうし、人生の転機と呼べる時期に自身と胎児を殺されたとしたら、どんなに温厚な人間でも復讐したいと望む可能性はあります。
仮に望んでいなかったとしても既に復讐は果たされているのですから、齢70を越えた母親が残りの人生を考えれば区切りをつけた方が救われると思うかもしれません。
世の中には家族にしか理解できない思いというものもあるものです。例え正論だったとしても、修二と面識すらない赤の他人の大塚にだけは故人の思いが云々などと語られたくはないでしょう。
従って大塚の身勝手な言動が和枝たち【加害者になってしまった被害者遺族】の心情を無視した無神経なものに聞こえてしまい、興が削がれる演出だと感じました。
上記を踏まえた上で大塚の真意を推測すると、あの説得は自己保身のためだったように思えてきます。
目の前で犯人を死なせてしまうと責任を追及されるので必死に説得しただけなのではないでしょうか。
こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!
なるほど、確かに修二と面識のない大塚が本人の名を借りて説得を行ったことは修二を良く知る和枝たちにとって許せない行為と捉えられかねない。
ただ、今回は最終的に和枝が大塚の言葉により翻意していますので、もしかすると和枝の知る修二もそのような人物だったのかもしれません。
だからこそ、和枝が大塚の言葉に応じたのかも。
とはいえ、確かにいろいろ考えられるだけに難しい問題と言えそうですね。