2012年03月13日

誘拐ミステリ

誘拐ミステリ(ゆうかいみすてり) [名詞] (ゆうかい―みすてり)

誘拐事件をテーマとするミステリのこと。
このジャンルの代表作としては天藤真先生『大誘拐』、岡嶋二人先生『99%の誘拐』などがある。

近年では、佐倉淳一先生『ボクら星屑のダンス』(第30回横溝正史ミステリ大賞 テレビ東京賞)や、大山淳子先生『猫弁 天才百瀬とやっかいな依頼人たち』(TBS・講談社第3回ドラマ原作大賞受賞作)が特筆すべき作品か。

このジャンルは、そのトリックが視覚的に理解し易いこともあって映像化に適していることも特徴。
他に誘拐犯側、捜査側の2つの視点を交互に繰り返すことで臨場感を盛り上げるパターンが多い。

このジャンルにおけるトリックは、次の2つに大別される。

1つ、誘拐被害者が加害者側に転じる、或いは、首謀者である。
2つ、誘拐は偽装であり、被害者の殺害が主目的である。

特に1つ目のトリックは「意外性がある」、「人情ものと絡め易い」などの理由からか非常に多く、如何にこのパターンから抜け出すかがこのジャンルの醍醐味と言えるだろう。

1つ目のトリックを逆手にとった作品としては、連城三紀彦先生『造花の蜜』も面白いかもしれない。
2つ目のトリックを逆手にとった作品としては……って、こちらはネタバレになるので避けたいと思います。

代わりに、当ブログ内にて取り上げているこのジャンルの作品を幾つか下記に記載しておきます。
厳密にはこのジャンルとは言い切れない作品もありますが、どれも個性的ですね。
当然、過去記事にネタバレ書評(レビュー)があるので、読み比べて頂くことで傾向を把握されることも面白いかもしれません。

東野圭吾先生『ゲームの名は誘拐』
貫井徳郎先生『長く孤独な誘拐』(『光と影の誘惑』収録)
我孫子武丸先生『夏に消えた少女』
松浪和夫先生『刑事魂』
東川篤哉先生『もう誘拐なんてしない』

◆関連過去記事
『ボクら星屑のダンス』(佐倉淳一著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)

『猫弁 天才百瀬とやっかいな依頼人たち』(大山淳子著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『造花の蜜』(連城三紀彦著、角川春樹事務所刊)ネタバレ書評(レビュー)

『光と影の誘惑』(貫井徳郎著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『ゲームの名は誘拐』(東野圭吾著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『夏に消えた少女』(我孫子武丸著、新潮社『Mystery Seller(ミステリーセラー)』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

『刑事魂(警官魂 激震編・反撃編)』(松浪和夫著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『もう誘拐なんてしない』(東川篤哉著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)

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2011年11月26日

「ミッシングリンク」(ミステリ用語辞典)

ミッシングリンク(みっしんぐりんく) [名詞] {みっしんぐ―りんく}

別名:失われた連環、失われた繋がり、見えない繋がり

一見無関係に見える事柄が、実はある共通項により繋がっていること。

なお、この共通項はそれを認めた者の主観による。
すなわち、第3者から見て成立しているかどうかは関係が無い。
あくまで本人がそれを認めれば成立している。

では、ミッシングリンクの例を。

【問】東野圭吾先生、東直己先生、東川篤哉先生。この3人のミッシングリンクは何か?

【答】正解は「東」の文字……に加え、2011年に話題になった(なっている)作家さん。

それぞれ、

東野先生は作家生活25周年。
東先生は「ススキノ探偵シリーズ」が映画化。
東川先生は『謎解きはディナーのあとで』で大ブレイクを果たす。

つまり、もしも2011年の話題になろうとしている人が居れば、あと1ヶ月以内に「東山」か「東原」といったペンネームでデビューすれば成功する……筈、たぶん。
ちなみに、例があまり「ミッシングリンク」していないことについては触れないように!!

