2015年04月17日

「チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像」(2014年、日本)

「チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像」(2014年、日本)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

国、自治体、東城医大が死因究明システムの改革として取り組む、日本初のAi(死亡時画像診断)センターが発足する。東城医大の田口(伊藤淳史)と厚生労働省の白鳥(仲村トオル)もこのプロジェクトに参加していたが、こけら落としとなるシンポジウムを前に、東城医大に脅迫状が届く。一方、死因が判別できない集団不審死事件が発生。そしてAiセンターが始動する当日、医学界を揺るがす出来事が起きようとしていた。
(公式HPより)


<ネタバレあらすじ>

白鳥らの尽力により東城医大にて国際Aiセンターの設立が実現しようとしていた。
Aiとは「オートプシーイメージング」の略で「死亡時画像診断」を意味している。
これにより、死因究明が飛躍的な発展を遂げることになるのだ。

さらに、これを後押しするように海外から東堂がマンモスMRIマシン「リヴァイアサン」を持参して来た。
これにより、Aiセンターはさらに充実。
東堂はAiセンターを「死の番人」である「ケルベロス」と呼び、絶対の自信を持って発足を迎えようとしていた。

同じ頃、医療ジャーナリストの別宮葉子は田口を介しAiセンターの取材を開始する。

矢先、10人が地下室に閉じ込められ、そのうち9人が謎の死を遂げる事件が発生。
生き残ったのは榊医師のみ、その榊も危険な状態であった。
これに救急救命のスペシャリスト・速水が駆け付け彼を救う。

何とか一命を取り留めた榊によれば何者かに地下に閉じ込められたらしい。
だが、9人の死因は不明であった。

東堂は此処で早速Aiを用いて死因を特定することに成功。
それは「重水」であった。

どうやら、10人を閉じ込めた犯人は事前にペットボトルに重水を混入。
長時間に渡り閉じ込められた被害者たちがペットボトルの水に手を出すと死亡するように仕組んでいたらしい。
明らかに大量殺人だ。

同じ頃、東城医大に「三の月、東城医大病院とケルベロスの塔を破壊する」との脅迫状が届いた。
Aiセンターへ標的とした脅迫である。

だが、だからといって設立を取り止めるワケには行かない。
東堂が引っ張る形でお披露目が準備されることとなった。

一方、田口と白鳥コンビはこの2つの事件について調べ始めた。

まず、地下室での大量殺人事件だが被害者間に共通点があることが判明。
薬害事件を起こした「ケルトリン」なる薬品の認可に関わったメンバーだったのだ。
すなわち、犯人はこの薬害事件の被害者の可能性が高い。

そして、脅迫状事件。
こちらは田口に心当たりがあった。
白鳥によって焼失した桜宮病院の関係者……すなわち、桜宮すみれである。
しかし、すみれの行方は掴めない。

そんな中、遂にAiセンターのお披露目当日がやって来た。
自信満々の東堂たちが檀上に立つ中で、会場には密かにやって来たすみれの姿が……。

そんな中、葉子が薬害事件の被害者遺族であったことが明らかに。
そう、葉子こそが大量殺人の犯人だったのだ。

時を同じくして榊医師の容態が急変する。
急ぎ治療を行おうとした速水だが、電子カルテが改竄されていることに気付く。
もちろん、葉子の仕業である。

一方、Aiセンターのお披露目でも波乱が起きていた。
突如としてすみれが白鳥の過去を暴露したのだ。
それは白鳥が研修医時代に上司の医療ミスを黙認したとのものであった。
どうやら、Aiを推進する白鳥を公衆の面前で貶めるつもりらしい。

だが、此処で東堂がすみれの前に立ち塞がった。
東堂は「医療ミスについては事実だとしても、Ai診断した限りではどうにも対処のしようが無かった」と指摘する。
白鳥自身も東堂の言葉を認めつつも謝罪し、すみれの暴露は特に効果を発揮することなく終息する。

