2015年12月10日

「相棒season14」第8話「最終回の奇跡」(12月9日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「相棒season14」第8話「最終回の奇跡」(12月9日放送)ネタバレ批評(レビュー)です!!

日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season14」第8話「最終回の奇跡」(12月9日放送)ネタバレ批評(レビュー)。

<ネタバレあらすじ>

1枚の紙に線が引かれキャラクターが形作られて行く。
動き出したキャラクターにより次々と綴られて行く物語。
其処では花束を抱えた主人公が、愛する女性に刺殺されていた。
石段に倒れ込む主人公、その周囲に彼が手にしていた花束から花びらが舞い落ちる。
主人公は空へ向けて手を伸ばす、それは血に汚れていた。
そして、その手に握られた花束には「それでも君を愛す」とのメッセージカードが……。

これは『月刊ジュピター』に連載中の『彼方の星』、その3年ぶりに掲載される最終話の原稿であった。
鬼気迫る表情で原稿に取り組むのは、3年前の事故により連載を中止し車椅子生活を余儀なくされた悲劇の人気漫画家・箱崎咲良(玄理)。
そんな咲良にそっと寄り添うのは姉のますみ(原田佳奈)だ。
此処は彼女たちの自宅にある作業部屋である。

その部屋の外では2人の男性が原稿の完成を今や遅しと待ち構えていた。
1人は『月刊ジュピター』編集長の真山文彦、もう1人は彼の部下で編集者の藤枝だ。
原稿が落ちることを危惧した真山は「印刷所へ確認して来る」と言い残すやその場を後にする。
此の時、16時30分であった。

その数時間後、某所の公園で男性の刺殺死体が発見された。
被害者は「ダイス・エンタテインメント」の社長・原田良助(内田健介)。
原田は『彼方の星』の版権管理など咲良のマネジメントを行っていた。

現場に駆け付けた伊丹たちは溜息を吐くことに。
発見者の多くが通報せずに原田の写真をネットに上げてしまっていたのだ。
特に、18時27分に「死体見つけちゃったかもやば〜〜〜い」との書き込みが行われていたことから犯行時間はそれ以前と思われた。

この殺人事件は翌朝には大きな話題となった。
もちろん、原田の殺害状況がセンセーショナルに出回ったこともある。
だがもっとも話題となったのは、原田が『彼方の星』最終回と全く同じ状況で死亡していたことにあった。
ソレは奇しくも殆ど一致していた。
唯一、異なる点は原田の手が血に汚れていないことのみだ。
此処から「咲良が原田殺害を予言し漫画に描いた」と評判になったのである。

「これは凄いことですよ!!」と吹聴する真山や「これは神が描いたんです」と動じず淡々と語る咲良の行動もあり、世間は騒然となっていた。

そんな中、「特命係」では冠城(反町隆史)と米沢(六角精児)が言い争っていた。
冠城は「咲良が原田殺害を予言した」のではなく「殺害犯が原稿の内容を再現した」と考えていた。
其処で作者である咲良自身の犯行を口にしたのだ。
ところが、米沢は咲良の大ファンであり彼女の無実を信じていた。
こうして衝突することとなったのだ。

我慢ならない米沢は右京(水谷豊)に咲良の無実を証明するよう依頼。
右京は冠城と共に捜査に乗り出すこととなった。

早速、「ダイス・エンタテインメント」を訪れた右京たち。
「ダイス・エンタテインメント」では社長の原田を筆頭に新人社員の桜岡などが『彼方の星』のゲーム化やアニメ化、グッズ開発を手掛けていた。
ところが、今回に限っては社員の誰1人として最終回を把握していなかったことが明らかとなった。
何でも原田と真山の間でトラブルがあり、最終回については関与出来ていなかったのだそうだ。

咲良を訪問した右京たち。
車椅子姿で右京たちを出迎える咲良。
彼女は昔からアシスタントを使わない主義だそうで、今回も1人で最終回を描いたのだそうだ。
その描きかけの原稿を目にした右京は「B4サイズ」であることに目を留める。

ますみは右京たちに原田について語り出す。
原田は咲良の恩人だそうだ。
まず、5年前に1人での作業に破綻を来たしつつあった咲良をサポートした。
そして3年前、事故で仕事が出来なくなった咲良の生活を援助していたそうである。

その頃、伊丹たちは真山に事情聴取を行っていた。
だが、真山は藤枝と共に咲良宅に居たとアリバイを主張する。

その夜、特命係にはほくほく顔の米沢が居た。
冠城がますみを介し咲良の原稿を手に入れ、米沢に贈ることで恩を売ったのだ。
これにより、冠城への米沢の態度が些か軟化することとなった。

此処で冠城は原田殺害が可能な候補を挙げて行く。
あくまで「咲良が予言したのではない」とすれば、原田殺害は「漫画の内容を再現した」ことになる。
これが出来る人物は作者の咲良、姉のますみ、編集長の真山、編集者の藤枝の4人だ。

そんな冠城の推測を聞いた米沢は再び態度を硬化させる。
咲良もますみの犯行もあり得ないと言うのだ。

咲良が事故に遭ったの3年前、連載が最終回を迎える直前であった。
ところが、咲良は神社の石段で何者かとぶつかり転倒。
半年も意識を失い、その後は長いリハビリ生活を送ることとなったのだそうだ。
これを支えたのがますみであった。
だからこそ、ますみの犯行はあり得ない、と。

