ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
「アンフェア」著者による、待望の書き下ろし新シリーズ!
婚約破棄され、リストラされて飛び込んだのは民間科学捜査研究所! 入所早々、顔に碁盤目の傷を残す連続殺人が。新シリーズ始動。
(文藝春秋社公式HPより)
<感想>
『民間科学捜査員・桐野真衣』シリーズ第1弾。
2016年3月時点で、シリーズには他に『冤罪初心者 民間科学捜査員・桐野真衣』があります。
また、『犯罪初心者』は瓦屋根先生によりコミカライズもされています。
本作はキャラ設定と急展開で魅せる印象の作品。
かなりスピーディかつ謎に満ちた展開が待っている。
ただ、本作は「1つ1つ事実を積み重ねて複数の事実から推理を経て新たな事実が導き出される」のではなく「次々と新事実が後から後から明かされていくこと」で物語が進む。
此の点で恣意的と言え、これは結末も同じである。
その為にロジック重視、伏線重視の方は抵抗を感じるかもしれない。
結論として人を選ぶ作品であり、相次ぐ急展開に没頭することが出来れば楽しむことが出来るだろう。
また、どちらかと言えばドラマのシナリオのテイストを色濃く感じる作品と言える気がする。
ちなみにネタバレあらすじはまとめ易いようにかなり改変しています。
興味のある方は本作それ自体を読むべし。
<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧:
桐野真衣:主人公、民間の科学捜査員
ゆかり:警視庁の科学捜査官
飯塚:企業経営者
狭山:飯塚の部下
由海:狭山の妻、義手の女性
嘉川:宅配便の配達員
巷を騒がす連続殺人事件が発生していた。
被害者の若い女性たちが悉く顔を碁盤の目状に切り裂かれていたことから、犯人は何時しか「囲碁部」と呼ばれるように。
この捜査に警視庁の科学捜査官・ゆかりが乗り出す。
一方、桐野真衣は婚約者に捨てられ、勤務先もクビになってしまった。
其処で民間科学研究所の門を叩き、再就職を果たすことに。
その最初の仕事は、狭山の死についての鑑定であった。
狭山は飯塚が経営する会社の社員。
義手の妻・由海と暮らしていたが、謎の縊死を遂げていた。
飯塚によれば狭山には産業スパイの疑いがあったらしい。
この状況から自殺と思われたが……。
疑問を抱いた真衣が調べた結果、死体の状態とロープの締まり具合から死後にロープが巻かれたことが判明。
つまり、狭山の死は自殺に偽装した他殺だったのだ。
だが、真衣が幾ら訴えようとも自殺の結論が覆らない。
真衣は自身の手で調査を開始、狭山に多額の保険金がかけられていたことから妻の由海を疑うのだが。
矢先、飯塚が碁盤目状に顔を切り裂かれて殺害される。
まさか「囲碁部の仕業」なのだろうか?
これを調べた真衣は現場に残されていたダニの種類から由海が現場に居たことを突き止める。
同じ頃、「囲碁部の捜査」はゆかりにより大躍進を遂げていた。
犯人の行動を分析し配達員であることを突き止めたのだ。
其処から浮かび上がったのは嘉川なる男性、踏み込んだところ次の被害者を監禁していた。
やはり、嘉川が「囲碁部」だったのだ。
手を下そうとしていたこともあり、その場で嘉川は射殺された。
こうして「囲碁部」事件は幕を閉じたのだが……。
真衣はゆかりを呼び出して調べた事実をぶつける。
実はゆかりと由海は高校時代に同じ科学部に在籍していた親友同士であった。
しかも、ゆかりのミスで爆発事件を起こしていたのだ。
由海が義手になったのはゆかりが原因であった。
これに罪の意識を抱いたゆかりは由海を守ろうと決めていた。
其処で今回の事件である。
狭山を殺害したのは飯塚であった。
佐山は産業スパイではなく、飯塚の不正を告発しようとして口封じされたのだ。
飯塚は狭山が不正の証拠を握っており、これを由海に預けたと思い込んでいた。
其処であの日、由海を呼び出し殺害しようとした。
由海を見守っていたゆかりはこれに気付き、飯塚を殺害したのであった。
もちろん、囲碁部の犯行に偽装したのもゆかりであった。
しかし、ゆかりの犯行である証拠は何もない。
真衣はゆかりに彼女自身の処遇を委ねるのであった―――エンド。
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