<あらすじ>
フリージャーナリストの河上辰男(金子昇)の死体が、都内の自宅アパートで見つかった。臨場した警視庁捜査一課の刑事・棟居弘一良(東山紀之)は、血痕が霧状に飛び散った本棚の中に、一冊だけ血痕が付着していない本を見つけ、不審に思う。その本は、有名作家、檜山麗子(浅見れいな)の人気小説『湖上の恋』で、開いてみると著者のサイン入りだった。
同僚刑事・神林武人(きたろう)らは、事件発生直後から姿を消している河上の同棲相手・水野伸江(柴本幸)を怪しむが、棟居は血痕の謎が気になっていた。河上が殺されたとき、『湖上の恋』は本棚になかったのではないか。だとしたら、犯人はなぜこの本を本棚に戻さなければならなかったのだろうか。
そんな中、麗子が編集者の小幡明彦(葛山信吾)と共に、捜査本部がある目黒西署の捜査二課に相談にやって来た。実は、最近、麗子になりすました女があちこちで借金を重ねたり、旅館で宿泊代を踏み倒しているらしく、返済や支払いの要求が出版社に多数舞い込み、迷惑しているという。
「麗子に恨みを抱く人物は?」と聞かれ、小幡は旅行代理店勤務の高梨みどり(大塚千弘)の名を挙げる。『湖上の恋』の執筆にあたり、麗子はみどりに取材させてもらったが、彼女は本の内容が気に入らなかったらしく、「檜山麗子を許さない!」と編集部にクレームをつけてきたという。小幡が勤める出版社は、奇しくも神林のひとり娘・一子(貫地谷しほり)が勤めている会社でもあった。
その矢先、伸江が自ら出頭してきた。彼女はペットの猫を亡くしたショックから体調を崩し、アパートを離れ神奈川県内の実家に帰っていたと主張。自分は事件とは無関係であり、昨夜のニュースを見て急いで出頭してきたのだと話す。とはいえ、実家はすでに誰も住んでおらず、伸江のアリバイは証明できなかった。
しかし、伸江は気になることを口にする。河上は自分と同棲していながらも、別に女性がおり、その相手の名は高梨みどりだというのだ。麗子の詐欺事件で疑わしい人物として浮上したみどりが、死んだ河上とつきあっていたとは…。奇妙なつながりに、棟居らは驚愕するが…!?
その後、事件関係者のひとりが遺体となって発見された上、またしても麗子の偽者が出現する。はたして連続殺人の犯人は誰なのか…!? そして人気小説家になりすました女の正体は…!?
(公式HPより)
では、続きから(一部、重複アリ)……。
フリージャーナリスト・河上辰男が都内の自宅アパートにて発見された。
死因は撲殺、その惨状を示すように血痕が周囲へと霧状に飛び散っていた。
この捜査に乗り出したのは警視庁捜査一課の棟居弘一良刑事。
棟居は本棚に血痕が飛んでいるにも関わらず、一冊だけ付着していないことに注目する。
その本こそ、『激愛』でデビューした有名作家・檜山麗子の人気作『湖上の恋』であった。
しかも、麗子のサイン本だったのだ。
これに、棟居は河上殺害後に『湖上の恋』が本棚に戻されたのではないかと考える。
一方、棟居の同僚である神林武人は河上の同棲相手・水野伸江を疑っていた。
伸江が数日前から姿を消していたのだ。
同じ頃、麗子が編集者の小幡明彦に連れられ目黒西署の捜査二課を訪れた。
なんでも、麗子の偽物が出没しており被害に遭っているのだそうで、麗子宛てにあちこちから請求が舞い込んでいたのだ。
小幡は「高梨みどりが犯人に違いない」と主張する。
みどりは旅行代理店「隼ツーリスト」の社員で『湖上の恋』の取材協力者。
ところが『湖上の恋』の内容が「悪女に騙された男性が心中する」と知るや「麗子を許さない!!」とクレームを付けていたのだそうだ。
直後、伸江が出頭して来た。
伸江はペットの猫を亡くしたショックから神奈川県内にある相模湖付近の実家に戻っていたと供述する。
とはいえ、伸江には家族が居らずアリバイ証明は出来なかった。
さらに、伸江は河上がみどりとも交際していたと言い出した。
こうして、みどりを通じて「河上殺害」と「麗子の偽物」とが関わって来ることに。
当のみどりは河上との交際は認めるが、犯行は共に否認する。
棟居は「麗子の偽物」の行動を追うこととなった。
偽物が宿泊したとされる高級旅館によれば、偽物は鍔広の帽子を目深に被りサングラスを着用していた為に顔は分からないらしい。
だが、偽物は「麗子の名刺」を残していた。
指紋を調べたところ、旅館の支配人と麗子の指紋のみが検出された。
どうやら、偽物は指紋を残さぬよう手袋を着用していたようだ。