ところが、葉子の攻撃は未だ終息していなかった。
葉子は院内のシステムを攻撃し、これを陥落させた。
停電を起こさせた上に「リヴァイアサン」を破壊したのだ。

こうしてAiセンターのメインが物理的に破壊されてしまった。
東堂は意気消沈することに。

なおも続く葉子の攻撃、その狙いは榊の命だ。
だが、もはや無差別とも言える広範囲攻撃に東城医大は麻痺しつつあった。
患者の間から次々と悲鳴が上がる。

この状況にすみれも医師として協力し事態の収拾に乗り出す。
速水はと言えばすべて手動にて榊の緊急手術を開始。

田口と白鳥は何処かで様子を見ている筈の葉子を探す。
すると……居た!!
屋上に葉子の姿があったのである。

田口たちは屋上にて葉子を取り抑える。
復讐に燃える葉子、全ては彼女の母親の復讐らしい。
地下室で死亡した9人は薬害事件の直接的な主謀者。
榊は葉子の母の担当医であったにも関わらず、被害に遭った後の彼女を目にしても無視したことが許せなかったらしい。

だが、葉子は1つ大きな勘違いをしていた。
榊は相貌失認という症状に陥っており、相手の顔が識別出来ない状態だったのだ。
つまり、葉子の母を無視したのではなく、分からなかったのだ。

これを聞かされた葉子は既に復讐が達成していたことを知り攻撃を中止することに。
この間もすみれや速水の活躍があり、東城医大はピンチを切り抜けた。

事件が終わり、白鳥は過去の自身の罪について田口に語る。
当時、白鳥は上司のミスを告発しようとしたのだが途中で潰されてしまったのだ。
其処で白鳥は医師を辞め、官僚になると決めたのであった。
これを聞いた田口は白鳥の罪を許すことに―――エンド。

<感想>

ドラマ版「チーム・バチスタ」、その完結作品です。
フジテレビ系で放送され伊藤淳史さんが田口を、仲村トオルさんが白鳥を演じられ大好評を博した作品の映画版となっています。

サブタイに「ケルベロスの肖像」とあることでメインはAiセンターかと思わせておいて実は薬害事件の復讐にありました。

とはいえ、この薬品の名が「ケルトリン」。
すなわち、これもまた「ケルベロス」をもじったものか。

さらに、犯人である別宮葉子には3つの顔があった。
医療ジャーナリストとしての中立の顔、薬害被害者遺族の顔、逆に大量殺人加害者としての顔。
これは3つの頭を持つケルベロスと同じ。
サブタイトルはそんな葉子をも示していたのかもしれません。

ちなみに映画版は原作とはかなり異なっています。
そんな原作シリーズでは『ケルベロスの肖像』後にも次作が発表されています。
それが『カレイドスコープの箱庭』(宝島社刊)であらすじは次の通り。

<あらすじ>

“愚痴”外来の田口医師と厚生労働省のロジカル・モンスター白鳥が、誤診疑惑の調査に乗り出す!
巻末に登場人物リスト&桜宮市年表&作品相関図など収録。海堂ワールドを網羅した完全保存版。

東城大学病院は存続の危機に立たされながらも、運営を続けていた。そんな折、肺癌患者が右肺葉摘出手術で亡くなったのは、病理医の誤診が原因ではないかとの疑惑が浮上。田口医師は実態を把握せよという高階病院長の依頼を受け、仕方なく、呼吸器外科や病理検査室などの医師や技師たちへの聞き取り調査を開始する……。万華鏡のように、見る角度によって様々な形に映る大学病院。果たして事件の真実とは――。海堂ワールドを俯瞰できる登場人物相関図や、600名近くに及ぶシリーズ全登場人物表なども収録した完全保存版。
(宝島社公式HPより)


興味のある方はチェックするべし!!

