2016年02月17日

『神の値段』(一色さゆり著、宝島社刊)

『神の値段』(一色さゆり著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

2016年 第14回『このミステリーがすごい!』大賞 大賞受賞作《美術ミステリーの新機軸!》

人前に一切姿を見せない世界的な現代美術家・川田無名。
唯一、その正体を知るギャラリー経営者・唯子が何者かに殺された――。

メディアはおろか関係者の前にも一切姿を見せない現代美術家・川田無名。彼は、唯一つながりのあるギャラリー経営者の永井唯子経由で、作品を発表し続けている。ある日唯子は、無名が1959年に描いたという作品を手の内から出してくる。来歴などは完全に伏せられ、類似作が約六億円で落札されたほどの価値をもつ幻の作品だ。しかし唯子は突然、何者かに殺されてしまう。アシスタントの佐和子は、唯子を殺した犯人、無名の居場所、そして今になって作品が運びだされた理由を探るべく、動き出す。幻の作品に記された番号から無名の意図に気づき、やがて無名が徹底して姿を現さない理由を知る――。
(宝島社公式HPより)


<感想>

第14回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。
なお、同回は他に城山真一先生『ブラック・ヴィーナス 投資の女神(受賞時タイトル『ザ・ブラック・ヴィーナス』改題)』が大賞を、大津光央先生『たまらなくグッドバイ』(応募時筆名は大津ミツオ名義)が優秀賞を受賞している。

『ブラック・ヴィーナス 投資の女神』(城山真一著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

第14回「このミステリーがすごい!」大賞が決定!!栄冠は『神の値段』&『ザ・ブラック・ヴィーナス』の2作に輝く!!

さて、本作について。

タイトル『神の値段』の意味とは「無名の作品の落札価額」であると同時に「無名と唯子が追い求めた値段のつけられないほどの価値」のことでしょう。

値段とは品物やサービスへの対価としてつけられるもの。
では、「神」となることに値段はつけられるでしょうか。
答えは「否」です。
何故なら、どれだけの金額で「神」となれるかが不透明だから。

ところが、無名は計画を果たしたことにより「前人未到の存在=芸術界の神」となった。
本来ならば「神」となることに値段のつけよう筈もありませんが、そのプロセスに必要な金額が実際に「落札価額」として具体的に示されたことで「落札価額」こそが「神となる為の必要額」=「神の値段」となることに。
つまり、値段のつけられない物に値段をつけてみせた。
そんな離れ業を成し遂げた無名の芸術家としての力量や、そんな無名の生き様こそが芸術作品と呼べるのかもしれません。

まさに、人の域を脱した無名。
唯一の理解者であり、彼と現世を繋ぐただ1人の存在であった唯子が失われた彼は何処に行くのでしょうか。

ちなみにネタバレあらすじはまとめ易いように改変しています。
また、かな〜〜〜りバッサリ省略したり改変していて、あくまで雰囲気を伝えるに留まってます。
正確なところは本作をお読み頂きたく思います。

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
佐和子:主人公
永井唯子:ただ1人無名の正体を知る画商
川田無名:謎の芸術家
佐伯:唯子の夫
ラディ:黒い噂の絶えない画商


世界的に名を知られる芸術家・川田無名。
しかし、その正体を知る者は無名を除けばただ1人、彼と懇意にしている画商の永井唯子のみであった。
唯子の夫・佐伯はもちろん、唯子のアシスタント・佐和子もその正体は知らされてはいない。

そんな中、唯子が無名が1959年に描いた伝説の作品を持ち出して来た。
どうやら、唯子はそれをオークションに出品するつもりらしい。

矢先、唯子が何者かに殺害されてしまう。
現場に残されたサインから、無名がオークションの出品に反対し唯子を殺害したものと思われた。

唯子が死亡したことで無名の作品は佐伯が管理することに。
亡き唯子の遺志を継ぐと宣言した佐伯はこれをオークションに出品する。

オークション当日、会場には黒い噂の絶えない画商・ラディらが集っていた。
そのお目当ては無名の作品である。

いよいよ無名の作品が出品されオークションが開始。
それぞれが値を釣り上げて行く中、ラディが圧倒的な資金力を背景に周囲を押し切ることに。
こうして、ラディの手に落ちると思われたのだが……。

