2016年05月15日

「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」第107話「いつかの文学全集」(加藤元浩作、講談社刊「月刊少年マガジン 2016年6月号」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」第107話「いつかの文学全集」(加藤元浩作、講談社刊「月刊少年マガジン 2016年6月号」連載)ネタバレ批評(レビュー)です!!

ネタバレあります、注意!!

登場人物一覧:
森羅:主人公。C.M.B.の指輪の主。多大な影響力を持つ。
七瀬立樹:森羅のパートナー。身体を動かすことが得意。

米倉律子:夫を亡くしハワイへと旅立った女性。
石羽:律子が目撃した男性。

<107話あらすじ>

米倉律子は壮年の女性、長く連れ添って来た夫を亡くし1人となったことからハワイ旅行へ出かけることに。

機上の人となった律子は偶然にも森羅と立樹たちと乗り合わせる。
森羅たちもハワイ旅行へ赴く途中だったのだ。

和気藹々と旅行の空気を楽しむ律子。
だが、宿泊先のホテルへ辿り着くや段ボール箱に入った荷物に取り組むことに。
実は律子の狙いは旅行ではなく、夫の世話への忙しさから未だ手を付けられなかった文学全集を読み耽ることにあった。

早速、文学全集を手に取る律子であったが、ふと目にした眼下の光景に息を飲むことに。
なんと、階下に望めるペンションの一室で男性が女性を殺害している光景を目撃してしまったのだ。
驚いた律子はすぐさま通報する。

ところが、すぐに駆け付けた現地警察は中を少し確認するや立ち去ってしまう。
特に男が逮捕された様子もない。
一体、どうしたことだろうか!?

不安を抱いた律子は事態を確認すべく警察へ。
すると、通報が悪戯として処理されたことが分かった。
律子が目撃した男性の名は石羽、彼は「妻と喧嘩別れしたが殺害はしていない」と否定したらしい。
念の為、ペンション内も確認したが女性の遺体は見つからなかったと言う。

どうしても目にした光景が忘れられない律子は再会した森羅たちにこの話を伝える。
すると、興味を持った森羅たちも協力を約束することに。

こうして、森羅、立樹、律子の3人は密かに石羽を尾行し始めた。
だが、石羽は一向に尻尾を掴ませない。
果たして、彼の妻の遺体は何処に隠されてしまったのか!?

業を煮やした律子は揺さぶりをかけるべく石羽に接触。
だが、石羽は律子が目撃者であることに気付き、命を狙おうとする。
其処へ駆け付けた立樹により、石羽は宙を舞うことに。
律子殺害未遂の現行犯となったことで石羽は逮捕された。

森羅は律子が目にした光景が事実だと断定。
何故なら、石羽は妻と喧嘩別れしたと言いながらも捜索願を出そうともしていなかった。
また、調べたところ石羽は食料を1人分しか購入していない。
これは妻が戻って来ないことを知っていたからであった。

では、石羽の妻は何処に消えたのか?
そして、律子が通報したにも関わらず、その姿がペンション内で目撃されなかったのは何故か?

まず、石羽は妻をレンタカーで運び何処かに埋めたのだろう。
問題となるのは最初の段階で遺体がペンションから見つからなかったことだが、石羽は咄嗟に逆光の中に妻の姿を隠したのだ。
通報を受けて駆け付けた担当者は眩しさのあまり見落としてしまったのである。

「あいつがあんたとなんて一緒にならければ良かったと言いやがったんだ!!」
殺害動機を叫ぶ石羽。
これを聞いていた律子は夫の死に涙を流せなかったことを思い出す。

その翌日、未だ手つかずの文学全集を残し律子は観光を始めた。
その耳朶に亡き夫との遣り取りが甦る。

当時、律子は夫に「文学全集が読めないのはあなたの世話で忙しいから」と言っていた。
だが、それは違っていた。
律子にとって夫は文学全集よりも優先しなければならないほど大切な存在だったのだ。

そんな夫は既に此の世にない。
そう実感したとき、律子は素直に泣くことが出来たのであった―――エンド。

<感想>

「月刊少年マガジン」2016年6月号掲載「107話 いつかの文学全集」です。

サブタイ「いつかの文学全集」の意味は「いつか読もうと思っている文学全集」のことですね。
つまり、何に優先しても読まねばならないものではない。
律子が旅行先で文学全集を読もうと行動したのも、夫の匂いが残る自宅で時間を費やすことの寂しさを無意識に感じ取っていたからでしょう。
そんな律子の心理は奇しくも石羽夫妻の行動によって意識されることとなった。

律子が泣けなかったのはそれだけ夫の存在が大きかった証。
それを意識して泣けるようになったのは、その死を漸く受け止められつつあると言えるのではないでしょうか。

森羅の活躍は石羽の罪を問い、律子の心に平穏を与える契機となった。
今回も良かったです。

ちなみに、あらすじでは良さを伝え切れてません。
本作自体を読むべし!!

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