そう言えば、竹内結子さんが田口を、阿部寛さんが白鳥を演じられた「チーム・バチスタ」シリーズもありました。
「ジェネラル・ルージュの凱旋」以降は続編がありませんが、あちらでも続編あるといいなぁ……。

◆海堂尊先生関連過去記事
【原作映画】
「チーム・バチスタの栄光」(2008年、日本)ネタバレ批評(レビュー)

「ジェネラル・ルージュの凱旋」(2009年、日本)ネタバレ批評(レビュー)

【原作ドラマ】
チーム・バチスタSP2011〜さらばジェネラル!天才救命医は愛する人を救えるか〜「ICUに殺人予告!!愛する人を救えるか?チームジェネラルVS完全犯罪」(1月2日放送)ネタバレ批評(レビュー)

NHKドラマ10「マドンナ・ヴェルデ」第1話(第1回)「希望の卵」(4月19日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「このミステリーがすごい!〜ベストセラー作家からの挑戦状〜 天才小説家×一流映画監督がコラボした、一夜限りの豪華オムニバスドラマ!味わいの異なる4つの謎=各25分の濃密ミステリー!又吉×希林の他では見られないコントも!」(12月29日放送)ネタバレ批評(レビュー)

【ネタバレ書評(レビュー)】
「マドンナ・ヴェルデ」(海堂尊著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『カシオペアのエンドロール』(海堂尊著、宝島社刊『このミステリーがすごい!四つの謎』収録)ネタバレ書評(レビュー)

【その他】
海堂尊さん講演会!!

海堂尊さんに110万円賠償命令下る

フジテレビにて放送中「ジェネラルルージュの凱旋」で知られる海堂尊さんを巡る名誉棄損訴訟結論出る!!

海堂尊先生が教える文章のまとめ方とは?

海堂尊先生原作「マドンナ・ヴェルデ」がNHKドラマ10枠にてドラマ化!!

「バチスタ」シリーズ遂に完結!!『ケルベロスの肖像』発売される!!

【ドラマ】海堂尊先生原作『極北ラプソディ』、『極北クレイマー』ドラマ化!!

海堂尊先生原作『螺鈿迷宮』(角川書店刊)が「バチスタシリーズ第4弾」としてドラマ化!!

「カレイドスコープの箱庭」です!!
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2015年04月11日

「相棒-劇場版V- 巨大密室!特命係 絶海の孤島へ」(2014年、日本)

「相棒-劇場版V- 巨大密室!特命係 絶海の孤島へ」(2014年、日本)ネタバレ批評(レビュー)です!!

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

東京から約300キロ離れた島・鳳凰島で馬に蹴られた男性が死亡する事故が発生。警視庁特命係の杉下右京(水谷豊)と甲斐享(成宮寛貴)は、不思議なうわさのある島の実態を調査することに。その島は実業家(宅麻伸)が所有し、元自衛隊員が集まり訓練に励んでいた。右京は男性の死亡理由が事故ではなく殺人であると確信。島には特命係、捜査一課、鑑識課が集結するが、彼らを何者かが襲撃し……。
(公式HPより)


<ネタバレあらすじ>

時系列は「season11」後、「season12」前のことである。

東京から約300キロ離れた場所に「鳳凰島」が浮かんでいた。
其処は有事に備えるべく民兵グループにより管理された島であった。
ところが、ある夜のこと駐留していた民兵の1人・岩代純也が不慮の死を遂げてしまう。
死因は「馬に蹴られた」とのものであったが……。

その数日後、右京と甲斐の姿は「鳳凰島」にあった。
彼らは岩代の死について捜査を開始したのだ。

何故、特命が捜査に乗り出したか。
事の発端は、右京の元相棒で今は警察庁長官官房付となった神戸にあった。
右京たちは神戸から「ある依頼」を受けたのだ。
その依頼とは「鳳凰島にて生物兵器の有無を確認する」ことであった。

