2016年04月19日

『傍聞き』(長岡弘樹著、双葉社刊『傍聞き』収録)

『傍聞き』(長岡弘樹著、双葉社刊『傍聞き』収録)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

娘の不可解な行動に悩む女性刑事が、我が子の意図に心動かされる「傍聞き」。元受刑者の揺れる気持ちが切ない「迷い箱」。女性の自宅を鎮火中に、消防士のとった行為が意想外な「899」。巧妙な伏線と人間ドラマを見事に融合させた4編。表題作で08年日本推理作家協会賞短編部門受賞!
(双葉社公式HPより)


<感想>

長岡弘樹先生の短編集『傍聞き』収録の一編です。
短編集『傍聞き』には他に『迷走』『899』『迷い箱』の3編が収録されています。
また表題作である本作は2008年の「日本推理作家協会賞 短編部門」受賞作でもあります。

タイトルでもある「傍聞き」とは「本人が誰かから直接聞いた情報は信じられなくとも、第三者同士で交わされた情報を耳にした場合は信じてしまうこと」。
これが読み進めるうちに思わぬ形で表出化する点がポイントです。

「菜月の絵葉書」と「横崎の恫喝」と2つの啓子へのメッセージ。
それが共に「傍聞き」と化した時、大きなサプライズが訪れることでしょう。

ちなみに、ネタバレあらすじはまとめ易いように改変を加えているので、興味のある方は本作それ自体をご覧になるべし!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
羽角啓子:盗犯係の女性刑事
羽角菜月:啓子の娘
羽角フサノ:羽角家の裏に住む老女、啓子と同姓だが血縁関係はない
横崎:窃盗犯
斉藤:留置係


羽角啓子は盗犯係の女性刑事である。
夫を亡くし、娘の菜月と2人で暮らしている。

ある日のこと、管轄内で発生した殺人事件の捜査に駆り出された啓子は疲れ果てて帰宅の途に就いていた。
ところが、家の周辺に人だかりが出来ているではないか。

しかも、その中に見知った顔があることに啓子は気付いていた。
つまり、事件が起こったのだ。

まさか、菜月の身に何か!?
驚く啓子であったが、事件が起こったのは自宅の裏に住む独り暮らしの老女・羽角フサノ宅であった。
どうやら、窃盗事件のようだ。

ちなみに、同じ羽角姓ではあるが啓子とフサノに血縁は無い。
あくまで近所同士の間柄である。
だが、菜月は独りで暮らすフサノを何かと気にかけていた。
それだけに啓子はフサノへの事件の影響が心配でならなかった。
最近は独居老人の自殺や孤独死が増えている、ショックを受けたフサノが思い切った行動に出ないとも限らないからだ。

大丈夫だろうかと思いつつ、見知った顔に声をかける啓子。
すると相手はフサノの無事を伝えて来た。
その一方で啓子にとってさらに不安に駆られる事実を告げて来る。

事件の直前に目の下に大きな傷のある男が目撃されたらしい。
啓子の脳裏に浮かぶのは横崎だ。
横崎は窃盗の常習犯で啓子が逮捕した男であった。
先日になって刑期を終えたばかりの筈だった。
もしかしてお礼参りにやって来て家を間違えたのだろうか。
啓子の不安は大きくなるばかりであった。
菜月に注意するよう伝えなければ……と考える啓子。

そんな啓子の気がかりの種はまだある。
当の菜月のことだ。
菜月にはある奇妙な癖があったのだ。

菜月は啓子と喧嘩をすると啓子への文句を記した葉書を送るのである。
例えば、何かをやっていないとか。
あるいは逆に、干渉し過ぎだとか。
これを回りくどく自宅あてにポストへ葉書を投函して送り届けるのだ。
ところが、同じ苗字なこともあってフサノのもとに届くこともざらであった。
流石にこれは恥ずかしい、止めるように何度も口を酸っぱく叱っても一向に改善されないのであった。