では、これでこの項は……と締め括ると「さては管理人、これが言いたかっただけか」と思われても困るので、より相応しいと思われる「ミッシングリンク」もののオススメ作品を挙げておきます。
これを読んで実践しましょう。

管理人がオススメしたい作品は、倉知淳先生の『壺中の天国』。

<『壺中の天国』あらすじ>

上巻:盆栽──。シングルマザーの知子は、純和風の美に今日もうっとりと見惚れている。三十の女性としては少々渋い趣味を満喫し、アイドルに夢中の娘と、お節介な父親の三人で、知子は騒がしくも平穏な日々を過ごしていた。しかし一家が住む町で電波系の怪文書が撒かれ女子高生の撲殺死体が発見された! のどかな地方都市を揺るがす大騒動の幕があがる。第一回本格ミステリ大賞受賞作。

下巻:シングルマザーの知子が、家族とほのぼの暮らしているのどかな町で、連続通り魔殺人事件が発生した。犠牲者が出るたびに撒かれる電波系怪文書。見つからない被害者を繋ぐミッシング・リンク。事件の異様な興奮が一家の平和な日常にもじわりと忍びよるが、知子は幼なじみの正太郎や記者兼編集者の水嶋と共に犯人像に迫ってゆく。巧みな伏線と精緻なロジックが光る、本格ミステリ。解説=戸川安宣
(東京創元社公式HPより)


これはイチオシ!!
あの恐ろしいまでの関連付けには震えが来たほど。
一歩間違えば牽強付会だが、ギリギリで踏み留まっているのが凄い。
本作は「第一回本格ミステリ大賞受賞作」でもあるので、ミステリ通を自認される方で未読の方は是非!!

東京創元社さんより2011年12月22日に新装版が発売されるのもポイント。
あなたの本棚に是非どうぞ!!

◆関連過去記事

第10回本格ミステリ大賞発表!!

第11回本格ミステリ大賞(小説部門、評論・研究部門)発表!!栄冠はどの作品!?

「壺中の天国 上 (創元推理文庫)」です!!
壺中の天国 上 (創元推理文庫)





「壺中の天国 下 (創元推理文庫)」です!!
壺中の天国 下 (創元推理文庫)



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2011年11月14日

「安楽椅子探偵」(ミステリ用語辞典)

安楽椅子探偵(あんらくいすたんてい) [名詞] {あんらく―いす―たんてい}

別名:アームチェア・ディテクティブ

探偵役がその場から動かず、別の場所で起こった事件を情報伝達者からの情報のみで解決すること。
または、解決する探偵自身のこと。

既に読者に提示された情報を別の角度から視ることで意外な真相が浮上するパターンが多いことから、高いサプライズ効果が見込める為に作者、読者からの人気は高い。

安楽椅子探偵として有名な探偵としては……

古くは、実は○○○だった隅の人や。
編み物好きの老婦人や。
黒い蜘蛛の会の給仕の人などがある。

インパクトのあるとこでは、銀色の仮面を着けた怪人物や安楽椅子そのものというパターンも存在。
最近では、とある古書店の女主人や、ニート、執事などが挙げられる。

ちなみにその場から動かず、言説で他人を誘導し犯行を行わせる犯人のことは「操り」または「操りの構図」と呼ぶ。
「安楽椅子犯人」とは言わないので注意!!

もっとも、「安楽椅子犯人」さんは実在しています。
興味のある方は過去記事をどうぞ!!

◆関連過去記事

・この方も安楽椅子探偵でしょう。ニッキイ・ウェルト教授が活躍する「九マイルは遠すぎる」。
「九マイルは遠すぎる」(ハリイ・ケメルマン著、永井淳訳、深町眞理子訳、早川書房刊)ネタバレ書評(レビュー)

・安楽椅子そのものが安楽椅子探偵な『安楽椅子探偵アーチー』が初登場したのはココ!!
「創元推理21 2002年夏号(2002年8月)」(東京創元社刊)

・「安楽椅子犯人」さんによる『湖岸の盲点』まとめです!!
湖岸の盲点〜小此木鶯太郎の事件簿〜」(小野堂天乃介原作、葉山せり作画)まとめ

銀色の仮面の人こと「安楽椅子探偵 ON AIR [DVD]」です!!
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安楽椅子な探偵こと「安楽椅子探偵アーチー (創元推理文庫)」です!!
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