ネタバレあります、注意!!
登場人物一覧:
ゴン:トラ型の獣人、高校生。モグとは幼馴染。
モグ:ビーバー型の獣人、高校生。ゴンとは幼馴染。
校長:猿型の獣人、温厚で思慮深い性格のようだ。
<あらすじ>
此処は人に代わり獣人が闊歩する世界。
ゴンはトラ型獣人の高校生、学園内の敷地に置かれた肉食系獣人のみが暮らす「肉食寮」に住んでいる。
校内には他に「草食寮」があり、互いの行き来には制限がかけられていた。
肉食系獣人が草食系獣人を食い殺すことを避ける為だ。
だが、これがゴンには不満で堪らなかった。
ゴンには草食寮に幼馴染のビーバー型獣人・モグが居るからだ。
ゴンにとってモグは大切な親友である。
何をするにも幼い頃から一緒で、食べるなどといった発想は全く浮かばない。
にも関わらず、ゴンはモグと会うことに制限がかけられてしまうことを許せなかったのだ。
ゴンは隙を見つけてはモグのもとへ通っていた。
モグもこれを受け入れていたが……何時しか噂になるように。
その噂は校長の耳にまで届いていたが、彼は「むしろ好ましいこと」として放任していた。
ある夜のこと、屋上で今日もモグと共に過ごしていたゴン。
ところが、階下からの悲鳴を聞いてしまう。
そっと覗き込むと、其処では肉食系獣人複数による草食系獣人へのイジメが行われていた。
どうやら、食べられたくなければ金を出せと脅しているようだ。
「あいつらの所為で自分たちの交流が制限されるんだ」
義憤に駆られたゴンは不安がるモグの制止も振り切り、カメラを手に証拠写真を撮ろうと動き出す。
直接、矢面に立たずに事態を解決する妙案だと思われたのだが……。
咄嗟にフラッシュをたいたことで相手に気付かれてしまった。
こうして、ゴンとモグは肉食系獣人たちから追われるように。
イチかバチか校長のもとへ逃げ込むことに決めるゴン。
校長室までならば距離もそれほどではない。
だが、ゴンは計算違いをしていた。
相手は肉食系獣人であり足が速い。
さらには空を飛ぶコンドルまでも居るようで到底、逃げ切りは至難の業だったのだ。
必死に逃げるゴンとモグは手近にあった自転車を調達する。
ゴンを乗せ自転車を漕ぐモグ。
だが、スピードに乗らず追い付かれてしまう。
背中越しに必至に防戦するゴン。
しかし、相手の一撃を喰らい左目を負傷してしまう。
ゴンの怪我を心配するモグ、そんなモグにゴンは叫ぶ。
「全力で飛ばせ、さもないと喰っちまうぞ!!」
血塗れのゴンに恫喝されたモグは息も絶え絶えに全力でペダルを漕いだ。
結果、間一髪で校長室に辿り着くことに成功する。
遅れてやって来た肉食系獣人たちだが、校長の前では手も足も出ない。
証拠写真とゴンの怪我もあって彼らは罰せられることとなった。
だが、その罰はゴンが考えていたものからは余りにもかけ離れていた。
「報復」の2文字を思い浮かべるゴン。
校長はゴンとモグを守れるように手配すると約束したが、どこまで効果があるかは不明確であった。
ゴンはモグを守ると約束するのだが……。
当のモグは「これからは寮のルールに従おう」と言い出した。
モグによれば「逃走中に一瞬だけ見せたゴンの姿にこれまで見たことが無かった彼の本性を見出した」らしい。
モグの言葉にショックを受けるゴン。
そんなゴンにモグは「けれど、それが自然なのだ」と言う。
そして「それこそがあるべき姿だ」とも。
これからはずっと一緒には居られない。
ゴンとモグは互いに肩を寄せ合い友情を確かめ合うのであった―――エンド。
<感想>
短期集中連載「ビーストコンプレックス」の第2話「トラとビーバー」です。
「大人のおとぎ話」とでも呼ぶべき上質の作品と感じました。
ライオンやコウモリなどのイメージに仮託しつつ、人と人との心の交流を見事に漫画化しています。
また、獣人はどちらかと言えば「内面が動物に表現されている」と考えた方が良いかもしれません。
今回のゴンは肉食系の甘えん坊、モグは草食系のしっかり者として描かれています。
共に幼馴染として暮らして来た2人。
2人にとってそれこそが普通でした。
だが、2人の間には肉食系と草食系の大きな壁があった。
この壁は「住む世界が違う」ことを示す。
その壁に抗うことは世界に抗うことに他ならない。
モグがゴンと距離を置こうとしたのは、ゴンが肉食寮で居場所を失うことを怖れたのでしょう。
これ以上、ゴンがモグを庇えばそれは肉食寮では不自然なことになる。
相手を思いやればこその行動。
また、モグと異なりゴンはいつしかモグに依存していました。
友情とは依存ではなく、互いに自立し対等の立場で築くもの。
だからこそ、モグはゴンと距離を置くことを主張したのでしょう。
同時に、今回の物語は幼馴染同士の進路問題とも受け取れる。
どんな仲良しでも進路が異なれば道は分かたれて行く。
だからと言って進路を変えるのは不自然なこと。
何故なら、それは自身を殺すことに繋がるから。
たとえ、道は分かたれようともそれこそが自然なのでしょう。
今回もかなり良かったです。
ちなみにあらすじはまとめ易いようにかなり改変しています。
興味をお持ちの方は本作それ自体を読むべし!!
◆関連過去記事
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