ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
【現代社会に隠されたからくりをユーモアと鋭い風刺で描いた28編】冴えない女の運命を変えた、1通のダイレクト・メール――。
地方から都会に出てきて、ひとりで暮している若い女のもとに届いたダイレクト・メールの内容は? だれもが見すごしてしまいそうな、目立たない家に住んでいる夫婦者の正体は? 熱帯の小さな国の独裁者に捕えられた男の運命は? めまぐるしく移り変る現代社会の裏の裏のからくりを、寓話の世界に仮託して、鋭い風刺と溢れるユーモアで描くショートショート28編。
(新潮社公式HPより)
<感想>
星新一熱が再燃している管理人です。
やっぱり、星先生の作品はいいですね。
短い中に濃いエッセンスがグッと凝縮されていて、読むとハッとさせられます。
本作『高度な文明』は新潮社刊『かぼちゃの馬車』収録の一篇。
短編です。
専門化した故の弊害なのか。
これこそが文明が成熟した証なのか。
いずれにしろ、それはそうだなぁ……と納得の結末。
文明が高度になればなるほど、出来ることは増えて行く。
だが、逆に個人として出来ること自体は減って行くのかもしれない。
例えば、炊飯器。
炊飯器の利用者の中で、構造を理解している者がどれほど居るのか。
また、お釜でご飯を炊ける者がどれだけ居るのか。
炊飯器が普及する前はそれが当然だったのに。
例えば、ガス。
ガスの利用者の中で、理論を理解している者がどれほど居るのか。
また、自身で火を起こすことが出来る者がどれだけ居るのか。
ガスが普及する前にはそれが当然だったのに。
文明が高度化するということは、それだけ機械に依存する割合も大きくなるのでしょう。
<ネタバレあらすじ>
地球に宇宙人が到来した。
当初は身構えた地球人だが、相手が友好的であると分かり一安心。
しかも、宇宙人は高度な文明の持ち主で、亜空間航法の技術や万能翻訳機などを所持していた。
さらに、ありがたいことに友好の証にこれらの技術を教えてくれるらしい。
人々は宇宙人を歓待した。
ところが、さぁ、実際に教えて貰うぞとなったある日、宇宙人の宇宙船が故障を起こした。
宇宙人は万能翻訳機1つを持ち出すと這う這うの体で逃げ出した。
直後、宇宙船は爆発し四散してしまった。
とはいえ、宇宙人自身は生きている。
彼から技術を学ぶことは出来ると、人々は喜んだ。
結果的には学んだ技術で彼の新たな宇宙船を用意することも出来る。
互いに損は無い筈であった。
だが、宇宙人は何処か歯切れが悪い。
万能翻訳機から聞こえてくる声は片言ばかりだ。
やがて、その理由が明らかになった。
技術を教える為には宇宙船が必要だったのだ。
亜空間航法や万能翻訳機の技術はデータとして宇宙船に収納されていたが、彼自身は知らなかったのだ。
人々は困ってしまった。
だが、ある者が言う。
高度な文明ってそんなものじゃないか。
実際に使いながらもテレビや炊飯器の理論を理解している人間がどれだけいるのか、と―――エンド。
◆星新一先生関連過去記事
【ネタバレ書評(レビュー)】
・「星新一ショートショート 新春スペシャル」(1月2日放送)ネタバレ批評(レビュー)&「ごきげん保険」ネタバレ批評(レビュー)
・『包囲』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『暑さ』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『殺し屋ですのよ』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『ボッコちゃん』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『悲しむべきこと』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『約束』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『月の光』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『猫と鼠』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『来訪者』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『ねらわれた星』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『おーい でてこーい』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『不眠症』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『生活維持省』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『雄大な計画』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『デラックスな金庫』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『親善キッス』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『ゆきとどいた生活』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『診断』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『キツツキ計画』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『ある研究』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『波状攻撃』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『愛用の時計』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『冬の蝶』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『プレゼント』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『追い越し』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『肩の上の秘書』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『闇の眼』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『欲望の城』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『特許の品』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『気前のいい家』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『年賀の客』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『なぞめいた女』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『妖精』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『鏡』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『人類愛』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『変な薬』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『悪魔』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『程度の問題』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『意気投合』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『白い記憶』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『なぞの青年』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『シンデレラ王妃の幸福な人生』(星新一著、新潮社刊『未来いそっぷ』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『アリとキリギリス』(星新一著、新潮社刊『未来いそっぷ』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『北風と太陽』(星新一著、新潮社刊『未来いそっぷ』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『別れの夢』(星新一著、新潮社刊『未来いそっぷ』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『価値検査機』(星新一著、新潮社刊『未来いそっぷ』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『きまぐれロボット』(星新一著、角川書店刊『きまぐれロボット』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『霧の星で』(星新一著、新潮社刊『ようこそ地球さん』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『シャーロック・ホームズの内幕』(星新一著、角川書店刊『きまぐれ星のメモ』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『七人の犯罪者』(星新一著、新潮社刊『かぼちゃの馬車』収録)ネタバレ書評(レビュー)
【ネタバレ批評(レビュー)】
・「星新一ショートショート 新春スペシャル」(1月2日放送)ネタバレ批評(レビュー)「マイ国家」編
・「星新一ショートショート 新春スペシャル」(1月2日放送)ネタバレ批評(レビュー)「凍った時間」編
・「星新一ショートショート 新春スペシャル」(1月2日放送)ネタバレ批評(レビュー)「古風な愛」編
・「星新一ショートショート 新春スペシャル」(1月2日放送)ネタバレ批評(レビュー)「午後の恐竜」編
【その他】
・世田谷文学館にて「星新一展」開催中!!