これに棟居は「偽物は麗子から名刺を貰った時も手袋をしていたのではないか」と仮説を告げる。
だが、麗子は「心当たりはない」と応ずるが……。
矢先、麗子と伸江が高校時代の友人であったことが明らかに。
しかも、麗子は元編集者から作家に転身を果たしており、小幡の後輩だったことも分かる。
その夜、伸江が麗子宅を訪れた。
伸江は麗子が飼っている猫のミイを目にして薄い笑いを浮かべる。
翌朝、棟居のもとに「河上の口座に500万円が振り込まれていた」との報が届く。
どうやら河上は誰かを脅迫していたようである。
調べたところ、河上が「東西四季観光」の収賄事件を追っていたことが分かる。
みどりが勤務する「隼ツーリスト」は「東西四季観光」の系列会社であった。
さらに、疑惑の人物である「東西四季観光」の総務部長・藤堂とみどりが3年前まで交際していたことも判明。
どうやら、河上はこれを調べるべくみどりに近付いたようだ。
矢先、偽麗子の宿泊先から伸江の指紋が検出された。
偽麗子の正体は伸江だったのだ。
数日後、伸江が溺死体で発見されることに。
時を同じくして2日前にまたも偽麗子が出没していたことが明らかに。
何でも2月18日22時30分ごろに千葉県のホテルに泊まっていたのだ。
これにより、2月18日以降の犯行とされた。
伸江殺害犯を追う棟居は藤堂と麗子を捜査。
しかし、2人とも2月18日以降のアリバイは不動であった。
そんな中、生前の河上が小幡と揉めていたことが分かる。
小幡によれば、肩が触れたことで口論になったのだそうだが……。
また、5年前から小幡と麗子は交際中だそうである。
翌日、棟居は麗子と伸江が1月20日に行われた同窓会の席上で揉めていたとの情報を掴む。
当時の同級生によれば、2人は高校時代からの親友で捨て猫にミイと名付けて可愛がっていたらしい。
さらに、棟居は麗子が『湖上の恋』の表紙に不満を抱いていたことを知る。
其処には麗子の故郷・相模湖の写真が用いられていた。
現地に飛んだ棟居は15年前に伸江の父・健司が行方不明になっていることを突き止める。
当時、健司は伸江に暴力を奮っていたらしい。
戻った棟居はペット美容室へ足を運ぶ。
すると、麗子も伸江も猫を飼っており共にミイと名付けていたことが分かった。
麗子は黒と茶のまだら、伸江は全身茶色の猫を飼っていたのだそうだ。
直後、河上宅から黒と茶の猫の毛が検出された。
しかも、この毛が麗子宅のミイちゃんの物と同一であると確認されたのだ。
棟居は麗子のもとへ。
麗子は河上に脅迫され500万円を支払っていたことを認めた。
小幡もこれに気付いており、揉めていたのは麗子に近付かないようにさせる為だったらしい。
琴の発端は15年前、伸江は健司から暴力を奮われていた。
これを見かねた麗子が健司に一撃を加え、伸江も加わり健司を殺害してしまった。
麗子たちは協力して相模湖の橋の下に健司を埋めた。
麗子にとって故郷は辛く苦い想い出の地だったのである。
だからこそ、それを想起させる『湖上の恋』の表紙を嫌ったのだ。
15年ぶりに同窓会に参加したのも『湖上の恋』の表紙について伸江に謝罪する為であった。
ところが、これを伸江を迎えに来ていた河上に知られ脅迫されてしまった。
其処で麗子は河上を殺害を決意する。
河上は勝ち誇ったように本棚にあった『湖上の恋』に麗子のサインを求めて来た。
応ずるふりをした麗子は隙を見て、河上を殺害した。
だから、『湖上の恋』が後から本棚に収められることになったのだ。
これで悩みが無くなったと思った麗子だが、今度は偽物に悩まされることに。
このとき、麗子は名刺に偽物の指紋が付いていなかったことを知り、伸江を疑うようになった。
麗子が伸江に名刺を渡した時、伸江が手袋を嵌めていたからだ。
伸江を問い詰めたところ、彼女は罪を認めた。
麗子は伸江にも非があることだからと、河上殺害の罪を告白し帳消しにしようと申し出た。
ところが、伸江はこれに激怒し麗子に襲い掛かったのだ。
揉み合う内に伸江が死亡してしまったのである。
これが事件の真相であった。
「友情なんて無かったんですよね」
涙ぐむ麗子。
「互いに猫にミイちゃんの名を付けた、それこそが友情の証です」
言い切る棟居であった。
藤堂は捜査の過程で収賄の罪が明らかとなり、逮捕されることとなった―――エンド。
<感想>
ドラマ原作は森村誠一先生『偽完全犯罪』(光文社刊)。
では、ドラマ版の感想を!!