実は、この依頼の裏には峯秋が介在していた。
「鳳凰島」には以前から生物兵器所有の疑惑があったのだが、民兵を支援する勢力や逆にこれを排除しようとする勢力の暗闘があり、迂闊に捜査が出来ない状況にあったのだ。
つまり、峯秋は岩代の事故死を口実に生物兵器の有無を調べさせたいのである。

こうして、右京は甲斐を連れ実況見分を名目に鳳凰島へと乗り込むことに。
鳳凰島の面々は右京たちを警戒しつつも迎え入れる。
ジープで宿営地へと運ばれた右京は自身と入替るように運び出される荷物を見かけるのだが……。

鳳凰島の関係者は次の通りである。

「鳳凰島」の所有者は元自衛官で名うての実業家で知られる若狭道彦。
だが、若狭は「鳳凰島」には常駐していない。

実質的なリーダーであり民兵たちを指導するのは、若狭の後輩で救国の志に燃える神室司。
そして、そんな神室のもと同様の志に集った高野志摩子らメンバーたち。
彼らが「鳳凰島」に生活している。

ちなみに、神室司は過去に若狭が原因で松葉杖なしでは生きていけない身体となっていた。
どうやら、これを後悔した若狭が罪滅ぼしすべく神室に「鳳凰島」を用意したらしい。

表向き岩代の死について調べ始める一方で生物兵器についても捜査を開始する右京と甲斐。
だが、右京はそもそもの岩代の事故死にも疑問を抱く。

岩代は志摩子と交際していたようだが、どうも志摩子は神室の命により岩代の真意を探っていたらしいのだ。

矢先、岩代が若狭の命で神室をスパイしていたことが判明。
一見、一枚岩に見えた若狭と神室であったが、若狭も神室の最近の行動に疑惑を持っていたようだ。
其処で若狭は岩代をスパイに送り込んだのだ。

右京は岩代の遺体発見現場や彼を殺害したとされる馬を調べ、ある結論に至る。

そんな中、先行した特命係を追うように伊丹たちや米沢もが派遣されて来た。
こうして、いつも面々が一同に会したのだが。

直後に謎の武装集団の襲撃を受け、本土へ送り返されてしまう。
その集団の正体は神室たちの行動を警戒していた特殊部隊であった。
実は神室たちは秘密裏に製造された生物兵器(天然痘)を盗み出しており、この回収の為に特殊部隊が動いていたのだ。
特殊部隊により神室たちは制圧され、生物兵器の保管場所も明らかにされることに。

その頃、本土へ戻った右京たちは今度こそ事件を解決すべく再び鳳凰島へ。
其処で拘束された神室たちと合流する。

此処に右京は岩代殺害の犯人が神室であると指摘する。
神室は杖に蹄鉄を加工した物を凶器とし、文庫本を落とすと岩代に拾わせた隙を突き殺害したのである。
志摩子を通じ岩代がスパイであることに気付いたからであった。

一方、神室たちの目の前で生物兵器の保管場所が爆破された。
これで全て終わったかに思われたが……。

右京は神室たちの目がまだ死んでいないことを見逃さなかった。
彼らは未だに生物兵器を所持している。
ふと思い出されたのは右京たちと入替りに運び出された荷物である。
まさか、あれがそうなのではないか!?

こうして、右京の手配りで本土に送り出されたと思われるソレの捜索が開始。
数時間後、それと思しき品が見つかり右京の推測が正しかったことが明らかとなった。
これにより、今度こそ本当に事件が解決したのであった。

後日、逮捕された神室。
そんな神室を右京は一喝するのであった―――エンド。

<感想>

「相棒」劇場版第3弾です。

正直、期待していた作品の方向性とは些か異なっていた印象。
てっきり、岩代がダブルスパイでこれを巡って若狭と神室が争う的な謀略戦を想定していたのだけど割とあっさりとしたストーリー展開に終始しましたね。
これは「相棒」である必要があったのかどうか。
少なくとも「相棒」シリーズの1作としては賛否を呼びそうな感じ。

そう言えば、岩代はスパイな割にグループに参加するやあっさりとやる気を失くしていたんだよなぁ。
明らかな人選ミスのような……。
若狭は神室のこともあるが、どうも人を見る目に問題があったのかもしれない。
でも事業家としては成功している不思議!!