そんな中、伊丹たちは藤枝から「真山が16時30分から咲良宅に居なかったこと」を聞き出した。
また、真山と原田のトラブルの原因が『彼方の星』の「最終回」にあったことも判明。
最終回に肯定的な真山に対し、原田は最終回を阻止しようとしていたらしい。

一方、「ダイス・エンタテインメント」を再訪した右京たちは咲良のサインが3年前から変化していることに目を留める。
さらに、5年前の契約により『彼方の星』の権利が咲良ではなく「ダイス」が管理することとなっていることも分かった。
それは莫大な富を原田に与えていた。
どうやら原田は咲良を騙し、有利な契約を結んだらしい。

しかも、米沢から新たな情報が。
何でも咲良の絵が大きく変わっているらしい。
デビュー時は堅い絵柄であったが『彼方の星』連載に伴い柔らかくなり、最終回ではまた元の絵柄に戻っているらしい。
絵柄が変わり、サインもまた変わった。
これが何を意味するのか!?

翌日、特命係に角田がやって来た。
角田は真山のアリバイが再び成立したことを告げる。
真山は印刷所を口実に不倫相手と共に居たのだそうだ。
しかも、咲良宅を歩いて出て行く女性を目撃したらしい。

条件を満たすのは咲良かますみ。
だが、咲良は車椅子である。
伊丹たちはますみを連行することに。

ますみは目撃されたのが自分であることを認めた。

咲良に漫画を教えたのはますみだったそうだ。
言わば『彼方の星』の作者は咲良とますみの2人であった。
だが、咲良は原田に騙され『彼方の星』を奪われてしまった。
しかも、原田は咲良に最終回の執筆を許そうとはしなかった。
なんと、原田は咲良に「悲劇の漫画家だから価値がある。復活したら意味がない」と揶揄したのだそうだ。

ますみによれば、これに激怒し原田を殺害したとのことであったが……。
右京はそんなますみに紙に円を描くよう促す。
ますみが描いた円を目にした右京は「なるほど」と呟くが。

数時間後、右京たちは咲良のもとを訪れていた。
咲良の仕事用机の下に敷かれた絨毯について指摘する右京。
車椅子の人間にとって絨毯は段差を生じることになり不便である。
つまり、咲良は車椅子を用いずとも歩けるのだ。

さらに、右京はサインについて指摘する。
事故前の咲良のサインは丸い円が主体であった。
ところが、今は角型のサインである。
そして、絵柄も事故前と事故後で変わっている。

其処から右京は「リハビリで回復した咲良であったが以前と同じとまでは行かなかった」と指摘。
だから、それを悟られないようサインの筆跡を故意に変えたのだ。
また、最終回はますみも手伝ったに違いない。
『彼方の星』がデビュー当時の絵柄に戻ったのは、当時もますみが手伝っていたからだろう。

これを認める咲良だが原田殺害は否定。
右京はドイツ人建築家のミース・ファン・デル・ローエの言葉を借り「神は細部に宿る」と口にする。

此処で右京は「咲良が原田の殺害を予言した」のではなく「犯人が漫画を再現した」と断定。
犯人にとっての手本があったと語る。

こうして右京たちは3年前に起こった咲良の転倒事故について調べ始めた。
咲良の転倒現場に流れていた血の状況を目にした冠城は血痕がB4サイズの幅で途切れていることに気付く。
それは咲良の原稿と同じサイズだ。

これから、右京は其処に咲良の原稿があったと推測。
つまり、3年前の時点で既に最終回が存在していたのだ。
ならば、最終回の内容を知る人物は4人とは言い切れなくなる。

また、今回の最終回がこれほど話題になった理由が「ネットに出回った現場写真にある」とする右京。
それが犯人の目的だったとすれば……。

翌日、「ダイス・エンタテインメント」に咲良の名で1通のメールが届いた。
「私の無実を証明出来る物を原田社長が持っていた筈、それを届けて欲しい」との内容だ。

その午後、「ダイス・エンタテインメント」の桜岡が咲良を訪問する。
その手には3年前に描かれた『彼方の星』最終回の原稿が握られていた。
桜岡はこの原稿を目にした人間ならば誰でも犯行可能だと咲良に訴えかける。
それこそ咲良の無実を証明出来る、と。

ところが、其処に右京たちが現れた。
すべては右京たちの罠だったのだ。

右京は『彼方の星』最終回と原田殺害現場の唯一の違いに注目した。
それは「手が血に汚れているか」どうか。
あそこまで緻密に再現した犯人が、どうして再現し損ねたのか。
その理由こそ「手本とした原稿に描写が無かったから」であった。

この最終回と犯行現場の違いは、同時に3年前の原稿と今回の原稿の差異でもあった。
つまり、犯人は3年前に描かれた最終回に基づいて犯行に及んだのだ。

さらに、右京はネットに出回った原田殺害現場の写真が5パターンであったと告げる。
そのうち4枚は原稿とアングルが異なる。
ところが、1枚だけ漫画のコマと全く同じアングルの写真があったのだ。

その投稿元を調べたところ、漫画喫茶からであることが分かった。
そして、その防犯カメラ映像に桜岡が映っていたのである。
しかも、右京たちは咲良の名でメールを送った後に桜岡の行動を監視し、原稿が桜岡宅から運び出されたことを確認していた。

