ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
各誌ベストテンを総ナメにした日本推理作家協会賞受賞作!
署内で一括保管される三十冊の警察手帳が紛失した。犯人は内部か、外部か。男たちの矜持がぶつかりあう表題作(第53回日本推理作家協会賞受賞作)ほか、女子高生殺しの前科を持つ男が、匿名の殺人依頼電話に苦悩する・逆転の夏・。公判中の居眠りで失脚する裁判官を描いた「密室の人」など珠玉の四篇を収録。解説・香山二三郎
(文藝春秋社公式HPより)
<感想>
横山秀夫先生による短編集『動機』に収録された一編、表題作でもある。
他に『逆転の夏』『ネタ元』『密室の人』が収録されている。
また、キンドル版だと「D県警シリーズ」とされていますが、実は本作は「D県警シリーズ」ではありません。
実は「J県警」が舞台になっていたりします。
表題作『動機』は警務課に所属する貝瀬が視点人物。
そして、貝瀬が直面したのは「何故、一括管理した手帳が消えたのか?」との謎。
つまり「ホワイダニット」作品であり、その結末はなかなかにサプライズです。
特に共に苦難を乗り越えて来たのであろう大和田と神谷の絆が窺えるラストは印象的と言えるでしょう。
なお、ネタバレあらすじはかなり改変しています。
興味のある方は本作それ自体を読むべし!!
<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧:
貝瀬:J県警警務課所属
大和田:保管責任者
神谷:大和田の部下
J県警警務課に勤務する貝瀬は警察手帳の一括保管を提案し、多くの反対を押し切りながら導入した。
早速、各署で一括管理されることとなったのだが……。
矢先、大和田が管理責任者を務めるU署で全員分30冊もが紛失してしまった。
当初、反対派による嫌がらせを疑う貝瀬であったが、やがて疑惑の目を大和田へと向けるように。
貝瀬は大和田が自身の手帳を紛失し、これを誤魔化す為に他の29冊全てを隠したと考えたのだ。
其処で貝瀬は秘密裏に大和田と面会し「取り敢えず手帳を返却して欲しい。不足があった場合も犯人が破棄したものと解釈する」と大和田へ告げる。
つまり、大和田の手帳が無くとも紛失ではなく窃盗被害として処理するとの申し出である。
翌日、消えた手帳が発見された。
ところが、確認出来たのは29冊ではなく28冊。
1冊ではなく2冊消えていたのだ。
消えていたのは大和田とその部下・神谷の手帳であった。
此処に貝瀬は真相に思い至る。
手帳を紛失したのは大和田ではなく神谷だったのだ。
大和田は未だ若い神谷の前途を慮り、他の29冊全てを盗んだのである。
だが、貝瀬の申し出を受けて大和田の物も外した28冊を返却したのであった―――エンド。
◆関連過去記事
【横山秀夫先生著作記事】
・『陰の季節』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『黒い線』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『64』(横山秀夫著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)
【ドラマ関連】
・土曜ドラマ「64(ロクヨン)」第1話「窓」(4月18日、4月24日)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ドラマ「64(ロクヨン)」第2話「声」(4月25日、5月1日)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ドラマ「64(ロクヨン)」第3話「首」(5月2日、5月8日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ドラマ「64(ロクヨン)」第4話「顔」(5月9日、5月15日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・水曜ミステリー9「横山秀夫特別企画 永遠の時効 謎の数列29、41、51は無意識の自白調書!2つの完全犯罪とオンナの嘘を暴く逆転の取り調べ!」(6月25日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・日曜洋画劇場「特別企画 臨場 劇場版 話題作!!テレビ初放送 大ヒットドラマ遂に映画化!!型破り検視官倉石が挑む最大の事件」(6月9日放送)ネタバレ批評(レビュー)
【その他】
・横山秀夫先生、前橋でのトークショーにて小説観を語る!!
・横山秀夫先生7年ぶりの新作『64』、文藝春秋社より2012年10月27日発売決定!!
・【速報】横山秀夫先生『臨場』が映画化決定!!キャストはドラマ版と同じ!!
・「横山秀夫サスペンス」DVD-BOX、2010年10月27日発売!!
・横山秀夫先生『64』(文藝春秋社刊)が続々実写化!!まずは2015年4月に連続ドラマ化、次いで2016年に映画化とのこと!!
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