それと、ラストにて右京が神室を一喝し全否定していたことに違和感。
少なくとも、その点の是非については視聴者に委ねてくれても良いと思うのだが。

第一、右京は全否定していたものの「志を抱くことそれ自体」には問題がない筈なんだよなぁ。
ただ、神室の場合は「その志を為すべく採った具体的な手段」に問題があった。
これがあまりに非常な方法であった為に神室は批判されるべき存在となってしまったワケで。
右京ならば此の点をきちんと指摘して欲しかったかな。

それと、本当に志を為そうとするなら、たとえそれが困難と分かっていても多くの人に理解を得られるように語るべきなんだよなぁ。
少なくとも「伝えようとする努力」を怠るのはどうかな。
此の点も右京なら指摘して欲しかったなぁ。

ちなみにネタバレあらすじはかなり改変しています。
本作を実際に視聴して、何処を改変したかを楽しむのもアリかも。

◆関連過去記事
「相棒 -劇場版- 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン」ネタバレ批評(レビュー)

『相棒 ―劇場版2―』(大石直紀著、小学館刊)ネタバレ書評(レビュー)

「相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿」ネタバレ批評(レビュー)

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2015年03月14日

「楊家将〜烈士七兄弟の伝説〜」(2013年、中国)

「楊家将〜烈士七兄弟の伝説〜」(2013年、中国)ネタバレ批評(レビュー)です!!

<あらすじ>

中国・宋王朝の時代。敵国・遼の軍が接近し、“楊無敵”と称される宋の忠臣、楊家の家長・楊業(アダム・チェン)が先鋒隊を務めることとなる。遼軍を率いる耶律原は楊業がかつて討ち取った将軍の息子。その耶律原が楊業を捕らえたため、楊家の7人の息子たちが父を連れ帰るべく敵陣へと向かう。
(公式HPより)


<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
楊業:楊無敵と称される宋の武人。
楊延平:楊業の長男。
楊延定:楊業の次男。
楊延安:楊業の三男、弓の名手。
楊延輝:楊業の四男。
楊延徳:楊業の五男。
楊延昭:楊業の六男、槍の名手。
楊延嗣:楊業の七男。
賽花:楊業の妻。
柴郡主:宋の公主(姫)。
潘仁美:宋の重臣。
潘豹:潘仁美の息子。彼の死が影を落とすことに……。


宋と遼が大陸で鎬を削っていた時代の物語である。
宋は「楊無敵」と称される武人・楊業を擁し、何度となく遼の侵攻を退けて来た。
これにより、時の皇帝は楊業を重用した。

だが、もちろん宋の重臣・潘仁美にとっては自身が軽んじられる結果となり面白くない。
事あるごとに楊家に突っかかっていたのだが……。

そんなある日、皇帝の娘・柴郡主に縁談が持ち上がった。
相手は潘仁美の息子・潘豹である。
潘豹は近く行われる御前試合に優勝したら柴郡主を娶ると宣言していた。

一方、当の柴郡主には想いを決めた相手が居た。
他ならぬ楊家の六男・楊延昭である。
そして、楊延昭もまた柴郡主を愛していたのだ。

楊延昭は御前試合に出場し潘豹との対決を望むことに。
しかし、これを楊業は禁ずる。
楊家と潘家の軋轢を重ねることを避けたのだ。

だが、楊延昭は父の戒めを破り御前試合に出場してしまう。
互いに勝ち上がり、決勝は延昭と豹の一騎打ちに。

此処で豹が暗器を用いた。
結果、不意を突かれた延昭は豹に敗れることに。

ところが、この結果を潔しとしない者が居たのだ。
延昭の弟にして七男の楊延嗣である。
延嗣は兄の屈辱を晴らすべく、果敢に豹に挑みこれを破ってしまう。
しかも、この際に豹は死亡してしまった。