つまり、3年前の最終回に基づく犯行である限り、内容を知る咲良か桜岡以外には犯行不可能なのだ。
そして、咲良が犯人ならば新たな最終回に基づく筈であった。
もはや、原田殺害犯は桜岡以外に存在し得ない。

桜岡は真相を語り出した。

3年前の転倒事故の犯人は桜岡であった。
それは全く偶然の出来事だったと言う。
咲良を転倒させてしまった桜岡は、咄嗟にその場にあった原稿を拾い上げると逃げ去った。
桜岡は事故が原因で咲良が苦労していることを知り、贖罪すべく「ダイス・エンタテインメント」に入社した。

ところが、其処で原田が咲良を道具としてしか見ていないことを知った。
しかも、原田は咲良が最終回を描くことを望んでいなかったのだ。
原田は咲良がますみの助けなしでは未だ復活出来ていないことを察し、これを暴露するつもりであった。
原田は咲良を切り捨てるつもりだったのだ。

すべて自分の責任であると感じた桜岡は原田を殺害しようと決意した。
さらに、咲良の復活を飾る方法を考え付いた。
それが今回の「殺人予言」だ。
桜岡は原田を殺害すると、3年前の『彼方の星』最終回の描写を忠実に再現したのである。

「それはあなたの自己満足です、罪の意識があるのなら心から詫びるべきでした」
「いえ、私はあなたに感謝しているんです」
贖罪だと主張する桜岡を一瞥する右京、ところが咲良はそんな桜岡を感謝する。

3年前の事故の際、咲良は「まだ描きたい、まだ描かねば」との想いから「死ねない」と思った。
同時に「より良い最終回」についても考える契機となった。
犯行当夜、咲良が自宅を抜け出したのは当時を振り返り新たなインスピレーションを得る為であった。
特に3年前から追加された「血に汚れた手」は咲良にとって大きなポイントだったのだそうだ。
それこそ右京の語った「神は細部に宿る」である。

「あなたのおかげで良い最終回を描きました。これからもっと凄いモノを描きます、ありがとう」
咲良の言葉に桜岡は号泣する。

数日後、咲良の新作連載が決定した。
それは咲良の新たな境地を示しているらしい。

そんな中、米沢は敬愛する咲良の無実を証明した右京に礼をしたいと花の里に誘う。

「長い付き合いがありますが米沢さんに誘われたのはこれが初めてですねぇ」
何やら感慨深そうな右京であった―――8話了。

<感想>

シーズン14第8話。
脚本は藤井清美さん。

サブタイトルは「最終回の奇跡」。
テーマは「創作活動の奥深さ」や「創作活動の心構え」か。

其処にあるのはまさに「生みの苦しみ」。
他者にとっては些細な点でも、作者にとっては重大な点もある。
より良い作品を求める作者にとっては拘るべき点でもある。

また、作品に「適度」と言う言葉は無い。
推敲に推敲を重ね、改良に改良を加えて、ようやく1つの作品が生まれるのだ。
場合によっては生まれた後にも改良が重ねられることもある。

例えば「改訂版」とかがソレ。
単行本から文庫化されるときに、より良い表現へと変えられることもある。
一歩間違えば蛇足となりかねないが、其処に終わりはない。

劇中の咲良は3年の月日をかけて最終回に一筆を加えた。
また、自身の苦難さえ創作の糧とした。
その姿勢は、右京でさえも「神は細部に宿る」と口にするほど。
ある種、創作に携わる全ての人へのメッセージ的な回でしたね。

同時に「天才をこの手で葬ってしまった凡才の苦悩」を描いた回でもありました。
こちらは映画「アマデウス」的なメッセージか。

例えば、後世に大きな足跡を残す人物を意図せず排除してしまったら。
あるいは世の中により良い影響を与えられる人物を排除してしまったら。
あなたはどう思うでしょうか。
きっと後悔に苛まれるのではないでしょうか。

そして、桜岡は咲良への贖罪の為に原田を手に掛けました。
確かに行動は間違っていましたが、それだけ後悔の念に囚われていたのかもしれません。

ちなみに、2016年1月1日放送予定の元日スペシャルに大谷亮介さん出演との報が!!
すなわち、三浦刑事の再登場なるか!?
こちらも注目です!!

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2015年12月03日

「相棒season14」第7話「キモノ綺譚」(12月2日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「相棒season14」第7話「キモノ綺譚」(12月2日放送)ネタバレ批評(レビュー)です!!

日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season14」第7話「キモノ綺譚」(12月2日放送)ネタバレ批評(レビュー)。

<ネタバレあらすじ>

うららかな昼下がり、周囲の景色に似合わず何やら険しい表情を浮かべた2人組が早足で歩いていた。
右京(水谷豊)と冠城(反町隆史)だ。

向かった先は所轄署、厳かに扉が開かれると中に居たのは―――幸子(鈴木杏樹)と駐在の加藤だ。
マンション付近でうろうろしていた幸子が不審者として連行されたらしい。
其処で身元引受人として右京が呼ばれたのだ、冠城は付添である。

何処か呆れた様子の右京に幸子は頭を下げつつ、身元を照会されたことが原因だと語って聞かせる。
不審者として通報された幸子は「マンションを気に入ったので見ていただけ」と説明したが、過去の罪を重要視され大事になったようだ。
「罪は償ったのに」と憤慨気味の幸子であったが、右京が自ら出迎えたことでお咎めなしで解放となった。
一方、大人しそうな幸子に前科があると知らされた冠城は目を白黒させることに。

