ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
タルタルステーキを、「本日のメニュー」に載せてほしいという客が現れた……
(東京創元社公式HPより)
<感想>
「ビストロ・パ・マル」シリーズの短編です。
本シリーズは「商店街の小さなフレンチ・レストランであるビストロ・パ・マルを舞台に三舟シェフが来店客の不可解な行動から彼らの抱える問題や謎を解き明かす作品」。
三舟シェフは「ビストロ・パ・マル」から動かないので「安楽椅子探偵もの」と言えるでしょう。
シリーズは全て短編から成り立っており、既刊には『タルト・タタンの夢』と『ヴァン・ショーをあなたに』の2作が存在。
また、本シリーズの未収録短編も2016年時点で本作『タルタルステーキの罠』を含めて数作があるのでそろそろシリーズ第三弾にも期待出来そうかな。
ちなみに「ビストロ・パ・マル」シリーズには原尾有美子先生作画によるコミカライズ版も存在しています。
さて『タルタルステーキの罠』。
美味しそうなタイトルとは裏腹に「ビストロ・パ・マル」に意外な陰謀が張り巡らされることに。
メニューに無い「タルタルステーキ」をわざわざ載せて欲しいと申し出た客の狙いとは!?
其処にはある想いが秘められていました。
そして、今回も三舟シェフの推理が冴え渡ります。
あらすじはまとめやすくかなり改変しています。
あくまで本作のエッセンスを伝える雰囲気程度とお考えください。
興味をお持ちの方は『ミステリーズ!』を読むべし!!
<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧:
三舟シェフ:ビストロ・パ・マルのシェフ、類稀な推理力を持つ。
福岡:今回の依頼人。
亜子:福岡の親友、緒方とは嫁姑の関係。妊娠中。
緒方:亜子の姑。
今日も「ビストロ・パ・マル」へ来客が。
福岡と名乗った女性客によれば、彼女の親友である亜子とその姑・緒方の為にシェフに腕を奮って欲しいらしい。
何でも、緒方は着付け教室の教師で礼儀に厳しい人物、また「タルタルステーキ」が大好物なのだそうだ。
シェフにとって「タルタルステーキ」はメニューにこそ載せていないが作れないことはない料理。
厳格な緒方もメニューに無い料理を振る舞われたと知れば喜ぶだろうと考えたのだが……。
奇妙なことに福岡はタルタルステーキをわざわざメニューに載せてくれないかと依頼して来た。
その意図を訝しむシェフであったが亜子が妊娠中であると知るや、ある推理に辿り着く。
亜子は「トキソプラズマ」を患っていたのだ。
当然、胎児にも大きな影響が出るに違いない。
厳格な緒方は嫁の失態だと亜子を責めて遂には追い出してしまうかもしれない。
其処で亜子の親友の福岡は緒方が「タルタルステーキ」に目が無いことを利用した。
「トキソプラズマ」の感染源の1つとして有名な物が「タルタルステーキ」なのだ。
緒方の為に用意した席で亜子が「タルタルステーキ」を食べて患ったとすれば、緒方も強く出られないだろうとの予測であった。
シェフの推理を聞いた福岡はこれをあっさりと認めた。
どちらにしろ緒方は亜子を義理の娘とし、孫を迎えるのだ。
ならば、少しでも2人が仲良く出来る道を模索した方が互いの為だろう。
それが彼女の考えだった。
図らずも「タルタルステーキ」を提供することで悪役を演ずることとなったシェフであったが、福岡の考えに同意することに―――エンド。
◆関連過去記事
・『タルト・タタンの夢』(近藤史恵著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『天使はモップを持って』(近藤史恵著、実業之日本社、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「探偵Xからの挑戦状!」より「メゾン・カサブランカ(解決編)」ネタバレ批評(レビュー)
・近藤史恵先生の〈ビストロ・パ・マル〉シリーズがコミック化!!
・「キキコトバ」第一回についての記事はこちら。
近藤史恵さん「タルト・タタンの夢」朗読劇開催!!
・「キキコトバ」第ニ回についての記事はこちら。
近藤史恵さん「タルト・タタンの夢」豪華声優陣による夢の朗読劇がふたたび!!
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