当然、潘仁美は烈火の如く怒り、楊家の粛清を皇帝に申し出た。
まさに楊業の危惧が的中したのだ。

皇帝は激怒する仁美を宥め、楊業に謝罪させることで事態を収拾する。
しかし、遺恨は何処までも残り続けることに。

そんな中、遼が侵攻を開始した。
敵将は耶律原、過去に楊業が討ち取った男の息子だそうである。
当然、楊業が総大将として迎え撃つかと思われたが……。

これに潘仁美が反対する。
何時になく強硬姿勢を取る仁美に押し切られる形で、皇帝は彼を総大将に据え楊業を先鋒に置く。

これが不味かった。

耶律原と開戦した仁美は先鋒の楊業が包囲されているにも関わらず、軍を動かさない。
しかも、早々に撤退するや籠城してしまったのである。
明らかな利敵行為であった。
仁美は敵を討つことよりも楊業抹殺を狙ったのだ。

取り残された楊業は近くの城に逃げ込むことに。
これを耶律原の大軍が包囲する。
もはや、楊業の命は風前の灯と思われた。

この状況に楊業の妻・賽花は嘆き悲しんだ。
皇帝に救援を縋るも、皇帝は仁美が籠城している状況に及び腰だ。
そんな賽花を見かねた楊家の七兄弟は救援を買って出る。

楊家の七兄弟は先に上げた六男・延昭、七男・延嗣の他に戦略家として名のある長男・楊延平、長男を支える次男・楊延定、弓の名手として知られる三男・楊延安、延徳とのコンビを得意とする四男・楊延輝、延輝とのコンビを得意とする五男・楊延徳が居た。
楊家の七兄弟は武人としても名を成していた。
これ以上の者は宋には居ない。

これを賽花は頼もしく思いつつも不安に駆られた。
彼らは楊家の後継者だ、もしも全滅するようなことがあれば……。
其処で高名な占い師に救援の結果を占わせることに。

「七子行きて、六子帰る」
それが占い師の結論であった。

これを目にした賽花は息子たちを向かわせるべきか悩んだ。
密かに延平に相談することに。
すると、延平はこれを「七人の子供が救援に向かい、六人が戻る」と読み解き、弟たちを必ず無事に返すと約束した。

こうして、楊家の七兄弟は楊業救出に出陣した。
七兄弟は少数ながらも快進撃を続け、たちまち楊業に合流した。

一方、この報を聞き付け快哉を叫んだ者が居た。
誰あろう敵将・耶律原である。
耶律原は父を楊業に討たれて以来、母1人子1人で苦労を強いられ成長していた。
今回の侵攻も私怨を晴らす為のものだったのである。
耶律原は楊業を餌に七兄弟を誘き出し皆殺しにする腹積もりだったのだ。
だからこそ、故意に道を開けたのだ。

これは楊業にも分かっていることであった。
息子たちが駆け付けたことで、耶律原の総攻撃が迫っていると察したのである。

楊業から耶律原の真意を知らされた兄弟たちは早期の脱出を図る。
しかし、此処で七男・延嗣が仁美に援軍を求めるべきと主張する。
必ず説得してみせると譲らない延嗣は周囲の制止を振り切って援軍要請に仁美のもとへ。