その帰路、右京は幸子がマンション前をうろうろしていたことに他の理由がある筈と目を光らせる。
流石の右京の指摘にあっさりと屈した幸子は事情を語り始めた。

発端は古着屋で購入した一着の着物にあった。
一目見て気に入った幸子はコレを「花の里」へ持ち帰り、胴裏を張り替えようとしたらしい。
すると生地に「いつかおまえがそうしたように、あたしもおまえを殺したい。でも、できない。もどかしい…。幸子」と口紅で書かれていたのだと言う。

文意通りならば、これを書いた幸子なる女性は既に死亡している。
だが、死亡していれば幸子がこれを書ける筈もない。
同じ名前であったこともあり、気になって仕方が無くなった幸子は密かに着物の前の持ち主を突き止めマンションに足を運んだらしい。
とはいえ、其処から先をどうすべきかが思い浮かばず、うろうろしていたところを不審者にされてしまったのだ。

まさに、この手の謎が大好物な右京は「安眠の為」として捜査に乗り出した。
もちろん、冠城も乗り気である。

翌日、着物の元の持ち主である上條愛(西原亜希)を訪ねた右京。
すると愛は双子の姉妹である幸子(西原亜希・二役)が書いた物と証言する。

戸籍上、上條家は4人家族。
高級クラブ「アルヘナ」を営む母「エミ」。
その娘で双子の姉妹である「愛」と「幸子」。
そして、歳の離れた弟「陸」が居る。

愛によれば、幸子は今夜も「アルヘナ」に出勤する予定らしい。
念の為、愛の筆跡を採取した上で、幸子の安否を確かめるべく「アルヘナ」へ。

その頃、上條家では帰宅した愛が幸子を呼んでいた。
だが、幸子の返事はない。
これを眺める子供が1人、彼こそ陸である。

一方、姉妹の母・エミと出会った右京たち。
だが、エミによれば幸子は欠勤してしまったらしい。
なかなかやり手らしいエミと意気投合する冠城は付近の中華料理店について地図を書いて貰う。
もちろん、筆跡を鑑定することが狙いだ。

翌朝、上條家から長髪の女性が陸の手を引いて出て来た。
待ち構えていた右京と冠城は彼女に声をかける―――幸子さんですね、と。
女性はこれに頷くと着物に書かれていた一文について事情を明かす。
なんでも、あれは単なるポエムなのだそうだ。
そんな中、冠城は幸子にも筆跡鑑定への協力を求め、サンプルを採取する。
と、右京が幸子の髪の毛がウィッグであることに気付く。
何やら目を細める右京だが……。

帰宅した幸子はと言えば、愛との交換日記に自身の想いを綴っていた。

その日の午後、米沢から着物の胴裏に書かれた文字と幸子の筆跡が一致したと報告が届いた。
もちろん、愛と幸子の筆跡は合致していない。
つまり、幸子の供述通りなワケだ。
冠城は「これで終わり」と結論付けるが、右京は何やら納得していない様子だが……。

その夜、「花の里」に幸子を訪ねた右京は彼女から双子の入替りを示唆される。
これを聞いた右京は自身の引っ掛かりの正体に気付いた。

「ねぇ、愛。ジュン君、今度何時来る?」
翌朝、今日も陸の手を引く愛に何やら尋ねる陸。
これに上手く答えられず口ごもる愛。

一方、右京は自身らが出会った幸子が「幸子ではなく、愛ではなかったか」との疑問を冠城に語っていた。
其処へ米沢が右京に指示された新たな鑑定結果を伝えにやって来る。
なんと、愛と幸子の筆跡サンプルから同じ指紋が検出されたと言うのだ。
つまり、同一人物が別人同然に筆跡を書き分けたことになる。
米沢によれば珍しいことだが不可能ではないらしい。
とはいえ、愛はどうしてそのようなことをしたのか?

数時間後、下校中の陸の前に右京と冠城が現れる。
冠城に背中を押された右京は渋々ながら陸に声をかける。
どうやら、右京は未だに苦手を克服出来ていないようである。

だが、陸は人見知りしない子供であった。
特に大人に動じることなく、話に応じる。
だが、肝心の「昨日の朝の女性が愛か幸子か」については語ろうとしない。

これに、右京は利益誘導を以て対抗する。
つまり、駄菓子屋でお菓子を奢ったのだ。

再び、昨日の女性が「愛か、幸子か」確認する右京たち。
今度は陸の口も軽くなる、しかし、右京の期待に反し「あの朝の女性は幸子である」と断言されてしまった。
しかも、陸は「ジュン君が来るかもしれない」と走って帰宅してしまう。

特命係に帰還した右京たち、すると伊丹たちが待ち構えていた。
どうやら、陸に接触したことからエミがクレームを入れたらしい。
結果、冠城の経歴に傷が付くことを怖れ、監視役が付くことになったようだ。

事情を察した右京は冠城を残し、単独捜査を開始。
残された冠城は不貞腐れながら名札作りに勤しむことに。
どうやら特命係を気に入ったようである。
だが、名札のサイズは主である右京を上回るものであった。
冠城の胆力に感心する伊丹たち。

其処へ幸子から冠城に連絡が入った。
18時にロイヤルタワーホテルのラウンジで右京が待っているらしい。
冠城は伊丹たちの監視を撒いて、右京と合流する。

やって来た冠城に右京はある計画を聞かせる。
それは「同時刻強襲」であった。
時間を計って右京が上條家、冠城が「アルヘナ」を同時に訪問し「愛」と「幸子」の所在を確認するのだ。