その夜も、半ば諦めつつ啓子は菜月へ注意を怠らなかった。
此の時、啓子はふと「傍聞き」について菜月に語って聞かせた。
「傍聞き」とは「本人が誰かから直接聞いた情報は信じられなくとも、第三者同士で交わされた情報を耳にした場合は信じてしまうこと」だ。
もちろん、横崎のことも注意したのは言うまでもない。

それから数日が経過した。

殺人事件の捜査は啓子を始め多くの捜査員が駆け回っていたが未だ進まずに居た。
結果、啓子は残業を重ねることとなった。

一方、菜月からの葉書が時を同じくして再開した。
内容は「窃盗犯ばかり追っていないで家のこともしてよね」とのもの。
しかも、届けられたのはフサノ宅であった。
何よりも啓子が辛かったのは、絵葉書の為に宛名面にこのメッセージが書かれていたことだ。
これではフサノの目に留まったことは確実だろう。
啓子としては顔から火が出るほど恥ずかしいことであった。
しかし、菜月の葉書攻勢は続いたのである。

同じ頃、フサノ宅の窃盗犯らしき男が逮捕されたとの報が啓子に届いた。
何でも男が啓子に会いたがっていると言う。
まさか……と思いつつも面会に訪れた啓子は相手が横崎であると確認するや不安に襲われた。
やはり、お礼参りだったのか!?

ところが、横崎は留置係の斉藤を背中にしつつニヤニヤ笑いを浮かべている。
警戒する啓子に、横崎はフサノ宅の窃盗は別人の犯行であると語り出した。
しかも、証拠が出たらしく直に捕まるのだそうだ。
すぐに此処から出てやると繰り返す横崎に、啓子は恐怖心を抱くことに。

さらに数日が経過し、真犯人が逮捕されたことで横崎の言葉が実現することになった。
自由になった横崎との対決を視野に入れる啓子。
だが、そんな啓子の決意よりも先に横崎がやって来た。

しかし、その様子はあの時とは全く違っていた。
何処か腰が低いのだ。
拍子抜けする啓子に横崎は謝罪する。
全ては真犯人を捕まえる為の芝居だった、と。
横崎は啓子ではなく別の人物に話しかけていたのだ。

横崎の狙いは「窃盗犯に繋がる証拠が出ており逃げられないこと」を啓子との会話の中で窃盗犯自身に聞かせ、出頭させることであった。
それこそ「傍聞き」、真犯人は斉藤であった。

犯行当日、横崎は斉藤の窃盗現場を目撃してしまった。
証言により被疑者となってしまったところ、何と犯人がすぐ其処に居るではないか。
驚いた横崎は啓子を利用することで状況を打開したのである。

此の時、啓子はもう1つの「傍聞き」に気付いた。

その夜、帰宅した啓子は菜月が行った「傍聞き」について指摘する。
それは絵葉書の宛名面に書かれたメッセージだ。

一見すると啓子への非難の言葉に見えるソレ。
だが、実際は別の意味を抱えていた。

「窃盗犯ばかり追っていないで家のこともしてよね」
これは啓子たちが実際は殺人事件を追っていたにも関わらず、窃盗事件を追っていることを示している。

菜月は啓子へ絵葉書を送っているように見せて、実はフサノへメッセージを届けていたのだ。
被害者となったフサノに「家事が疎かになってしまうほど、皆が真剣に捜査しています」と伝えていたのだ。
そうすることでフサノを励ましていたのだ。
もちろん、絵葉書を用いたのも確実にフサノの目に届くように仕組む為だろう。

それほど、菜月はフサノを心配していたのだ。
啓子は親として菜月を誇らしく思うのであった―――エンド。

「傍聞き (双葉文庫)」です!!
傍聞き (双葉文庫)

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2016年04月18日

『動機』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『動機』収録)

『動機』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『動機』収録)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

各誌ベストテンを総ナメにした日本推理作家協会賞受賞作!