偽麗子は初めからトリックに関わって来ると思っていただけに、後半で利用されることになったのはサプライズでした。
てっきり、本物の麗子が偽麗子を演じ河上殺害のアリバイ工作を行っていたものと思ってました。
個人的にはこんな感じのストーリーを予想していました。
麗子はアリバイ工作の為に敢えて自身で偽物を演じ、高級旅館に宿泊。
その付近に河上を呼び出し撲殺。
この際、犯行現場に河上の本棚にあった書籍を再現して血痕を付着させる。
その後、アリバイ成立を確認すると河上宅へ遺体と蔵書を運び込んだ。
ところが、実際の本棚の枠と運び込んだ蔵書の数が合わず、手持ちのサイン入り『湖上の恋』で穴埋めせざるを得なかった。
だからこそ、『湖上の恋』には血痕が付着していなかったのだ!!的な。
まさか、その場でサインする為に棚に無かったとは……想定外でした。
あれだけ魅力的な謎だっただけにもう少し大筋と絡んでも良かったと思うけどなぁ。
また結果として、麗子にとって伸江こそが最大の敵だったか……。
伸江の父殺害も巻き込まれたようなものだし、河上に脅迫されたのも伸江が原因だし。
そもそも、そんな河上と交際していたのも伸江だし。
河上殺害前の時点で伸江は偽麗子を演じているし。
棟居は麗子と伸江の間に友情が存在するとして「ミイちゃん」の例を挙げているけど。
伸江はだいぶ前から成功した麗子との同一化を望んでいたようだし、単にその一環のような気がするけどなぁ。
ちなみに、麗子が伸江殺害直前に連絡を取ろうと携帯に何度も電話していたのなら履歴を見れば容疑者はすぐ分かった気が。
それと、すぐに分かると言えば先述した「『湖上の恋』に血痕が付着していなかった謎」が途中で棚上げされていたのが気になるかなぁ……。
最初から「殺害後に本棚に戻されたことが分かっている」のに、どうして其処を放置してしまうのか。
しかも、サイン本だし。
河上が所持していて麗子にサインを依頼したのだから、指紋の付着順で決め手とは言わずとも傍証くらいにはなりそうだが。
その謎関係なしに物語が進んでいたので「血痕の件は放置で良いの?」と途中でかなりフラストレーションが溜まった。
棟居は『湖上の恋』であれだけ違和感を抱いていたのに、どうして終盤まで放置するかなぁ……。
麗子と言えば、河上に脅迫されていたけど伸江も共同正犯だし、伸江に責任を取らせれば良かったんじゃないかなぁ。
何しろ、河上が暴露すれば自動的に伸江も窮地に立つことになるワケだし。
寧ろ、1人で抱え込まず伸江に河上の対処をさせた方が良かったのではないか。
そして、河上。
伸江の出迎えに赴くとは意外とマメだ。
それとも、同窓会で伸江が浮気しないか見張っていたのだろうか。
でもって、藤堂は因果応報とは言え思わぬところで巻き添えに。
さらに、みどりは殆ど関係なし。
まさかの、このメンバーで最もクリーンで純粋に愛に生きた女性になるとはなぁ……。
そう言えば、今回も開始14分前後で公式にあったあらすじがあっさり消化されてしまった……導入部分のペースが早い印象。
全体を振り返ると、もう少し中盤と振り分けても良かったのではなかろうか。
そして、一子が「タクシードライバーの推理日誌」のあゆみ化しつつありますね。
気を付けなければ「一子の法則」が出来そうだ。
<キャスト>
棟居弘一良:東山紀之
神林一子:貫地谷しほり
檜山麗子:浅見れいな
水野伸江:柴本 幸
小幡明彦:葛山信吾
河上辰男:金子 昇
高梨みどり:大塚千弘
福永刑事:天宮 良
神林武人:きたろう
那須亮輔:森本レオ ほか
(順不同、敬称略、公式HPより転載)
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