日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season14」第16話「右京の同級生」(2月17日放送)ネタバレ批評(レビュー)。
<ネタバレあらすじ>
その夜、家路を急いでいた右京(水谷豊)は道で蹲る男性(広瀬剛進)を発見し声を掛けた。
男性は右京に「小峰医院、小峰医院へ……」と繰り返す。
小峰医院へ男性を運び込んだ右京。
対応に現れた女医(竹下景子)は男性を見るなり、気管支喘息の発作と見抜く。
こうして女医の適切な治療により男性は回復することとなった。
女医は右京に礼をするとともに互いの紹介を始める。
まず、右京が助けた男性の名はマリオ(広瀬剛進)。
日系三世のエルドビア人だそうだ。
そして、女医の名は小峰律子(竹下景子)。
この名を聞いた右京は「もしかして……」と問いかける。
実は右京と律子は小学校の同級生であった。
とはいえ、律子は2学期が終わる3日前に転校して来て冬休みのうちに転校してしまったのだが。
思わぬ再会を果たした2人が懐かしがっていたところ、回復したマルコが「仕事へ行かねば」と言い出した。
「無理をしないように」と気遣う律子だが、マリオは「休むわけにはいかない」と退かない。
一方、右京はマリオが北品川第三ビルの入館証を持っていることに気付いた。
どうやら、マリオは北品川第三ビルで清掃員として働いているらしい。
右京と律子に見送られるマリオ。
「ああ、そうだ」とマリオは懐にしていた『はてしない物語(下巻)』を律子に手渡す。
これに律子は「そうそう次の本」として『はてしない物語(上巻)』を差し出す。
マリオは律子から本をよく借りるらしい。
同じ頃、「花の里」では冠城(反町隆史)が野坂(春田純一)と旧交を温めていた。
野坂は入国管理局の職員であったが……。
翌朝、特命係では入国管理局について話題に上がっていた。
何でも立て続けに摘発に失敗しており、内部か所轄からの情報流出が疑われているらしい。
そんな中、北品川第三ビルで変死体騒ぎが発生。
其処がマリオの勤務先であると知った右京は現場へ向かう。
被害者は高井義彦(神農直隆)、外国人労働者の派遣業を営む「国際ディスパッチ協会」の職員であった。
何者かと揉み合いになり死亡したものと思われた。
右京の動きを見ていた冠城は日下部(榎木孝明)からの秘密指令を明かす。
それこそ情報流出の原因を探ること、冠城は野坂を秘密裏に調べていたのである。
冠城によれば、野坂が所持していたマッチが「北品川第三ビル」のテナントだったことが気になっているらしいが……。
その午後、右京は冠城を連れて律子のもとを訪れる。
其処は国際色豊かな場所となっていた。
様々な国の人々が集いながらも国境はなく老若男女が和気藹々と寛いでいる。
もしかすると、楽園とはこんな場所を指すのかもしれない。
ところが、マリオが血相を変えて飛び込んで来た。
その肩には同じくエルドビア人の青年・ニコラが背負われている。
ニコラは黒木金属加工会社に勤務しているが、金属プレス機で指を切断してしまったのだそうだ。
しかし、ニコラはオーバーステイしている為に医療機関に通えなかったのだ。
オーバーステイと聞いた冠城は目の色を変えるが、見かねた律子が治療を手配し彼を庇う。
さらに、右京が刑事であると知った律子は反発するように。
仕方なくその場を去った右京たちは「国際ディスパッチ協会」の理事長・斉川のもとへ。
斉川によれば、彼らの仕事は海外の労働者を必要とされる受け入れ先に派遣することなのだそうだ。
従って、喜ばれこそすれ恨まれる覚えはないらしい。
しかし、右京が黒木金属加工について尋ねたところ斉川は何やら眉を顰める。
続いて黒木金属加工を訪れた右京たち。
黒木は何を聞かれても「高井さんに聞いてくれ」の一点張りだ。
高井が死亡したことを知らないらしい。
それどころか「上納金まで払ってるんだ。低賃金の過重労働が何だよ!!」と怒り出した。
これを聞いた冠城は「国際ディスパッチ協会が上納金を取り、低賃金で雇用出来るオーバーステイで脛に傷を持つ労働者を故意に派遣していたのでは」と疑う。
矢先、摘発逃れに成功している人々が主にエルドビア人であり「国際ディスパッチ協会」と繋がっていたことが明らかに。
右京は摘発逃れと高井の死に関連性があると見込む。
そんな中、マリオが伊丹たちに拘束された。
律子に処方された喘息の薬が高井殺害現場に落ちていたことが問題となったのだ。
右京と律子が伊丹に掛け合いマリオは解放されることとなった。
此処で、律子は「高井には殺される理由がある」と語る。
ニコラの怪我は高井に言い含められてのことだったのだ。