署内で一括保管される三十冊の警察手帳が紛失した。犯人は内部か、外部か。男たちの矜持がぶつかりあう表題作(第53回日本推理作家協会賞受賞作)ほか、女子高生殺しの前科を持つ男が、匿名の殺人依頼電話に苦悩する・逆転の夏・。公判中の居眠りで失脚する裁判官を描いた「密室の人」など珠玉の四篇を収録。解説・香山二三郎
(文藝春秋社公式HPより)


<感想>

横山秀夫先生による短編集『動機』に収録された一編、表題作でもある。
他に『逆転の夏』『ネタ元』『密室の人』が収録されている。

また、キンドル版だと「D県警シリーズ」とされていますが、実は本作は「D県警シリーズ」ではありません。
実は「J県警」が舞台になっていたりします。

表題作『動機』は警務課に所属する貝瀬が視点人物。
そして、貝瀬が直面したのは「何故、一括管理した手帳が消えたのか?」との謎。
つまり「ホワイダニット」作品であり、その結末はなかなかにサプライズです。
特に共に苦難を乗り越えて来たのであろう大和田と神谷の絆が窺えるラストは印象的と言えるでしょう。

なお、ネタバレあらすじはかなり改変しています。
興味のある方は本作それ自体を読むべし!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
貝瀬:J県警警務課所属
大和田:保管責任者
神谷:大和田の部下


J県警警務課に勤務する貝瀬は警察手帳の一括保管を提案し、多くの反対を押し切りながら導入した。
早速、各署で一括管理されることとなったのだが……。

矢先、大和田が管理責任者を務めるU署で全員分30冊もが紛失してしまった。
当初、反対派による嫌がらせを疑う貝瀬であったが、やがて疑惑の目を大和田へと向けるように。
貝瀬は大和田が自身の手帳を紛失し、これを誤魔化す為に他の29冊全てを隠したと考えたのだ。

其処で貝瀬は秘密裏に大和田と面会し「取り敢えず手帳を返却して欲しい。不足があった場合も犯人が破棄したものと解釈する」と大和田へ告げる。
つまり、大和田の手帳が無くとも紛失ではなく窃盗被害として処理するとの申し出である。

翌日、消えた手帳が発見された。
ところが、確認出来たのは29冊ではなく28冊。
1冊ではなく2冊消えていたのだ。

消えていたのは大和田とその部下・神谷の手帳であった。
此処に貝瀬は真相に思い至る。

手帳を紛失したのは大和田ではなく神谷だったのだ。
大和田は未だ若い神谷の前途を慮り、他の29冊全てを盗んだのである。
だが、貝瀬の申し出を受けて大和田の物も外した28冊を返却したのであった―――エンド。

◆関連過去記事
【横山秀夫先生著作記事】
『陰の季節』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)ネタバレ書評(レビュー)

『黒い線』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)ネタバレ書評(レビュー)

『64』(横山秀夫著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【ドラマ関連】
土曜ドラマ「64(ロクヨン)」第1話「窓」(4月18日、4月24日)ネタバレ批評(レビュー)

土曜ドラマ「64(ロクヨン)」第2話「声」(4月25日、5月1日)ネタバレ批評(レビュー)

土曜ドラマ「64(ロクヨン)」第3話「首」(5月2日、5月8日放送)ネタバレ批評(レビュー)

土曜ドラマ「64(ロクヨン)」第4話「顔」(5月9日、5月15日放送)ネタバレ批評(レビュー)

水曜ミステリー9「横山秀夫特別企画 永遠の時効 謎の数列29、41、51は無意識の自白調書!2つの完全犯罪とオンナの嘘を暴く逆転の取り調べ!」(6月25日放送)ネタバレ批評(レビュー)

日曜洋画劇場「特別企画 臨場 劇場版 話題作!!テレビ初放送 大ヒットドラマ遂に映画化!!型破り検視官倉石が挑む最大の事件」(6月9日放送)ネタバレ批評(レビュー)

【その他】
横山秀夫先生、前橋でのトークショーにて小説観を語る!!