だが、その間に耶律原の総攻撃が開始された。
これを支える楊家の面々。
とはいえ、多勢に無勢である。

数日を以て城は陥落、延平ら6人の息子たちは負傷した楊業を囲むように脱出する。
これを復讐に燃える耶律原が猛追する。

到底逃げ切れぬと察した楊平は楊業と兄弟たちを逃がすと、今が約束のときと切り立った断崖絶壁で敵を迎え撃つ。

追い縋る敵は突然現れた楊平に遮られ足止めを余儀なくされた。
楊平は降りかかる矢は薙ぎ払い、寄せる敵兵は押し返し、当たるを幸い斬り倒し続けた。
まさに奮戦である。

其処に先に行った筈の延定が戻って来た。
兄を置いては行けないと言うのだ。

直後に延定は敵中に耶律原を見つけ挑みかかってしまう。
しかし、耶律原もまた強かった。
延定は返り討ちに。
延定を助けようとした延平も隙を突かれ戦死する。

2人を排除したがかなりの差を開けられた耶律原は騎馬による精鋭100騎を編成し追撃を再開。

これに気付いた四男・延輝と五男・延徳は捨石となることを選ぶ。
海沿いの崖で待ち構えると火をかけて騎馬隊の足を止めさせたのだ。
さらに、その大半を海へと撃ち落とすと先鋒部隊ごと海に消えた。

この待ち伏せにより耶律原の精鋭はほぼ壊滅。
しかし、それでも耶律原は残された数騎にて追撃を強行する。

一方、楊家側に残されたのは負傷している楊業と三男・延安、六男・延昭。
そして、仁美に援軍を求めた七男・延嗣のみだ。

だが、その延嗣にも死の影が忍び寄っていた。
仁美が籠る城まで辿り着いたが、入城すら許可されなかったのだ。

城門前から必死に救援を懇願する延嗣。
その姿を認めた仁美は「あれは敵だ!!」と叫ぶ。
直後、味方の筈の仁美の軍勢から延嗣は雨霰と矢を射掛けられた。
こうして、延嗣は全身ハリネズミとなり射殺されてしまう。

その頃、楊業は自身が逃避行の足手まといになっていることを気に病んでいた。
これ以上は息子たちの命を危険に曝すとして、夜の闇の中で命を絶ってしまう。

翌朝、楊業が自害したことに気付いた延昭、延安。
2人は楊業が彼らを救う為に自殺したことに涙を流す。
とはいえ、父の遺骸を敵に辱めさせることは出来ない。
延昭が楊業を担ぎ、延安がこれを支えて逃避行を続ける。

楊家荘まではもう少しだ。
其処まで逃げ切れれば……しかし、此処で襲撃を受ける。

耶律原の部下たちだ。
延安がその場に残り、これを引きつけることに。

弓の名手である延安の手により射殺されて行く耶律原の部下たち。
しかし、弓の名手は延安だけではなかった。

風を裂く音に身を翻した延安のすぐ傍を一本の矢が抜けて行ったのだ。
少し遅ければ間違いなく額を射抜かれていた……冷や汗を流す延安。
耶律原の部下にも弓の名手が存在していたのである。