ニコラは高井から不当な利息の借金をしており、その返済に労災を充てるように命じられたのであった。
律子は「本当に悪いのは誰なのか突き止めて」と右京に迫る。
「国際ディスパッチ協会」の悪事が次々と明らかになりつつあった。
エルドビア側で出国手数料を取った上に、日本で斡旋料を取っていたのである。
さらに、上納金や労災金なども手に入れていたのである。
しかも、高井からコカインの反応が検出された。
冠城はエルドビアから人材派遣を装い密輸したのではと考える。
もしも、これが事実ならば摘発情報を流していた人間にも相当な利益が転がり込んだ筈だ。
このとき、冠城の脳裏を上機嫌の野坂の姿が過る。
直後、上層部に圧力がかかり「高井の死が事故である」と結論されてしまった。
納得の行かない伊丹は右京に高井の通話履歴を手渡す。
これを目にした右京は真相に至る。
その夜、北品川第三ビルのトイレで清掃業務に携わるマリオの姿があった。
其処にパーカーの男性が駈け込んで来た。
慌てた様子の男性は用を足すべく小便器へと歩み寄る……かと思いきや、何やらメモをマリオへと突き出した。
これを受け取ろうとしたマリオだが、控えていた冠城が割って入る。
メモの中には「山辺縫製工場社員寮」の他に日時が記されていた。
摘発情報である。
そして、パーカー男性の正体こそ野坂であった。
高井の通話履歴には野坂の電話番号が並んでいた。
高井と野坂には交流があったのだ。
摘発情報を流していたのは野坂で間違いない。
しかし、問題はその情報がマリオを通じて誰の手に渡っていたのかである。
数十分後、右京たちは律子のもとに居た。
野坂を誤解していたことを詫びる右京。
当初、右京は野坂が「国際ディスパッチ協会」を通じて情報と引き換えに多額の利益を得ていたと考えた。
だが、全くの逆だったのだ。
野坂は「国際ディスパッチ協会」に拘束されている労働者たちを摘発から逃がしていたのである。
しかし、高井は野坂が情報流出を行っていることに気付き脅迫した。
其処で思い余った野坂が高井を殺害してしまったのだ。
そして、野坂からマリオを通じて摘発情報を受け取っていた人物こそ律子であった。
「何時から疑ってたの?」問いかける律子。
「果てしない物語ですよ」と応じる右京。
あの夜、マリオは律子に『はてしない物語(下巻)』を返却した。
そして、律子がマリオに『はてしない物語(上巻)』を手渡した。
物語は上巻、下巻の順に読む物で、先に下巻を貸すのは明らかに不自然だ。
右京はその本の中に摘発情報を潜ませ遣り取りしていたと見抜いたのである。
律子は事の発端を語り出す。
半年前の夜、若いエルドビア人女性が律子のもとへ逃げ込んで来た。
彼女には借金があり店で客を取らされていたのだそうだ。
律子は店に送り返しても彼女を救えないと考え野坂に送還を依頼した。
ところが、彼女は「送還は嫌だ」と拒否し自殺してしまった。
自身の行動が思わぬ死を招いたことに責任を感じた律子。
そして死亡した女性が「国際ディスパッチ協会」に利用されていたことを知った。
彼女もまたニコラのように「国際ディスパッチ協会」に借金で縛られていたのだ。
此処に律子は「国際ディスパッチ協会」に利用されている人々を救おうと決意した。
以来、律子は同じ志を持った野坂から得た情報をもとに彼らを事前に逃亡させるように。
それは「国際ディスパッチ協会」からも逃がすことに繋がる筈であった。
「そう言えば、あなたはそんな人でした」呟く右京。
右京たちの小学校時代のことである。
あるクラスメートの筆箱盗難騒ぎが起こった。
容疑はクラスでもっとも立場が弱い少女に向かった。
教師ですらも少女を疑っていた。
これに颯爽と立ち向かったのが転校して来たばかりの律子であった。
「何の証拠もないのに間違っています」
律子は教師やクラスメートに毅然として言い放った。
そんな律子の言葉は正しかった。
盗難ではなく単なる思い違いだったのだ。
筆箱はすぐに見つかった。
律子の言葉を聞いた右京が調査に乗り出し真相が明らかになったのである。
そして現在、再会が悲劇的な結末を迎えた2人。
結局、律子は出頭することに。
律子が出頭したと知らされた野坂も真相を語り出した。
事の起こりは高井が野坂に接近したことであった。
野坂は前々から「国際ディスパッチ協会」の悪事に目を付けていたのだが、上層部の圧力でそれも叶わずに居た。
この機会に高井から情報を得ようとしたのだが……。
逆に、高井は情報流出をネタに野坂を脅迫し始めた。
毅然と拒否していた野坂だが、高井は遂に律子を巻き込むと言い出した。
逆上した野坂は高井を殺害してしまったのであった。