突如、謎の人物がオークションに介入。
結局、ラディを破り過去最高額にて落札する。
これにより、存在が確認出来ていないにも関わらず無名の名はさらに高まることに。
もはや、歴史に名を残す世界最高の芸術家とまで称された。

そんなある日、佐和子のもとに1枚のDVDが届く。
その中身を目にした佐和子は唯子殺害犯の正体に気付く。

佐和子が手にしたDVDの中身はラディと唯子殺害犯の不正を記録した物。
唯子殺害犯の正体は……佐伯であった。

佐伯はラディと組んで不正を行っていた。
これを知った唯子はラディと佐伯を告発しようとしていたのだ。
ところが、唯子の動きを察した佐伯が無名の犯行に偽装し殺害したのであった。
無名のものとされたサインも本人を誰も知らないことを利用した偽のサインだったのだ。

佐和子はこの事実を佐伯に突き付ける。
佐伯は罪を償うこととなった。

そして佐和子は此処でようやく無名と唯子の真意を知ることとなった。
実は無名の作品を競り落としたのは無名自身であった。
自身で出品し自身で落札する。
出品料が手に入る上に、落札時の費用さえ用意出来ればその費用分もそっくり自身に戻って来ることになる。
それもこれも最初から考えていたことらしい。

もちろん、唯子と無名の狙いは金銭ではなくそれにより得られる莫大な価値にあった。
唯子は無名を世界最高の芸術家にする為に。
無名は自身の名を高めると共に芸術の素晴らしさをアピールする為に。
それぞれが目的に邁進した結果だったのだ。

そして、無名が人前に姿を現さないのは芸術に集中する為であった。
佐和子にDVDを送ったのも無名である。
佐和子は同じ空の下に居るであろう無名に想いを馳せることに―――エンド。

◆「このミステリーがすごい!」関連過去記事
【第14回】
『ブラック・ヴィーナス 投資の女神』(城山真一著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【第13回】
『女王はかえらない』(降田天著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『いなくなった私へ』(辻堂ゆめ著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【第12回】
『一千兆円の身代金』(八木圭一著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【第11回】
『生存者ゼロ』(安生正著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【第10回】
『弁護士探偵物語 天使の分け前』(法坂一広著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『僕はお父さんを訴えます』(友井羊著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『Sのための覚え書き かごめ荘連続殺人事件』(矢樹純著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『保健室の先生は迷探偵!?』(篠原昌裕著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を』(岡崎琢磨著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『公開処刑人 森のくまさん』(堀内公太郎著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【第9回】
「完全なる首長竜の日」(乾緑郎著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

「ラブ・ケミストリー」(喜多喜久著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

「ある少女にまつわる殺人の告白」(佐藤青南著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【第8回】
「さよならドビュッシー」(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『死亡フラグが立ちました!』(七尾与史著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【第7回】
「臨床真理」(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【第3回】
『果てしなき渇き』(深町秋生著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【その他】
第14回「このミステリーがすごい!」大賞が決定!!栄冠は『神の値段』&『ザ・ブラック・ヴィーナス』の2作に輝く!!

第13回「このミステリーがすごい!」大賞が決定!!栄冠は『女王はかえらない』に輝く!!

第12回「このミステリーがすごい!」大賞が決定!!栄冠は『警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官(仮)』と『一千兆円の身代金(仮)』の2作に!!

第11回「このミステリーがすごい!」大賞が決定!!栄冠は『生存者ゼロ(仮)』に!!

第10回「このミステリーがすごい!」大賞が決定!!栄冠は「懲戒弁護士」に

第9回「このミステリーがすごい!」大賞が決定!!栄冠は「完全なる首長竜の日」に

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「【2016年・第14回『このミステリーがすごい!大賞』大賞受賞作】 神の値段」です!!
【2016年・第14回『このミステリーがすごい!大賞』大賞受賞作】 神の値段



「ブラック・ヴィーナス 投資の女神」です!!
ブラック・ヴィーナス 投資の女神



◆「このミステリーがすごい!」関連書籍はこちら。


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