早速、上條家を訪れた右京。
だが、愛は留守であった。
「今は幸子だから、何処に居るか知らない」と語る陸。

同じ頃、「アルヘナ」の冠城はエミと幸子相手に戦々恐々としていた。

陸の許しを得て上條家へ上り込んだ右京。
それとなく家内の状況を確認しながら情報を引き出す。
ジュン君について尋ねる右京だが、陸は母親からジュンについては他言無用と念を押されているようだ。
だが、右京にとってはこれで十分であった。

事情を察した右京は結果報告を入れた冠城に「君が会ったのは愛さんです。とはいえ、今は幸子さんなのでしょう」と語る。

同日深夜、マンションへ帰宅したエミと愛の前に右京が立ちはだかる。
右京は愛が「多重人格(解離性同一性障害)」であると指摘する、幸子は愛の人格の1つなのだ。
陸にとって愛も幸子もごくごく普通のこと、だからこそ自然に受け入れていたのだ。

「それが何の罪になるんですか!?」
語気を荒くするエミに「放置してはおけない」と右京。

双子の姉妹は戸籍上、存在している。
だが、実在しているのは愛1人だ。
つまり、1人消えているのだ。

此処から右京は着物に書かれた通り「幸子が何者かに殺害された」と主張する。
これに応じるように幸子は意識を失い、愛が彼らの前に姿を現す。

「いつかおまえがそうしたように、あたしもおまえを殺したい」
着物に書かれた一文である、此処での「おまえ」が「愛」だとする右京。
つまり、愛が幸子を殺した後に幸子の人格を育んだことになる。
そんな右京にエミは「あれは事故だった」と語り出す。

互いに風呂場で水遊びをしていたところ、愛が幸子を誤って殺害してしまったのだそうだ。
エミは愛に姉妹殺しの罪を着せないように事実を隠蔽したらしい。
愛はそんなエミの態度に事実を知りつつ口をつぐんだ。
だが、抑圧された愛の精神は彼女の中に幸子を生み出した。
エミは幸子が消えたことを隠すべく、引越しを行った。
さらに驚くべきことに愛と幸子をそれぞれ別の学校に進学させ、生存を装ったのだ。
今では「愛」が主人格として他の人格を上手くコントロールしているとのことだが……。

「花の里」にて、右京から事情を教えられた幸子はあのメッセージが「幸子自身」ではなく愛の中で育った幸子が残した物だったことに衝撃を受ける。

翌日、改めて愛を訪ねた右京たち。
愛の幸子殺害とエミの隠蔽は時効が成立している。
だが、エミが未だに幸子の生存を偽装している点は罪になりかねない。
早めに真実を明かすようにと警告する右京。
また、冠城は愛の治療が必要だと訴えるが、それを聞いた「彼女」は拒否する。

立ち去ろうとする「彼女」、その背中に右京はジュン君について問う。

「ジュン君のことは話せません、ママに話さないように言われているんで」

まるで陸と同じように無邪気に応じる「彼女」に、右京はそっと目を伏せる。
多重人格の場合、2つだけではなく主人格を含む「3つの人格」が形成されることが一般的なのだ。
つまり、今こうして右京が話している「彼女」いや「彼」の正体は……。

翌朝、出勤した冠城は自身の名札のサイズが右京と同様に変更されていることに気付き憤慨する。
そんな冠城にニッコリと微笑む右京。
こうして、特命係に冠城の名が掲げられることとなったのだ―――7話了。

<感想>

シーズン14第7話。
脚本は輿水泰弘さん。

サブタイトルは「キモノ綺譚」。
構図としては「双子の2人1役」に「多重人格」を組み合わせた物。
とはいえ、本作のポイントはラストにこそあると感じました。

一見すると、愛が治療を拒否することで「幸子殺害の罪の重さを感じ、幸子と共に生きて行こう」との決意を固めているように見えます。
ですが、其処に第三の人格「ジュン」の存在が明かされることで些か異なって来る。

此処からは、あくまで管理人の私見となりますが……。

ラストにて「愛」とされた人物は「ジュン」でしょう。
それは「ジュン」について問われた際に、エミの事を「ママ」と呼び、陸と同じような応答に終始したことに表れています。
また、あのとき右京たちに対したのが「ジュン」だったからこそ、治療による消滅を免れるべく冠城の提案を拒否したのでしょう。
これはかなり重大な事です。

エミによれば「愛」が主人格として他の人格を抑えているとのことでしたが、これが覆りかねない。
これが覆るとはどういうことか?
すなわち、「幸子」や「ジュン」が「愛」に成り済ましていることも考えられうるのです。

その証拠に、3つの人格のうち「愛」と「幸子」の生活感は室内に見受けられたが「ジュン」のそれはない。
これは「ジュン」が「ジュン」としてだけではなく、時に「愛」や「幸子」としてエミや陸と接している可能性を示唆しているのではないでしょうか。

そもそも、エミの言葉が事実ならば「幸子」が着物に「愛」への恨み言を書き連ねる必要がない。
つまり、「愛」は他の人格をコントロールし切れていないことを示しています。