死体の処理に困った野坂はビルで働いていたマリオに助けを求め、死体を遺棄したのである。
その頃、斉川はほとぼりが冷めるまで国外逃亡を図るべく空港に居た。
そんな斉川の前に立ち塞がったのは……右京たちだ。
右京は斉川に入管法違反、職業安定法違反、コカイン密輸の罪を問う。
しかし、具体的な物証が何1つなく手が出ない。
「何時か捕まえる」と口にする右京を振り返りもせず、斉川はエルドビアへと出国してしまった。
結局、実際に罪を問われたのは野坂や律子であった。
右京は野坂の罪の原因が律子にあると指摘する。
そんな右京に律子は「正義とは人を救わなければ意味が無い」と応じる。
ふと、過去を思い出す右京と律子。
筆箱の盗難騒ぎ以降、律子はクラスで孤立し肩身の狭い想いをしていた。
さらに冬休み中に親の都合で引越すことになってしまった。
誰の見送りもなくその地を去ろうとする律子であったが、たった1人だけ静かに見送りに来た人物が居た。
それこそ右京だったのだ。
当時を振り返る律子と右京の目は何処か優しく寂しい色を湛えていた。
特命へ戻って来た右京、そんな右京に冠城が呟く。
「良かったんですかね。本当の悪党は罪を逃れたのに正義を行おうとした野坂さんや律子先生が罪を問われるだなんで」
「それだけのことをしたんです」
何やら遣り切れない様子の冠城に、それが当然と断ずる右京。
「もしかして、律子先生は初恋の人ですか?」
居た堪れなくなった冠城は一矢報いようと右京を茶化す。
普段の右京ならば特に動じない筈であったが。
「いえ……」
これまたあっさりと答えようとした右京が口ごもった。
「ただちょっと他の子とは違ったかもしれませんね」
そう語る右京は俯きがちに目を細めていた―――16話了。
<感想>
シーズン14第16話。
脚本は山本むつみさん。
サブタイトルは「右京の同級生」。
右京と律子、互いに幼い時分から強い正義感の持ち主でしたがその方向性の違いから悲しい結末を迎えることとなりました。
その方向性の違いこそ「絶対的正義」と「弱者救済の為の正義」。
右京は「絶対的正義」の持ち主、正義を行うにも法の範囲内で事を行おうとする。
彼にとっては弱者であろうとも法を犯せば罪に問われるべき対象となる。
右京は右京が信じる法と正義に反する者、全てを裁こうとする。
しかし、それには法に基づく故の限界があった。
結果、違法行為に手を染めながら法に守られた斉川の逃亡を許してしまうことに。
一方、律子は「弱者救済の為の正義」の持ち主、弱者が救えない正義では意味が無いと考える。
だから、弱者を救う為に法を逸脱してしまった。
また、彼女は自らの手を汚してでも弱者を救おうとする。
結果、その罪を問われることに。
言わば、律子は「ダークナイト」と言えなくもありません。
とはいえ、右京にしても律子にしても手の届く範囲に留まらざるを得ず、いずれの正義にしても明らかな悪である斉川を糺すには至らないのが辛いところですね。
むしろ、律子の行動は斉川の悪行を陰ながら隠蔽する結果にすらなっていますし。
劇中の描写によると摘発を逃れた人々は遠方の農地などで働いているようですが、その後にどうなるのかについても不透明なのが切ない。
結局のところ、システムや状況を変えない限りは斉川は捕らえられないし、たとえ斉川が捕らえられても第二、第三の斉川が生まれることになる。
正義を行うには確たる信念と力が必要―――そう痛感させられる結末でした。
ちなみに劇中に登場したミヒャエル・エンデ著『はてしない物語』。
映画「ネバーエンディング・ストーリー」の原作としても知られる作品ですが、内容は主人公が世界の崩壊を救う物語。
これにより律子の何かを救おうとする強い正義感を示していたのかもしれませんね。
一方、今回も冠城は何やら思うところがある様子。
日下部に対してもそうだし、右京に対してもそう。
これは今話だけなのか、それともシリーズに跨る何かに繋がるのか。
此の点も注目と言えるかもしれません。
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こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!
お役に立てているとのこと、本当に嬉しいです!!
確かに、最近はかなり内容が込み合っている作品も多いですね。
その分だけ、あらすじも長くなりがちですが、上手くまとめられるよう努力したく思います。
これからもあらすじや感想などで「これは良い!!」と思える作品の魅力を伝えていければと思っています。
コメント、励みにさせて頂きます!!