横山秀夫先生7年ぶりの新作『64』、文藝春秋社より2012年10月27日発売決定!!

【速報】横山秀夫先生『臨場』が映画化決定!!キャストはドラマ版と同じ!!

「横山秀夫サスペンス」DVD-BOX、2010年10月27日発売!!

横山秀夫先生『64』(文藝春秋社刊)が続々実写化!!まずは2015年4月に連続ドラマ化、次いで2016年に映画化とのこと!!

「陰の季節 (文春文庫)」です!!
陰の季節 (文春文庫)



キンドル版「陰の季節 D県警シリーズ」です!!
陰の季節 D県警シリーズ



キンドル版「動機 D県警シリーズ」です!!
動機 D県警シリーズ



キンドル版「顔 FACE」です!!
顔 FACE



キンドル版「刑事の勲章 D県警シリーズ (文春e-Books)」です!!
刑事の勲章 D県警シリーズ (文春e-Books)

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2016年04月12日

『愚行録』(貫井徳郎著、東京創元社刊)

『愚行録』(貫井徳郎著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

格差社会の醜さを描いた、ゆるぎない傑作!

ええ、はい。あの事件のことでしょ?――幸せを絵に描いたような家族に、突如として訪れた悲劇。深夜、家に忍び込んだ何者かによって、一家4人が惨殺された。隣人、友人らが語る数多のエピソードを通して浮かび上がる、「事件」と「被害者」。理想の家族に見えた彼らは、一体なぜ殺されたのか。確かな筆致と構成で描かれた傑作。『慟哭』『プリズム』に続く、貫井徳郎第3の衝撃! 解説=大矢博子
(東京創元社公式HPより)


<感想>

人は多面的な存在である。
家族には善良な人物でも、社会的には悪辣な人物も居る。
また逆に社会的に英雄でも、家庭人としては失格な人物も居る。
つまり、ある人にとっては善人でも、ある人にっては悪人だったりするワケです。
そんな多面的な存在である人間をインタビュー形式で描き出したのが本作。

ある者は田向を善良と評し、ある者は酷薄と評する。
ある者は夏原を女神と評し、ある者は悪魔と評する。

世のすべての人から極悪人と称される人物でも善行を為すことがあるかもしれない。
逆に仏とまで呼ばれた人物でも何処かで過ちを犯すかもしれない。
そのとき、その場所に立ち会った人にとっては極悪人も善人に見え、善人も極悪人に見えるかもしれない。

この差異は相手をどれだけ知っているかにも関わって来る。
にも関わらず、我々は表層的な情報だけで相手を判断しようとする。
そして、齟齬を生み、擦れ違いを生み、無理解を生む。
それらはやがて憎悪に繋がるかもしれない。

其処に描き出されるのは「人の愚かな行いの記録」=「愚行録」。
特に田中光子とインタビュアーの関係。
そもそもインタビュアーの意外な正体はサプライズとなるでしょう。
さらに、ラストの光子の言葉が正しければ彼女に虐待死させられた娘は「近親間に生じた娘」となってしまうのでしょうか。
どうやら「虐待の連鎖」もテーマの1つと言えそうか。

また、多くの人物がそれぞれを視点人物としつつ1つのストーリーを紡ぎ出す様子は後の『乱反射』に繋がる片鱗を感じさせる作品です。

『乱反射』(貫井徳郎著、朝日新聞出版刊)ネタバレ書評(レビュー)

ちなみに、このインタビュアーの意外な正体も含めて『ある少女にまつわる殺人の告白』とかなり近い形式ですね。
とはいえ『愚行録』は2005年から『ミステリーズ!』で連載されており『ある少女にまつわる殺人の告白』の先行作となっています。