また、陸に「ジュン」は何時来るのかと問われた際の「愛」の表情。
あれは純粋に「ジュンをコントロールできないから分からない」ことを示していたのか?
あるいは、あの時点で「愛」を演じる「ジュン」の可能性は無かったか?
だとすれば、何時から「ジュン」だったのか?
もしかすると最初からだったのではないか……。
こう考えて行くと、相当に根が深いことになります。

また、「愛」の中の「幸子」は「愛」を憎んでいる。
場合によっては暴走し宿主である「愛」を滅ぼしかねない。
そもそも、あのメッセージが殆ど平仮名なのは何故か?
それこそ、幼い時分に愛が殺した幸子を示しているのではないでしょうか。
すなわち、「愛」の中の「幸子」は愛自身の罪の意識が生み出した存在。
それが独自に育つことが如何なる結果を生むのかは自明の理です。

もしかすると「ジュン」は「愛」と「幸子」のバランスを取りつつ、時に陸の良き友達として一家のバランスを取っているのかもしれません。

さらに、右京は「ジュン」の存在を口にしましたが、もしかすると第4、第5の人格の存在も疑われるのです。

さらにさらに、エミは「愛」の多重人格が「幸子」殺害後に発症したとしていましたが、その幸子殺害自体が「愛」に宿る別人格(愛が生んだ幸子)によるものの可能性も残る。
こうなると尚更、根深いことに。

作中だけに収まらず、強い余韻を残す。
まさに「綺譚」に相応しい作品と言えるでしょう。

また、愛と幸子の「1人2役」を成立させながら陸を生んだエミ。
その胸中には如何なる想いがあったのか?
陸の父親もまたこの事実を知っていたのだろうか?
此の点も気にかかるところ。

一方で、いよいよ「特命の人」と化して来た冠城。
冠城が自ら名札を作ったのは良かったですね。
また、右京が名札を許した上に自身と同じサイズに変えたということは、対等の「相棒」として冠城を認めていることに他なりません。
これで冠城も本格的な右京の「相棒」です。

ちなみに、2016年1月1日放送予定の元日スペシャルに大谷亮介さん出演との報が!!
すなわち、三浦刑事の再登場なるか!?
こちらも注目です!!

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2015年11月25日

「相棒season14」第6話「はつ恋」(11月25日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「相棒season14」第6話「はつ恋」(11月25日放送)ネタバレ批評(レビュー)です!!

日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season14」第6話「はつ恋」(11月25日放送)ネタバレ批評(レビュー)。

<ネタバレあらすじ>

夜の倉庫街にて、男性の転落死体が発見された
腹部に刺創が残されていたことから他殺と思われた。

被害者はジャンクアーティスト・山本正人(内浦純一)。
「ジャンクアーティスト」とは廃品などで芸術品を作るアーティストのこと。
遺体発見現場の近くには山本のアトリエがあったことから、其処で腹を刺され突き落とされたようだ。

この捜査に右京(水谷豊)と冠城(反町隆史)が乗り出した。

早速、現場である山本のアトリエを訪れた2人。

「これ、なんですか?」
「冠城君、取扱いに気を付けてください」
其処に置かれた芸術品の数々にたじろぐ冠城に、右京はこれらが数千万円になることを教える。
さらに、右京はアトリエの床に多数のガラス片を発見する。
どうやら、何かが割られたようだ。

これを目にした右京は不審を抱く。
山本の作風は金属を用いるがガラス片は用いないのだ。
右京は冠城にガラス片を回収するように依頼する。

一方、伊丹たちは山本の恋人・星野玲奈(笛木優子)に聴取を行っていた。
玲奈によれば、山本の死亡時は勤務先の坂上税理事務所で残業していたらしい。
伊丹はそう語る玲奈の身体に傷跡を発見、彼女が山本から暴力を奮われていたことを突き止める。

数時間後、右京は山本のアトリエに残されたガラス片から作品を復元しようと試みていた。
冠城と角田も巻き込まれ一大騒動に。
とはいえ、なかなか捗々しくはいかないようだ。

困った右京に、冠城は「山本のアートディレクター・白石由紀(中原果南)のもとを訪ねてはどうか」と提案する。
冠城の言を認めた右京は由紀のもとへ。

玲奈と山本が初恋同士で結ばれたと語る由紀。
しかし、残念ながら由紀もガラス片の作品について心当たりはないようだ。

ちなみに、由紀と山本の出会いは3年前、彼が作った作品に由紀が惹かれたのが始まりであった。
其処から彼を口説いてようやく2年前に了承を得て、1年前からディレクターとして本格始動した矢先の出来事であった。
由紀によれば山本には天才ならではのムラがあるらしく、小学校当時から彫刻分野で優れた作品を創造し文部科学大臣賞まで受賞していたが何故か辞めてしまっていた。
それからも作品作りには勤しんでいたようだが発表については渋っていたのだそうだ。

「お〜〜〜い、脚立ないか、脚立!!」
山本が死亡しても個展の準備は続いているらしく、由紀の周囲は慌ただしい。
山本殺害当日も由紀は知り合いのもとへ作品を借り受けに行ったとのアリバイがあった。

右京は会場に居並ぶ作品を目を細めて見詰める。
中でも、芥川龍之介『蜘蛛の糸』をモチーフにした作品に興味を示す。
その右隣にはシーツに包まれた三角の作品が立っていた。

続いて、玲奈を訪ねた右京たち。
玲奈によれば山本の暴力は一月ほど前から始まったのだそうだ。

これに山本と玲奈の馴れ初めについて尋ねる右京。
山本は佐賀、玲奈は東京出身で、玲奈が21歳の時に東京で知り合ったらしい。
さらに、最近の山本が「知らない人に尾行され不気味だ」と述べていたとの証言を得ることに。

