2016年03月30日

「ビーストコンプレックス」最終話(第4話)「カンガルーとクロヒョウ」(板垣巴留作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「ビーストコンプレックス」最終話(第4話)「カンガルーとクロヒョウ」(板垣巴留作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

登場人物一覧:
管理者:カンガルー型の獣人、ホテルの管理人。
メグ:クロヒョウ型の獣人、幼い少女。

<あらすじ>

此処は人に代わり獣人が闊歩する世界。

ホテルの管理人であるカンガルー型獣人は溜息を吐いていた。
彼のホテルから客足が減りつつあったからだ。

それもその筈、ホテルのあるこの街は治安の悪いスラム街。
今日も肉食獣人による草食獣人への通り魔殺人の話題で持ち切りであった。
さらには若年層の肉食獣人グループ「ブラッカス」の暴走も草食獣人たちを怯えさせていた。
もちろん、カンガルー型獣人である彼も例外ではない。
街を引き払い、別の場所へ移住すれば良いとの声もある。
だが、彼がこの街を出ないのには理由があった。

そんなある日、クロヒョウ型獣人の少女・メグが客としてやって来た。
幼さの残るメグを不安がる彼だが、結局は押し切られるように泊めることとなった。
何やら大事そうにスーツケースを抱えるメグだが……。

事情を抱えた様子のメグ。
彼はメグが気にかかってしょうがない。

仕事をしていても視線は自然とメグに惹き付けられていた。
メグは綺麗なモノに素直な感動を示すのだ。
彼からメグは無邪気な少女にしか見えなかった。

数日が経過し、彼はメグと会話する機会を得た。
「何故、君みたいな娘がこの街から出ないのか?」
「だって居心地が良いから」
彼の言葉にあっさりと答えるメグ。
それは奇しくも彼の想いと同一であった。

そんな2人の傍ではテレビが肉食型獣人グループ「ブラッカス」について報道していた。
「ブラッカス」は草食型獣人を殺害し、その肉を不法に取引していた。
これまでも危険視されていたのだが、遂に取締りの対象となったのだそうだ。
ところが、アジトからは肝心の草食型獣人の肉が発見されていないそうである。
報道によれば、その肉はスーツケースに収められていたのだそうだが……。

此処で彼はメグのスーツケースに思い至る。
もしかして……。

その疑惑は日に日に深まるばかりであった。
彼の疑惑はすなわちメグもまた草食型獣人の敵であることを示している。
ある夜、遂に耐え切れなくなった彼はメグを問い詰めた。

これにメグは顔色を変えて逃げ出す。
逃げた先はホテルの自室である。
しかし、此処はもともと彼のホテルだ。
彼が所持するマスターキー1つで開けることが出来る。

「なんでこんなところに逃げ込んだ!!」

果たしてメグを捕まえたいのか、それとも逃がしたいのか自身でも分からない彼。
だが、銃を手にメグの部屋に踏み込んだ。

暗闇の中で光るメグの目は怯えていた。

「草食でも肉食を殺すことは出来る」
彼はメグへと銃を突き付ける。

メグを見詰める彼、そんな彼を見上げるメグ。
ところが、不意にメグの視線が逸れた。
その先には夜空に浮かぶ綺麗な花火があった。

(こんなときにもソレかよ……)
すっかりその気を削がれた彼は銃を下ろす。

「早く行け!!」

逃がす彼にペコリと頭を下げるメグ。
その背中を見送りつつ、彼はいつまでも今のメグらしくあってくれと願わずには居られないのであった―――エンド。

<感想>

短期集中連載「ビーストコンプレックス」の最終話(第4話)「カンガルーとクロヒョウ」です。

「大人のおとぎ話」とでも呼ぶべき上質の作品と感じました。
ライオンやコウモリなどのイメージに仮託しつつ、人と人との心の交流を見事に漫画化しています。
また、獣人はどちらかと言えば「内面が動物に表現されている」と考えた方が良いかもしれません。

今回は本作全体に続く「肉食獣人と草食獣人の関係性」との大テーマから「狩る側と狩られる側の邂逅」をテーマに物語が展開されました。
とはいえ、彼とメグは草食型獣人と肉食型獣人の壁がありながらも、ほぼ同じ感受性を持つ同志でした。
だからこそ、彼は後に脅威になるかもしれないと知りつつメグを見逃すことに。

この遣り取りはまるで1つの映画のようでさえありました。
今回もかなり良かったです。

ちなみにあらすじはまとめ易いようにかなり改変しています。
興味をお持ちの方は本作それ自体を読むべし!!

◆関連過去記事
「ビーストコンプレックス」第1話「ライオンとコウモリ」(板垣巴留作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

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