2016年05月28日

『スーサイド・パラベラム』第9話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト 2016vol1』連載)ネタバレ批評(レビュー)

『スーサイド・パラベラム』第9話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト 2016vol1』連載)ネタバレ批評(レビュー)です!!

<ネタバレあらすじ>

・前回はこちら。
『スーサイド・パラベラム』第8話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト 2015vol3』連載)ネタバレ批評(レビュー)

複数のチハヤ、オカマ、メイドたち。
彼ら事件関係者を集めた2周目チハヤは「殺人鬼」殺害犯を告発する。
チハヤによれば「殺人鬼」は「殺人鬼」により殺害されたのだそうだ。
そもそも「殺人鬼」は個人ではなくグループだったのだ。
チハヤが「殺人鬼」と名指ししたのは……。

なんと、2週目チハヤを除く残るチハヤたち全員であった。

2周目チハヤ以外の面々は身体の一部に不可思議な切断面を抱えていた。
例えばネクタイが途中で切断されている。
例えば髪が不用意に切断されている。
それこそ、彼女たちが「殺人鬼」である証拠らしい。

また、事件が起こったにも関わらず階層移動に必要なメリックを放置していたこと。
だからこそ、メリックは輪になって踊っていたワケだが本来ならば不自然であった。
殺人鬼以外のチハヤにとってメリックはオウカを追う為の重要な仲間だ。
事件が起こればすぐにでも安否確認を行っていた筈である。
ところが、誰もそうしようとはしなかった。
何故なら、彼女たちが「殺人鬼」本人だったからである。

では、どうして「殺人鬼」が仲間である「殺人鬼」を殺害したのか?
それは「殺人鬼」であることに疲れてしまったからなのだそうだ。

当初、オウカを巡る追いかけっこはオウカが圧倒的に優位であった。
だが、何度となくチハヤが内包され続けたことで数を増やしたチハヤ優位に傾きつつあった。
その内に、一部のチハヤの中に不安が生じ始めた。

もしも、オウカを捕まえられたとしてこの世界はどうなるのだろうか?
また、この世界から脱出したとして増え続けたチハヤはどうなるのか?
そもそも、オウカはどうなるのか?

結果、一部のチハヤたちは現状維持を目指すこととなった。
その為には増えるチハヤを止めなければならない。
結果、チハヤがチハヤを狩る構図が生まれてしまったのである。
だが、この構図は彼女たちに大きな苦痛を強いることとなった。

全てを打ち明けたチハヤたち。
ニッコリ微笑むと2周目チハヤに「殺人鬼」の後継者となるよう言い残し、自害して果てるのであった。
呆然とする2周目チハヤの手には託された「猫柳」が握られていた……。

それから数日後、別の階層では花魁姿のオウカを捕らえるチハヤの姿があった。
しかし、横合いから現れた別のチハヤにより殺害されてしまう。
もちろん、乱入したチハヤこそが後継者となった2周目チハヤである。

2周目チハヤに介錯を訴えるオウカ。
苦悩するチハヤに対し、オウカは「時間が無い」と繰り返す。

空に浮かぶ球形のソレが迫りつつあるからである。
ソレとはすなわち「パラベラム」の弾丸のことだ。
ソレが到達した時、オウカは本当の死を迎え世界は崩壊することになる。
ソレから逃げる時間を稼ぐ為にはオウカの死によるリセットが必要なのだそうだ。

だが、チハヤは気付いていた。
目の前のオウカがオウカではないことに。
チハヤは真実のオウカを探し出すべく、偽のオウカに止めを刺すのであった。

2周目チハヤが移動した先はTV局。
其処にはアイドルとなったチハヤの姿が―――第10話へと続く。

<感想>

『メフィスト』の新連載第9回。

「殺人鬼」殺害犯もまた「殺人鬼」であった。
この意外な結末に加え、「2周目チハヤ以外のチハヤ全員が犯人」とアガサ・クリスティーの某作品を思い起こさせる内容でしたね。

さらに、予想通り「魔銃パラベラム」によるタイムリミットの存在も示唆されています。

そして「オウカがオウカではない」との新事実も発覚。
以前の推測では「枯葉」こそが「オウカ」ではないかと考えていました。
だからこそ、チハヤもアイドル階層にやって来たのか?
いや、むしろ「木を隠すには森の中」だけに、もしかして「オウカは増え続けたチハヤに化けている」可能性もありそうか。

謎が謎を呼ぶ展開です、次回も見逃すなかれ!!

では、此処からは8話までのまとめ。

状況を簡単にまとめるとこんな感じかな。
まず、オウカが死ねないことを知りつつパラベラムを用いて自殺未遂、昏睡状態に。
これを救うべくチハヤがオウカの深層心理世界に飛び込む。
その目の前で深層心理世界のオウカが自殺。
これにより、チハヤがオウカに内包される。
内包された状態のチハヤが深層心理世界のオウカを救うべくさらにダイブ。
これを繰り返すことで、マトリョーシカ状態のオウカとその中で複数のチハヤが存在しているものか。
どうやら、オウカの身体の中が既にパラレルワールドとなっているようだ。

そして、オウカ自身の自殺未遂も何らかの目的があってのことか。
考え得るのは幾重にも続く運命の螺旋にチハヤを取り込むことかなぁ。
それにより、永遠にチハヤと共に居ることが可能になるとか。

そんな中、迫り来る弾丸の描写が。
どうやら、タイムリミットを示唆するもののよう。

ちなみに「スーサイド」が「自殺」や「破滅」を意味する英語、「パラベラム」が「戦いに備える」とのラテン語だそう。
本作タイトルを仮に和訳すれば「破滅(自殺)への戦いに備える」と言った意味合いか。
あるいは意訳すれば「(次なる)戦いに備えた破滅(自殺)」とも解釈出来そう。

そして4話に登場した「サムサラ・エクスプレス」。
「サムサラ」は「輪廻転生」を表す言葉。
つまり「サムサラ・エクスプレス」は「輪廻転生列車」。
だからこそ環状線になっており、今生の終着駅は次の人生の始発駅となるのだろう。
オウカが4話で語った夢のうち、列車旅は4話、アイドルは3話、ギャングのボスは1話で達成済み。
オウカはその度に、次のステージへと移動して行く。
これをチハヤが追い続ける。
この流れも「輪廻転生」と言えそうだ。

これらからは「輪廻転生」と同じく「終末へ向けてのリセット(またはその繰り返し)」と言った意味が引き出せる。
全体的に抒情的な世界で繰り広げられるチハヤとオウカの追いかけっこ。
次なる舞台は何処になるのか?

ちなみに、次回から『メフィスト』が完全電子書籍化されるとのこと。
こちらも注目です!!

『ジャーロ』(光文社刊)に続き『メフィスト』(講談社刊)も完全デジタル化とのこと!!

◆関連過去記事
『スーサイド・パラベラム』第1話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト』連載)ネタバレ批評(レビュー)

『スーサイド・パラベラム』第2話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト』連載)ネタバレ批評(レビュー)

『スーサイド・パラベラム』第3話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト』連載)ネタバレ批評(レビュー)

『スーサイド・パラベラム』第4話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト』連載)ネタバレ批評(レビュー)

『スーサイド・パラベラム』第5話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト』連載)ネタバレ批評(レビュー)

『スーサイド・パラベラム』第6話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト 2015vol1』連載)ネタバレ批評(レビュー)

『スーサイド・パラベラム』第7話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト 2015vol2』連載)ネタバレ批評(レビュー)

『スーサイド・パラベラム』第8話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト 2015vol3』連載)ネタバレ批評(レビュー)

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