一方、伊丹たちは玲奈を容疑者としてロックオン。
執拗にアリバイ崩しに挑んでいた。
だが、玲奈のアリバイを証言する坂上は「一緒に仕事をしていた」の一点張りである。
そんな坂上の手には包帯が巻かれていて……。

翌朝、右京は未だに例の作品の復元に挑んでいた。
遅々として進まない右京を揶揄する冠城。
これに右京は意趣返しとばかりに「初恋は何時でしたか?」と問う。

急な問いに戸惑う冠城。
一矢報いた右京は問いの主旨について語り出す。
玲奈と山本は初恋同士だそうだが、玲奈は21歳で山本と出会ったと述べていた。
だとすれば、玲奈の初恋は21歳になってしまう……あり得ないことではないが些か不自然だ。

玲奈の言葉を疑った右京は彼女の身許を調べ、玲奈が施設出身であったことを突き止める。
当時の担当者を訪ねたところ、玲奈の初恋について明かされることに。

何でも近所に泊まりに来ていた「彫刻の子」と呼ばれる少年がソレらしい。
玲奈は彼から「青い鳥」を貰ったと嬉しそうに語っていたと言う。
どうやら、その「彫刻の子」こそ山本だろう。
ただ、担当者によれば2人の交流は一週間ほどと短いものだったようだ。

また、玲奈は父の暴力を受けて施設に引き取られていたそうだ。
「施設出身者であることを隠す為に嘘を吐いたのではないか」と語る担当者。

モチーフが「青い鳥」だと知った右京は遂に壊れたガラス細工の復元に成功した。
出来上がった品は、なるほど確かに「青い鳥」である。
しかし、問題は「何故、これが犯行現場であるアトリエに持ち込まれていたのか」であった。
本来、それは玲奈が山本から貰った品の筈。
つまり、玲奈が持ち込んだか、第三者が持ち込んだかとなるのだが……。

再び、個展会場に由紀を訪ねた右京たち。
先日の『蜘蛛の糸』、その右隣に丸みを帯びたシーツが並ぶ中、由紀は「1ヶ月ほど前に玲奈が別の男と親しくしている現場を目撃した」と語る。
その男こそ、坂上であった。
この話は山本にもしたのだそうだ。

玲奈が山本から暴力を奮われ始めたのは一ヶ月ほど前。
時期的にも合致する。
おそらく、山本は坂上の存在を知り暴力を奮い始めたのだろう。

これを知った伊丹たちにより、坂上が連行された。
無実を主張する坂上だが、右京はその手に巻かれた包帯について触れる。
これを指摘された坂上は事実を語り出した。

坂上は玲奈に想いを寄せている。
だが、玲奈本人から「私は幸せになってはいけない」と本心を明かされ断られたのだそうだ。

ところが、山本の死亡当日。
ナイフを持った山本が坂上を襲撃した、手の怪我はこの際のものだ。
抵抗した坂上は玲奈の本心を山本に教えた。
山本はそれを聞くなり、大きな衝撃を受けた様子で去って行ったと言う。

山本作「青い鳥」の鑑定結果が上がって来た。
すると、20年以上前のジュースの空き瓶に混じり翼の付け根部分にAB型の男性の血痕が見受けられたと言う。
山本はA型、坂上もO型で該当しない。
玲奈はAB型だが女性である。
これを聞いた右京は「なるほど」と何やら頷くや席を立つ。

向かったのは玲奈が育った施設だ。
24年前の1991年、玲奈が山本と出会った頃に玲奈の父が施設を訪れたことがあったらしい。
担当者によれば、その日の玲奈の様子は不可思議だったと言う。
何でも人気が少なく危険とされていた裏山の山小屋から玲奈が出て来たところを目撃したのだそうだ。

裏山の山小屋へ向かった右京と冠城。
右京が廃屋となった其処を調べると、床下から白骨化した遺体を発見する。
さらに遺体の傍には彫刻刀も埋められていた。

右京と冠城は玲奈のもとへ。
白骨死体が玲奈の父ではないかと問い詰める2人。
これに玲奈は白骨死体が父であると認めた上で殺害したと告白する。
玲奈によれば、訪ねて来た父は玲奈に無理心中を迫ったのだそうだ。

だが、右京と冠城は玲奈の父を殺害したのは山本だったと語る。
遺体の傍に彫刻刀が埋められていたからだ。
山本は玲奈を守るべく彼女の父を殺害したのだろう。
彫刻刀が埋められていたのは玲奈に容疑が向かないようにする為だ。
山本は玲奈を愛し、1つの殺人が2人の絆となったのだ。

だが、山本は当時と変わった。
山本が彫刻を辞めたのは過去にそれで玲奈の父を殺害してしまったからだ。

同時に玲奈もまた変わった。
坂上と出会い、彼を愛してしまったのだ。

とはいえ、玲奈は山本殺害については否定。
また、玲奈の「青い鳥」を持ち出したのも彼女では無いらしい。

その午後、右京たちの姿は個展会場にあった。
その前には由紀が肩を落として座り込んでいた。

児童施設の担当者が「笹本調査事務所」なる調査員が玲奈について調べていたことを思い出したのだ。
これに基づき笹本を調べた右京たち。
すると、笹本は由紀が雇い主であることを明かした。
由紀は気に入ったアーティストの過去を調べ上げると弱味を握り、脅迫し従えていたのだ。
山本が玲奈に「知らない人に尾行されている」と語ったのは笹本のことであった。