『ある少女にまつわる殺人の告白』(佐藤青南著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

また、貫井先生は『ななつのこ』で知られる加納朋子先生の旦那様でもあります。

ちなみに、ネタバレあらすじはまとめ易いように改変を加えているので、興味のある方は本作それ自体をご覧になるべし!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
田中光子:幼児虐待死事件の犯人
田向:一家惨殺事件の被害者
夏原:田向の妻
宮村:夏原の友人、尾形の元恋人
尾形:宮村の元恋人
インタビュアー:その正体は……


田中光子が逮捕された。
罪状は幼い娘を虐待し殺害したことであったが……。

一方、世間では田向一家4人殺害事件が取り沙汰されていた。
一晩のうちに夫婦とその幼い息子と娘4人が何者かにより惨殺されたのだ。
以下はインタビュアーが取材した記録の要約である。

【田向夫妻の隣人の証言】
夫妻は好感を持てる人物でしたよ、子供たちもとても可愛らしかったし。
残虐な犯人が許せないぐらいで。

【夫である田向の同僚の証言】
田向、あいつは酷薄な奴ですよ。
何しろ、社内の派閥を利用してライバルを蹴落としたほどだし。
他にも学生時代から遊びまわったりとか悪評は絶えなかったようですね。

【田向の妻は旧姓・夏原、そんな彼女を知る友人・宮村の証言】
学生時代の夏原さん?
そうね……私はそうは思わないけど他の人からすると卑怯卑劣な人物でしょうね。

例えば、当時の彼女は学園のアイドルだったの。
それでいつも周囲に取り巻きを侍らせていたわ。
中でも田中光子さんって人が居てね。
夏原さんに何処へでも連れ歩かれていたんだけど、それには理由があったのよ。
実は周囲に比較させて、優越感を得る為だったらしいわ。

他にも、私の恋人である尾形さんを奪っておきながらあっさり捨ててしまったこともあったわね。
まぁ、私は気にしていないけど。

そうそう、他にも夏原さんは田向さんを選ぶまでに多くの男性と愛を育んでた……なんて話は聞きました。

たぶん、いろんな人の恨みを買っていたと思いますよ。
もしかすると、光子さんが殺したのかもしれませんね……。

追記:数日後、宮村は何者かに殺害されてしまった。
どうやら、通り魔による犯行と考えられるようだ。

【宮村と交際していた尾形の証言】
宮村さんの言葉は当てにならないですよ。
彼女は夏原さんにコンプレックスを抱いていましたからね。
僕の件もそうですよ。
僕は夏原さんに誘惑されたから宮村さんと別れたワケではないです。
宮村さんの性格がアレだったから上手く行かなかっただけで。
もちろん、夏原さんには惹かれていましたけどね。
彼女との交際期間は確かに短かったけど後悔はしていません。
仕方が無かったんでしょう。

【田中光子の証言】
あら、お兄ちゃん来てくれたの?
ごめんね、折角私の為に宮村さんを口封じしてくれたのに。
結局、こうして捕まっちゃって。
私たちって兄妹揃って虐待を受け続けて育ったでしょ。
だから、私たちの子供だけは大切に育てようと思っていたんだけどね。
上手く行かないものね。

でも、あの女は殺してやったわ。
私を馬鹿にした夏原とか言うあの女は。
ついでに生意気だったから家に居た他の奴もやっちゃった。

それにしても、まさかあの子があれくらいで死んじゃうなんて。
お蔭で捕まっちゃってさ。
あ〜〜〜あ、お兄ちゃんが宮村さんを殺してまで庇ってくれたのに。
これじゃ、意味ないよね〜〜〜。

そう笑う田中光子、その前に立つインタビュアーこそ彼女の兄その人であった―――エンド。

【貫井徳郎先生関連過去記事】
「乱反射」(貫井徳郎著、朝日新聞出版刊)ネタバレ書評(レビュー)

「慟哭」(貫井徳郎著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)

「光と影の誘惑」(貫井徳郎著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)

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キンドル版「愚行録 (創元推理文庫)」です!!
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