慌てて遮蔽物に身を隠し、射手の姿を探す。
其処に相手の第二射が降って来る。

延安は身を躱しながら叢へと逃げ込む。
次いで、第三射。

方向を見極めた延安は矢をつがえ、これを撃ち落とす。
そして、相手を捉えた。

同時に相手も延安へと距離を詰めて行く。
その手には次の矢が握られている。
延安も弓を引いた。
矢筒に残る矢はこれで最後だ。

そして互いに矢を放った。
必殺の気合を込めた矢である。

相手の矢は延安の腹を貫いた。
延安の矢は相手の額を貫いた。

延安も深手を負ったが相手は即死であった。
強敵を下したことに安心し膝をつく延安。
身体を休めたら、延昭の後を追わなければならない。

そう微笑んだ瞬間―――背後に人の気配を感じた。

耶律原だ。
延安は振り返る暇もなく、耶律原に首を撥ねられた。
延安の首は毬のように叢を転がって行く。

いよいよ王手だ……耶律原は勇躍するや延昭へ向けて走り出す。
彼には多くの部下が犠牲になった後悔はない。
既に復讐の鬼と化していたのである。

遂に1人きりとなった延昭。
兄たちの遺志を継ぎ、彼は父の遺骸を楊家に届けるべくひた走る。

しかし、その背後に迫る影が。
もちろん、耶律原である。
もはや、これを振り切ることは出来ない。

覚悟を決めた延昭は耶律原と交戦を開始する。
延昭も手練れとして知られた勇士。
しかし、耶律原はそれを上回っていた。
延定、延安と直接手にかけたのは決して伊達では無い。

延昭は追い込まれて行く。
だが、此処で異変が起こった。

延昭は亡き父と兄弟6人の姿を思い浮かべたのだ。
そして、故郷で待っている最愛の女性を。

途端に延昭の動きが甦った。
思わぬ反撃にたじろぐ耶律原。

だが、耶律原も黙ってはいない。
咄嗟に組み討ちに持ち込んだのだ。

互いに殴り合いながら位置を変えて行く2人。
次第、次第に耶律原が追い詰められて行く。
延昭の想いが耶律原の執念を上回った瞬間であった。

何時の間にか延昭が耶律原を組み伏せていた。
そして、延昭により振り上げられる剣。
それを下ろせば、耶律原の命を絶つことが出来る。
仇を討つことが出来るのだ。

だが、延昭はそれを選ばなかった。
延昭は楊業を背負うと再び歩き出そうと……。

ところが、その背に剣を振りかぶった耶律原が。
耶律原は一切の躊躇なくこれを振り下ろそうとして……胸に刺さった槍の穂先に気付いた。
その槍は延昭に握られている。

延昭は背後を警戒していたのである。
この一撃により耶律原は直立不動の姿で落命した。

再び歩き出した延昭。
その目に鎧姿の集団が映る。
それは楊業たちを迎えるべく出兵した賽花たちの姿であった。

こうして延昭は楊家に辿り着いた。
楊家の7兄弟、生きて戻ったのは1人であった。

長男・楊延平、次男・楊延定、七男・楊延嗣の遺体は後に回収され弔われた。
三男・楊延安、四男・楊延輝、五男・楊延徳の遺体の行方は杳として知れなかったと言う。

後年、楊延昭は楊家の当主となり、楊業と比肩する武人として謳われることとなった―――エンド。

<感想>

原題は「忠烈楊家將/SAVING GENERAL YANG」。

「楊家将演義」とは北宋の楊一族の活躍を描いた物語で「三国志演義」と同じく民間の説話を集めたもの。
これは楊業、楊延昭、楊宗保、楊文広ら数代に渡る。
その「楊家将演義」をもとにアレンジを加えたのが本作。

何と言ってもポイントはその勇者たちの悲劇的な死を描いたこと。
楊業を救出するべく次々と兄弟たちが倒れて行くシーンは衝撃的でした。

そして「七子行きて、六子帰る」。
これを延平は「7人の子が救援に向かい、6人が戻る(1人犠牲が出る)」と読み解いた。
しかし、実際は「7人の子が救援に向かい、六男のみが戻る」の意味でした。
このサプライズこそが本作最大の特徴とも言えるか。

ちなみに、管理人は楊延昭生存を知っていたのですが驚きました。
占いの結果を知らされた際の賽花の様子が不審だったので「夫を想うあまり賽花が結果を改竄し子供たちを向かわせた」のかと思っていたので。
てっきり、本来は「七子行きて、一子帰る」だったのを筆を加えて「一」を「六」に書き換えたものとばかり。
それだけに、ラストで特に仕掛けに触れられなかったことで初めて先の意味だと気付くことに。
これも意外でしたね。

ちなみにネタバレあらすじはまとめ易いように改変を加えているので、興味を持たれた方は是非、本作をご覧頂きたい。

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