しかし、山本の過去からは特に弱味は上がらない。
其処で由紀は玲奈にターゲットを変えた。
そして、玲奈と坂上の関係について知ったのだ。

さらに、右京たちは由紀が山本を刺したと指摘する。

由紀のアリバイは知り合いに作品を借り受けに行ったこと。
ところが、借りたとされる作品に疑問があったのだ。

個展会場の写真を手に由紀に迫る右京。
右京たちが最初に由紀に会った日に、其処には三角に盛り上がったシーツが置かれていた。
ところが、先日からシーツは丸みを帯びている。
中身が入替っているのだ。

そして、右京があの日に耳にした「お〜〜〜い、脚立ないか、脚立!!」。
そう、由紀は脚立を作品の代わりとして偽装していたのだ。
これについて由紀の知人も偽証を認めているらしい。

由紀はあの晩のことについて語り出した。

山本は笹本に調べられていることに気付き、由紀のやり方を卑怯だと批判し全てを暴露すると訴えた。
これに由紀は「あんたなんてこの世界で生きていけなくしてやる」と応じた。
直後、山本が由紀に襲い掛かり、抵抗した由紀が山本を刺してしまったのだ。

由紀は逃げるようにその場を去ったと言う。
つまり、山本を殺害したのは由紀ではない。

翌日、右京と冠城は三度玲奈を訪ねた。

玲奈の「青い鳥」を持ち出したのは山本であった。
そして、山本は玲奈に暴力を奮い始めた。
すべては坂上の存在を脅威に思ったからだ。

やがて、山本は坂上を襲撃するが彼から玲奈の本心を聞かされてしまった。
「罪を犯した者」と「犯させた者」であることを痛いほど思い知らされた山本はある行動を決意する。

山本が由紀を追い込んだのは意図的な行動であった。
玲奈が幸せになるには罪を思い起こさせる自身が障害になると考えた山本は、自身を消すべく由紀に刺させたのだ。
その上で、アトリエから転落死を遂げた。
すなわち自殺である。
山本は玲奈を愛するが故に破滅を選んだのだ。

その夜、「花の里」にて。

「初恋、忘れていました」と語る幸子に「初恋は実らない方が幸せなのかも」と応じる冠城。
その意味は「幼いときの恋ゆえに心変わりしない方が信じられない」からだそうだ。
これに「与えられるより与える方が幸せである」と呟く右京であった―――6話了。

<感想>

シーズン14第6話。
脚本は谷口純一郎さん。

サブタイトルは「はつ恋」。
幼き日の淡い「初恋」が「犯罪」により強い絆とされてしまった2人の物語。
視聴していて東野圭吾先生『白夜行』(集英社刊)を思い浮かべられた方も多いのではないでしょうか。

『白夜行』(東野圭吾著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)

2人を結ぶのは幼き日の犯罪行為。
父の虐待に苦しむ少女、これを助ける少年。
男性が献身的に愛を捧げる一方で、女性が新しい恋に生きる。
最後には男性が死を選ぶ―――など本作と『白夜行』との間にはモチーフとしての共通点も多いです。
言わば、本作は相棒版『白夜行』か。

また、右京の言葉「与えられるより与える方が幸せである」の意味は「愛されるより愛したい」でしょう。
すなわち、山本のスタンスを示しているものか。

それほど山本の恋は献身的でした。
山本が彫刻を辞めたのも、金属作品のみに拘ったのも、当初世に出るのを渋っていたのも全て玲奈の為。
山本が注目を浴びれば玲奈の父親についても触れられる恐れがあるから。
それほど山本は自身を犠牲にして玲奈を愛していた。
だが、同時にそれだけの犠牲を以て玲奈を縛ったとも言える。
何しろ、山本が玲奈と距離を置けばそれを危惧する必要はないのだから。

そして、山本は坂上から玲奈が「私は幸せになってはいけない」と言っていたことを聞かされこれに気付いた。
そのときの山本の衝撃は如何ほどか。
しかも同時に、玲奈が「山本と居ても幸せではない」と思っていることをも突き付けられてしまった。

玲奈の傍に居たいが、傍に居れば玲奈に「犯罪」を思い起こさせる―――まさにジレンマ。
玲奈を幸せにするには自身の存在が障害となる、ならば……と山本が取った手段は「自身の排除」でした。
かといって、姿を消すだけでは玲奈に無言のプレッシャーを与えかねない。
そもそも、自身がそれに耐えられない。
其処で山本は死を選ぶ、まさに究極の自己犠牲。

だが、これもまた裏を返せば玲奈に忘れられない為とも言える。
ただ1つ言えることは「それほど山本は玲奈を愛した」と言うこと―――切ないです。

そして本作では、由紀のアリバイ崩しに映像特有のトリックが用いられていたりもしました。
些かロジックが弱くはありましたがコレはコレでアリでしょう。

ちなみに、中原果南さん2度目の「相棒」出演。
前回は「相棒season9」第11話「死に過ぎた男」での真紀子役でした。

「相棒season9」第11話「死に過ぎた男」(1月12日放送)ネタバレ批評(レビュー)

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posted by 俺 at 23:00| Comment(3) | TrackBack(0) | 相棒 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする